思春期⑴

「軽々しい気持ちで『猫を飼いたい』という人間を処す武器がほしいです」
「急にどうしたのですか」
「思春期なので感情の起伏が激しいのです」
「ちなみに犬は含まれないのですか?」
「今回は猫の話をしている。犬はそこらへんに置いておけ」
「さようですか」
「大人は『子育てする気がないなら無責任な性行為はやめなさい』と同じくらい『猫のゲロや糞尿で出来た道を毎日掃除する覚悟がないやつは猫を飼うな』を言ったほうがいい」
「普段は大人を敵に回すようなことを言っておいて、今回は味方につけよとする。さすが子供、やりたい放題万歳」
「猫は可愛い。それは分かる。だが、生き物だからゲロだってウンコだってする。爪とぎで家具や壁はボロボロにする。マーキングされた物は洗濯しても匂いが落ちないから捨てるしかない。保険だって充実しているわけじゃないからお金もかかる」
「耳にはするけど生身で感じるとやっぱ違うわよね」
「SNSなどを見て飼いたくなる気持ちは分かるが、あれはあくまで猫の一部だ。小さい頭をフル活用してそれを理解するべきだ」
「まあ猫に限らずだよね。私達はまだ子供だから社会の真実を見抜くためのおつむが足りないけど」
「おい、今は猫の話をしているんだぞ」
「はいはい分かってますよ」
「話は戻るが武器はある?」
「明日のゴミで出そうと思っていたダンボールならあるよ」
「ダンボール」
「ガムテープもあるよ、七色」
「背に腹はかえられないか」
「君の反骨精神には恐れ入るよ」

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