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最後のギフト


私は、多くの終末期の方を伴走させて頂きました。
今回は、とある高齢者ご夫婦のお話をさせて頂きます。
奥さまが肺がん末期、ご主人はとてもインテリな方で、奥さまの訪問に2年ほど携わらせて頂きました。
その方の訪問は、午前中の訪問で、いつも朝食メニューがテーブルの上に準備されていました。
毎回、ご主人が準備され、すり下ろし大根にしらす、一口サイズの豆腐、納豆、味噌汁、煮物、ヤクルトと食べやすく小鉢に入っていて、まるで小料理屋のメニューのように。。
訪問するたびに、お二人の出会いや結婚生活やお互いの幼少期など話してくださいました。
ある時、奥さまから「私たち夫婦は夫婦じゃなく『同志』なのよ」って。。
最初は、どう意味なんだろ〜っと思っていましたが、お2人のお話を伺っていると、お互いに支え合い尊重しあって同じ志をお持ちなのがわかりました。

とても素敵なご夫婦でほっこりした時間をご一緒に過ごし、時には夫婦について考えさせられました。

しばらくすると
奥さまは、徐々にエンドステージに入り
痛みをコントロールする医療麻薬が開始となりましたが、開始当初、意識がボーッとなり会話がままならなくなったので、ご本人はもちろんのこと、ご主人も使用を拒否。

在宅医と相談し、極力、医療麻薬は使わず自然に任せる!という選択をされ
その意思を尊重しサポート体制を整えました。
その後、傾眠傾向(旅立たれる前の状況)が続き。。

そんなある日、訪問すると傾眠から一瞬目覚め私に気づくと
奥さま 「あらぁー来てくれたんだね〜」
私「体調いかがですか?」
奥さま 「なんだか、身体がフニャフニャし た感じなの。目が覚めるとお父さんが何か食べなさいって。。本当は食べたくないけどさぁ~お父さんは顔をみていつも言うよのね〜」と話され再び目を閉じる。
そして、しばらくして目を覚まし私の顔をみて
「人生最期に、あなたに会えて本当によかったわ。私もそうだけど、お父さんもあなたの訪問をいつも楽しみにしていたの。本当にありがとうね」と笑顔で話されそのまま目を閉じて傾眠へ。

この会話が私と奥さまの最期となりました。。。(T . T)

私は、ご家族に今後の経過や対応についてお伝えし、その日の訪問を終了。
正直、このような場面は
何度経験しても心が凹みますし、胸が張り裂ける思いです。

そして
翌日、ご家族が見守る中旅立たれました。

数日後、ご主人のご様子に伺うと
「あのとき、妻から『同志』って言葉を聴いて驚きでした。妻には、いろいろと迷惑かけていたからね。。でも、妻の本心を聴けて嬉しかったです。妻から僕への最後のギフトですね。ありがとうございました。この言葉を支えに妻の分まで生きます」と笑顔で話されました。

このご夫婦を通して
『夫婦」という関係において、『同志』という言葉は新鮮で、カテゴリーに囚われずに、お互いが良きパートナーとして一個人を尊重して支えあうことは、パートナーの永眠後も「心の栄養剤になる」ことに気づきました。

最後までお読み頂きありがとうございました(^^♪











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