※ゆるく人探ししてます、というお話です。

サイトウ先生との出会い

２７年前、大学生だった私は自動車教習所に通った。
そこで出会った教官「サイトウ先生」は、年齢は自分とあまり変わらなそうで、身長はそれほど高くなく、髪を二つに分け、よくピンクのシャツに黄色のネクタイを合わせていた。私の中での第一印象は「好きな顔立ちだな」という好ましいものだった。
「サイトウ先生」は場内教習を担当していて、私は何度かお世話になった。
話がとても上手だったので、いずれも楽しい時間だった。

サイトウ先生のアプローチ

ところが私の教習が進むにつれ、「サイトウ先生」の態度が変わっていった。私が他の教官と乗った教習車に話しかけにきたり、手を振ったり、頭をカックンして髪を靡かせたり（もう絶滅してるでしょうが昔のジャニーズの何人かの決めポーズ）・・。さすがに奥手の私でも「アプローチされてるな」と思うようになった。

しかし「サイトウ先生」がどの程度本気でそういった行動を起こしているか分からなかったし、何人もの女性にやっている可能性も考えられたので、私は見て見ぬフリをした。ただ気分は良かった。顔立ちが好みの「サイトウ先生」にアプローチされていると考えるだけで、大学の課題が捗ってしまうなど、元気の源になっていた。

その後、私は、場内教習を終え、路上教習に進み、「サイトウ先生」と接点が少なくなる中、無事教習所を卒業した。時間はかかったが、運転免許を取得した。「サイトウ先生」を含め何人かの教官にお礼の手紙を送ったが、特に返信はなかった。

４年半後に現れた「サイトウ先生」

大学を卒業し、職を転々としていた2001年の夏、家の近くで犬の散歩をしていると「サイトウ先生」に似た人が、熟しすぎてないトマトのような色の車の中からこちらを見ているのに気づいた。こちらも注意して観察しているとこの車は毎週月曜日に現れ、初めはすれ違うこともなかったが、だんだん私の散歩コースに沿って駐車するようになり、その頃には「サイトウ先生」本人が私を待ち伏せしていると確信するようになった。

教習所在籍中は確かに「サイトウ先生」に好印象を抱いていたが、この頃は生活パターンを把握されて「不審だな」と思うようになっていた。

何故4年半後か？

ところで何故この時期に現れたかというと、おそらく私が撒いた種で、当時「まちBBS」という地域に特化した匿名掲示板に「サイトウ先生」について書き込んだのを、本人が読んだのではと思う。

当時どんな心境で書き込んだのか思い出せないが、「サイトウ先生」がこの書き込みを見ていたとして、何故私が書いたと確信し、待ち伏せしようと思ったかは謎だ。

通報してしまった

その日は私の誕生日だった。いつも待ち伏せているだけの「サイトウ先生」が、さすが教官ならではの丁寧な徐行運転で私の後をついて家までついてきたので、恐怖を覚え、警察に通報した。生活安全課の担当者によれば、（当時の法律では）この程度では警察が動けないとのことで、同じ時間に外出しないなどのアドバイスをもらった。

それから私はそのアドバイスに従ったりしたからか、いつのまにか「サイトウ先生」に遭遇しなくなった。

話しかけてほしかったよ、先生

「サイトウ先生」今幸せですか？
あの時は折角、毎週家の近くまで来てくれたのに、黙って待ち伏せしているだけだから何も伝わってこなかった。話しかけてくれれば良かったのに、「サイトウ先生」の考えでは私から話しかける必要があったのかな。今でも当時どういう心境だったのか話してほしいと思う。昔のことだから忘れちゃったかな？話してみたくて、何度となくインターネットで「サイトウ先生」を探したが見つけられない。

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