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法人で加入する生命保険の保障額(保険金)の考え方 Part1

こんにちは。SKPです。
生命保険に加入する際には、保険料が高いか安いかも重要ですが、「保険金をいくらにするのか」。つまり「いくら保障をしておけばいいのか」を考えなければなりません。

「遺族にいくら残したい」や「入院1日で〇〇円受け取れるようにしたい」といった具合です。

個人の場合は、直接遺族の生活費となったり、一時的に収入がなくなった時にいくらくらいの保障があったら良さそう、というようにイメージしやすいのですが、法人の場合はどうなるのでしょうか?

『法人にいくら保障がいるのか』は、当然その時々によって変わりますが、今回ベーシックな考え方を2回に分けて紹介します。

会社そのものを守るための保障

法人が加入する保険は「代表者=社長」を被保険者とすることが多いので、今回はそれを前提に記載していきます。

考えなければならないのは「社長」にもしものことがあった時に、「会社の通常の経営にいくら必要となるのか」ということです。

これを考えるためには、まず「社長にもしものことがあったら、会社の経営が滞る=一定期間売上高が0円となる」とします。その方が分かりやすいですからね。

その際「いくら資金が足りなくなるのか」を今回計算します。これは一時的に売上がなくなったとしても、会社を倒産させず、運営を継続・再開できるためにいくらの資金を準備すればいいのか。もしくはいくらの資金があれば問題なく法人を解散・廃業できるのか、という概算値になります。

これらを計算するには、直前の残高試算表を用いるのが最も適していますが、状況の変動が少ない場合は直前期の決算書を用いてもいいでしょう。以下の項目を合計したものが「会社を守るために必要な資金」となります。

A.運転資金・固定費

通常の法人経営で必要な金額を算定します。法人は急に廃業・解散をすることができませんので、一定期間は経営が止まり、売上がなくなっても経費が掛かり続けます。

そのため、法人を継続するために概ね3か月~6か月分の運転資金・固定費の資金確保が必要となります。3か月分が少し厳しめ、6か月分はかなりゆとりを持ったイメージです。

運転資金は、売上を上げるために必要となる資金です。貸借対照表・残高試算表の「売上債権+棚卸資産-仕入債務」で計算をしますが、判断が難しい場合は0円としてしまって、固定費の計算だけでも問題ありません。これは「社長が亡くなったら売上が0になる」という前提で考える故です。

固定費は、売上がなくともかかる費用のことです。最も簡便的に計算すると損益計算書の「販売費及び一般管理費(月平均)-社長の役員報酬-減価償却費」として算出も可能です。

計算した運転資金と固定費を合計して、計算月数(3~6か月)を掛けたものが、法人の運営として必要と思われる金額。ということになります。

B.借入金返済資金

貸借対照表・残高試算表の借入金の内、算定日時点で返済に必要な金額を算定します。これは社長が亡くなった場合、その金額を即座に返済すること、もしくはその返済原資を法人へプールという資金です。

法人が通常通り運営していければ問題にはなりませんが、法人の経営を引き継ぐことを考えた場合、「借入金(借金)」というものは無くなっていた方が当然いいですよね?そのための補填です。

この金額は、特に考えなければ貸借対照表・残高試算表に記載されている「借入金」関係の金額を合計したもので構いません。

この際『社長からの役員借入金を計算に含めるのか?』が問題となります。その法人の状況により判断が分かれるところにはなりますが、基本は含めて計算した方が好ましいでしょう。その解説はこちら↓

C.その他の負債金額

貸借対照表・残高試算表の内、借入金を除いた負債の金額を計算します。A.運転資金を0とした場合は買掛金等の仕入債務もここに含めて計算しておきましょう。

負債は、その時点で「支払わなければならないもの」です。そのため必要な保障を考える上では、全ての金額を合計します。

D.現金及び現金化可能な資産(マイナス項目)

この項目は、必要な保障額の計算から差し引くものです。現金として既に手許にあるのであれば、その資金まで用意する必要はありませんよね。

基本的には貸借対照表・残高試算表の現預金を指します。A.運転資金を0とした場合は売掛金等の売上債権もここに含めて計算します。

土地・建物等の固定資産や棚卸資産は、貸借対照表の記載金額と実際の売価が同一とならないことから、計算の確実性を考慮して含めない方がいいでしょう。

E.納税のための準備資金

これは「今期の法人税予定額」のことではありません。今回計算した金額を「全額保険金として受け取った場合」に課税されるであろう法人税額を考えたものです。

法人が保険金を受取った場合、全額が益金(収益)となり法人税の課税対象額となります。そのため保険金全額で「A~Dの合計額」を担保したとしていると、保険金という収益に対しての税金分の納税資金が不足します。

そうなると結局「資金不足」となってしまうため、その納税も想定した上で保険金額を計算する必要があるため、下記の計算を行い、その金額が「納税のための準備資金」となります。

計算式:(A+B+C-D) ÷ (1-実効税率)- (A+B+C-D)
※ 実効税率は便宜上30%前後と考えればよいでしょう

計算したら状況に応じて補正を

これらの合計(A+B+CーD+E)が「会社を守るために必要な保障金額」となります。これだけの資金を確保もしくは死亡保険金という形で担保しておけば、後継者が定まるまでの一定期間または廃業・解散とするまでの期間、資金的に滞りがないと考えることができる、と言えるのです。

当然、実際は「代表者が亡くなったら売上が0となる」というわけではありませんので、一度、これで金額を出した上で、項目ごとに状況を踏まえて金額に補正を加えていく。ということを行います。

例えば「毎月の固定収入50万円は変わらないため、A.運転資金・固定費の計算から、その50万円分は差し引く」であったり、「一部の債権が焦げ付いて回収できないことは分かっているので現金化可能な資産から差し引く」といったイメージです。

この計算による「必要な保障」の金額は、資金繰りが厳しい会社ほど大きくなります。特に借入金が大きいウエイトを占める会社は実態と比べて金額が大きくなりやすいです。

その場合は「最低限どれだけは担保する必要があるのか」を考慮した上で金額の補正を加えていくことが大切です。

次回はもう一つの保障の考え方について紹介します。


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