幸せになれなかったお話

あるところにという不香の花という娘がおりました。
娘は見た目は勿論のこと、口も剣技もたいそう立派でございました。 彼女を尊敬するものも多くおりましたが、彼女を妬み僻む者の数も少なくなくありませんでした。

顔も頭も腕も良い彼女には一つだけ悩みがありました。それは好きなあまり、可愛いものや甘いものを残さずすべて食べてしまうことでした。
初恋の味は甘酸っぱいものだと言われていますが、彼女の初恋の味は隣町の牛飼いが作ったミルククッキーと、それを運んだ牛飼いの使用人の少女の生き血でした。

あるところに毒林檎姫というお姫様がおりました。
毒林檎姫は不香の花を妬み僻む者達が、彼女をあの世に葬るために作られたお姫様でございます。 彼女の体は見た目こそ可愛らしい少女のように見えますが、中はさくっとこんがり焼けたパイ生地で出来ております。

そのパイを砕くとカスタードと歯ごたえのあるごろごろとした林檎がぎっしりと詰まっていたます。
特に彼女の中にある林檎はこの世のものとは思えないほどに甘く、あまりの甘さに中毒死してしまう者が後を絶たないようでした。

不香の花は毒林檎姫に一目惚れし、彼女をさらってしまいました。翌日、不香の花は林檎の甘さに頭をやられてしまい、そのままお亡くなりになってしまいました。

彼女を妬み僻んでいた人達はまた違う相手を妬み僻み、そして不幸な形で死んでいきましたとさ。おしまい。

結局誰が幸せになったかって?
さあ、そんなの知ったこっちゃありません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?