常識(※胸糞悪い表現があります)

初めまして、この度は貴方様のガイドをさせて頂く者です。この国は他国と比べるとこれといったものがないのですが、良い意味でも悪い意味でも平和だと思いますよ。

この国の女性は子供を連れている人が多い? ということは他国には「母の薬」というものがない感じなのですかね。では、「母の薬」について説明したいと思います。

「母の薬」というのは、ある年齢に達した女性は必ず飲まないといけない薬のことです。詳しい成分は省きますが、この薬を飲むとどんな女性でも「母の役目」というものを果たすことが出来るようになります。長いこと他の国を回っている貴方なら、育児放棄をした動物を一度や二度見かけたことはあるんじゃないでしょうか。
ずっと昔の話ですが、この国でも同じようなことが起きたのです。多くの女性が母の義務である育児を放棄し始めたのです。これは由々しき問題でした。そこで発明されたのがこの「母の薬」でした。これを二ヶ月間投薬をし続けた女性の90%が育児放棄をせずに、母親の役割を生涯全う出来たのです。
さらに、この薬と一緒にこの「母親プログラム」を受講することによって95%の女性が育児放棄をしなくなったのです。しかし、この薬は副作用として赤子を生成するための器官が機能を果たさなくなってしまいました。最初こそは問題にはなりましたが、今では人工授精の技術が発達したのでそこまで騒がれなくなりましたね。

「この薬を飲むことに反対する女性はいないのか」ですか?
さあどうでしょう。私は聞いたことありませんね。むしろみんな進んで飲みますよ。だって、みんな飲んでますからね。それに義務化されていますし、疑問に思う方が野暮なんじゃないですか?

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よお、この国じゃない人。良かったら情報を買っていかないかい?

「この国の『母の薬』について知りたい」だって? それじゃあこの紙に書かれた金額を出すんだな。へへへ、まいどあり。まあお前さんが考えている通りだと思うが、金は貰ったから話してやるよ。

「母の薬」に反発する女性は確かにいた。賢い女性達だったよ。彼女達は良くて国外追放、悪くて実験体にされたよ。
この国の女性は賢過ぎたんだ。馬鹿な男達は恐怖したのだろうね。だからあんな恐ろしい物を作り出したんだ。自分達にとって都合の悪い賢い者が生まれないようにするためにね。
この国でよその国でなんと呼ばれているか知っているか? そうそう、差別の国だよ。でもそれを知っているのはこの国ではごく一部の人間だ。無論そいつは男性だ。女性は誰一人知らない。彼らが考えた理想郷的なものがここまで浸透していると思うとぞっとするよな。
見ただけならよくある平和な国だが、裏を覗けばこうだ。まあこれはこの国だけの話じゃないだろうけどな、ははは。まあ彼らの努力の賜物ってやつだ。

さて、俺はこのお金で酒を飲むとするよ。お前も気分が悪くなる前にこの国から出ていくといいさ。この国はもうとうの昔に狂ってるんだからな。

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