みんなと仲良く出来ない生き物

「何をしてるんだい?」
「トランプを二等分にしてました」
「色ごとに分けているんだね」
「そのほうが分けやすいかなと思いまして」
「ジョーカーはどうするんだい?」
「ジョーカーが出たら考えます」
「二等分といえばちょっと面白いデータがあるんだ」
「なんですか?」
「ここに雰囲気を波で表す道具があるんだ。この波の感覚が長ければ長いほど居心地がいいということさ」
「へぇ」
「会話している人間がいる場所にこれを設置してみたんだ。人間の数が偶数の時は緩やかな山と谷が中心だったのに、奇数になった途端に刺々しい山と谷が増えだしたんだ」
「なんでですか?」
「これは推測だけど、偶数の場合は1対1で対応出来るから、気にかけるのは目の前にいる相手だけでいい。しかし、奇数になってしまうと1対2になる。片方だけに気を配りすぎれば片方への対応が劣る。三人のうち二人は良いだろうが、取り残された一人は良くないだろうね」
「それなら、両方同じくらい気を使えばいいじゃないですか」
「両方に気を使えば、負担は二倍になるわけだから疲弊する。疲弊をすれば余裕がなくなり、ストレスが溜まるというわけだ」
「成程。じゃあ必ず二等分になるようにすればいいんじゃないですか」
「それがそうもいかないそうなんだ」
「どういうことですか?」
「トランプにはジョーカーがあるだろう?」
「ありますね」
「ジョーカーはどちらにもなれるけど、どちらにもなれないカードなんだ。実は人間にもジョーカーみたいなのがいるんだよ」
「ジョーカーみたいな人間?」
「人間の数は偶数でも、その場に馴染む気がない人がいれば奇数になってしまうんだよ」
「みんなと仲良くするという発想はないんですか?」
「発想はあると思うよ。ただ、全員がそういう発想とは限らないってだけさ。あとはそうだな、相性の問題があるかもしれないね」

「なんというか面倒な生き物ですね」
「それが個性を持つ生き物の性なのさ。これは僕達には一生分からない感覚なんだろうね」

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