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#173 近代製鉄と夢の老人のお告げ【宮沢賢治とシャーマンと山 その46】

(続き)

失敗続きだった岩手県の釜石での近代製鉄だが、遂に成功の日を迎える。成功したのは、49回目の挑戦の時だったと伝えられている。

外国人を招き多額の投資をしながら、官営での製鉄業が失敗に終わった後、設備を引き取って製鉄に挑んだのが、静岡出身の田中や横山だった。しかし、やはり失敗は続き、48回の失敗の後、成功の見通しが立たず、従業員を解雇することとなった。すると、現場の責任者だった高橋亦助の夢に、不思議な老人が現れた。

その老人曰く「これまで良い鉱石として使用していたものが不良で、不良だとしていたものこそが真に良い鉱石だ」とのこと。翌日、解雇した従業員達が「賃金は要らないのでもう一度挑戦させてほしい。そしてぜひこれまで不良とされていた鉱石の方を使ってみてほしい」と言ったことから、高橋は、夢のお告げとの一致を感じ、最後の挑戦をした。その結果、遂に49回目に成功した、というストーリーだ。

この話は、古くから伝わる不思議な昔話ではない。1886年(明治19年)、今から約140年前の、近代製鉄成功の逸話として伝えられた話で、成功した日である10月16日は、後に釜石製鉄所の創業記念日となっている。

鉱物にまつわる話は、近代でもなお、神秘的な物語で伝えられている。

【写真は、橋野鉄鉱山の山神社】

(続く)

2024(令和6)年4月5日(金)


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