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長々と 雑に紹怪 【一反木綿】

一反木綿とは

現代において妖怪さえ知るのであれば知らぬ人はいないであろう妖怪、一反木綿。ところが、元来一反木綿の出没地域は鹿児島県肝属郡高山町という極めて限定的な、おらが村のご当地妖怪であった。これをここまで有名にしたのは、言わずものがな水木しげる御大、そしてその作品「ゲゲゲの鬼太郎」であることは間違いない。同作品においての初登場は「妖怪大戦争」の回で、実は新聞広告で、報酬の金目当てで募られた妖怪の一体であったことはほぼ忘れられている(子泣き爺、砂かけ婆、塗壁も同様)。
同作においては、鬼太郎を助けるよい妖怪として描かれているが、伝承としての特質は、空を舞い、人間を見つけるとこれに巻きつき顔をふさいで窒息死させようとする殺意に満ちた妖怪である。人の命を奪う妖怪は少なくないが、多くは捕食目的、あるいは妖怪の持つ気に侵されて命を落とすというものが多く、直接的に只々殺しにくるのは実は珍しいと思われる。

一反木綿の伝承と推測される真相


伝承に残る話をザックリと紹介すると、ある男が夜道を歩いていると、白く長い布のような何かが飛んでいる。見ているとそれが降りてきて顔を覆い、強い力で巻き付いて鼻口を塞いでくる。男は咄嗟に持っていた脇差で切り付けると、それは血飛沫をあげ、消失したというものである。
ところで、この一反木綿の伝承のある地域の隣接する村落では、真偽の程は定かでないが墓として長く白い布を結びつけて掲げる風習があったという話もある。これが事実ならばかなりの高確率で、その布が風で飛ばされたものの誤認と想像するのは難くない。
すると先の話に戻すと、ことの真相は…
夜道男が歩いていて、飛ばされた布が顔に引っかかる。男はふわ化け物だ!と慌てふためき、転倒して頭をぶつけるなりして怪我をして、這々の体で逃げ帰る。仲間のいる長屋なりに飛び込んで、
「い、今そこで化け物に襲われた!」
「なにぃ?そいつはどんな化け物だ?」
「白い布みたいなやつだ!突然顔を覆ってきやがった!」
「なんだそりゃ、風で飛んだ布が絡まっただけじゃねえのか?ハハハ」
「ふざけんな!ありゃあ…そうだ!思いっきり首を絞めて口を塞いできたんだぞ!(話を作る)」
「おいおい、血がついてるじゃないか。慌てて転んだのか?」
「こ…これは…そうだ!俺はやられてなるものかと慌てず刀を抜いて、奴を切りつけてやったんだ!その返り血だ!」
「まじか…」
「そ…そうとも!手強かったけどな!俺じゃなければやられていたね!(ドヤァ)」
大方、こんなところではなかろうか。などと想像してみる。

近年における目撃談

近年、一反木綿の目撃談が時折でており、動画などにも残され報告されている。
そのほとんど(全て?)が、上空をフワフワ飛んでいるのみであり、人を襲ったという報告はない。ゲゲゲの鬼太郎の影響もあり、怪異のミーム変質が起こり温厚無害な怪異へと変貌を遂げたとでも言うのだろうか。
映像のそれは白、ないし半透明の姿で確認されており、まるで風で飛ばされたビニールハウスのシートのような姿にもなっている?
性質が変わった以上は一反木綿そのものではなく、亜種とした方が正しい気がする。
一反程度の長さの、木綿のような姿の妖怪だから一反木綿。その命名法に従うならば、近年現れているその怪異、ビニールハウスのシートの長さは150m程度のものが多いという話を聞いたことがあるのでそれに従い、妖怪「150mビニールシート」と命名するのが相応しいのではあるまいか。

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