育てるのが難しい生き物

「何をしてるんですか」
「餌を書いているんだ」
「餌を『書く』のですか?」
「そうだよ。君が握ってくれたこのおにぎりや、コンビニで売られている薄っぺらいサンドイッチみたいに体内でエネルギーに変換されるものじゃなくて、活字や言葉を餌として欲する生き物がこの世には存在するんだ。」
「それは珍妙な」
「この生き物は育てるのが難しくてね、餌がないとだいたいが餓死してしまう。かといって餌を与えすぎてしまうと、その餌をキープし続けないといけないからこちらの負担が重くなる。餌の量を調整しないと問題行動を起こして死んでしまうものもいるんだ」
「難しい生き物ですね」
「だけど、これを上手く育てられると世界を変えることもできてしまうんだ。世界を変える作品というものはいつ見ても素晴らしいものだよ」
「そうなんですか」
「さて、私が育てているこの子はちゃんと育ってくれるといいが」

「先生、ちなみにその生き物ってなんていう名前なんですか?」
「『物書き』、もしくは『絵描き』というんだ」

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