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食の話5 ニンニクの甘味(876文字)

何年か前、ニンニクを酢に漬けたニンニク酢というものが身体に良いと知りました。
早速、自分でも作ってみようと、業務用スーパーで皮むきのニンニク1キログラムと黒酢を何本か買い求め、梅酒用の瓶に入れて作ってみた。
ニンニクはそのまま使用するよりも、電子レンジで軽くチンした方が臭いが抑えられるというので、そうしました。
そして、台所にある収納場所の奥に置いておいた。

二、三カ月してそのニンニク酢を試しに飲んでみたら、酢の酸っぱさと、ニンニクの強烈な香りで、「ちょっとこれは自分には無理かな?」と思い、また同じ場所に戻しておいた。

それからしばらくはそのままにしておき、二年以上が過ぎた頃、思い出したように、再びニンニク酢を取り出して飲んでみたら、以前のような強烈さはなくなり、酢の角も取れ、ニンニクの甘味さえ感じるようなまろやかな味に変わっていました。

要するに、ニンニクと酢が完全に溶け合い、調和して、熟成したという感じになったのです。ニンニクの臭いは完全にはなくならないものの、かなり抑えられた感じになり、これならいけそうだと思いました。

よく、作りたてのワインを寝かせて熟成させる、ということを言いますが、ニンニク酢に関しても、同じことが言えるようです。

私は、これをニンニクの甘味と感じています。

でも、こうなるまでには、二年以上の歳月を経ているのです。
それなりの期間が必要だということですね。
これが熟成という自然の成せる素晴らしいところです。

人間も、若くて、元気いっぱい、ピンピンしているときというのは、この二、三カ月のニンニク酢のようなものです。
角があって、強烈で、抵抗がある。
それから、社会経験・人生経験を経て、苦労を重ねて、ようやく二年物のニンニク酢のような熟成したまろやかな人間性を身につけていくと思います。

でも、ただ、時が経てば、まろやかな良き人間性が身につくかと言えば、そうではない。

やはり、そのようなものになるべく、日々研鑽し、行動し、志向していく日常がなければ、酢の角が取れ、ニンニクの甘味さえ感じるような熟成した味わいには成り得ないと思うのです。

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