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Googleを学校の日常とするために

Google for Education認定トレーナーの笠原です。

今日はGoogle for Education認定トレーナーの仲間(というには恐れ多い諸先輩方)がこの度出版した本を紹介します。

「学級経営」×「ICT」というまだまだ書籍の数も少ない切り口の一冊になっています。

今や「グローバル・スタンダード」と言ってもよいICT。しかし、これまで問題なく仕事をしてきたのに、なぜ急にやり方を変える必要があるのか、なかなか足を踏みだせない教師も少なくないようです。
もちろんICTを使わなくても、教師の仕事はできます。でも、ちょっとこれまでの学級経営を想像してみてください。どんなに力のある教師でも、忙しい朝に欠席の理由を電話で聞き取る余裕がない、学級目標がなかなか浸透しない、子どもの忘れ物が減らないなどといった、ちょっとした「ストレス」を抱えてきたはずです。そして、「こんなことできればなあ」という願いを抱えながらも、多忙で実現する方法を考える余裕もなく、仕方なくこれまで通りのやり方を続けてきたという人も多いのではないでしょうか。
実は、そんな教師の願いを「超かんたん」にかなえる方法があります。それは、Googleのアプリ(正確には「Google Workspace for Education」)を使うことです。

https://www.amazon.co.jp/dp/4788718510 より。2022/08/28確認。
『GoogleアプリのICT"超かんたん“スキル ーハッピーな学級経営が今スグできる!』P.2より。

なぜ学級経営のICTが大切なのか

GIGAスクール構想でICT端末が一人一台持つようになったのが去年ですが、それから一年が経った今であったもまだまだ「学級経営」の観点からの活用を解説する本を多くありません。

授業のICT活用の本の中に一部、学級経営のためのTipsが掲載されていたり学校生活全般のICT活用の提案の中で解説されたりしているパターンが多い印象です。

もちろん、学級経営のためのICT活用については、重要な観点であり、文科省のStudyDx Styleの中でもいくつも紹介されています。

また、どちらかというと働き方改革の文脈で学級経営に積極的にICTを取り入れることが提案されている印象があります。

ただ、今回発売になった本が、これらの事例とやや趣が違う部分があります。先に結論からいうと、以下の2点を上げることが出来るでしょう。

  • Google Workspace for Educationに特化した解説であること

  • 学級経営での活用の質向上が教育活動全般の質向上につながるという発想が提案がされているということ

一つ目の特徴については、Google Workspace for Education認定トレーナーというGoogleのツールについて熟知した現職の先生が執筆しているからこそ、ねらいがハッキリとした具体的な場面がイメージできる提案になっていると感じます。

Google教育者認定試験やTeacher Centerの教材を使って勉強すると、確かにこういうアイデアは次から次へと出てくる可能性は感じるのですが、必ずしもそういう勉強の余裕がある先生ばかりではないのが現実です。ですから、そのエッセンスを「明日の授業から」使える形で提案してくれるのは、助かり人は少なからずいるのではないかと思います。

二つ目の特徴については、ICTをツールとして使い慣れることが結果的に教科の学習など子どもたちの学びにつながるという観点から、一つ一つの提案が設計されているように感じられるということです。

たとえば、2つめの提案として書かれているJamboardを活用した学級目標を作るという提案を例にとってみましょう。

実践の具体的な手順については本書を確認してもらうこととして、この実践の見方として大切なのが、「実践者からのワンポイントアドバイス」の部分のコメントです。

最初は混乱しても、繰り返しおこなうと子どもたちも慣れていき、自然とルールが守れるようになります。根気強く続けることが大切です。

上掲書P.19

ツールを活用することで起こる混乱とそれを乗り越えるために必要な心構えが書かれています。

さりげないアドバイスですが、ICTを活用する時にはどうしてもツールの習熟という過程が必要になります。その習熟の過程で起こるトラブルは教員にとっては「怖い」ことでもあるわけです。

だからこそ、学級経営の場面で失敗も見越しつつ、積極的に活用していくことから得られるものが多いわけです。

本書の提案は「挑戦することから得られるリターン」と「失敗したときのダメージ」のバランスがどれも絶妙だと言えます。つまり、大けがをしないレベルでの失敗は加味しつつも、挑戦することで成長を促したり学習を効率化したりすることができる期待値が非常に高いのです。

授業の前に日常的な活用によって得られるものが大きいという提案は、豊福晋平先生もよく様々な場面でされています。

豊福氏は、海外のICT活用の文献でよく引用される「SAMR(セイマー)モデル」を提示し「このモデルでは、ICT活用の圧倒的な頻度や情報量の増加が先にあり、そのあとに質的構造的な変化が起きる。つまり、ICTをたくさん使って日常的な利用と習熟に至らないと、その先が見えてこないことを意味する」と解説。

https://edtechzine.jp/article/detail/6889 より。2022/08/28確認。強調は原文ママ

本書はこのような指摘にまさに真っ正面から応えている本だといってよいでしょう。

本書はスタートライン

本書の充実した実践例は、どの実践も無理のない工夫であり、すぐに再現することができる実践ばかりです。

だからこそ、本書を職員室において、何かしらの実践をすぐに真似して試してみるということが大切だと感じます。

その上で、どの実践も各学校の事情に合わせて工夫を積み込むだけの「余白」を多く残しています。

例えば、ある実践を実際に自分の教室で試しにやってみたときに「あれ、これってこういうことも出来た方が便利かも?」という気づきがあったときに、職員室で隣に座っている先生たちに声をかけて、色々とアイデアを出し合って工夫してみるということが重要なのだと感じます。

もし、自分の周りに相談相手がいなければ、本書の執筆陣にはGoogleを通じて連絡を取ることもできるため、何かあればきっとよいアドバイスをもらえると思います。

また、同じく認定トレーナーの坂本先生が書評で取り上げていますが、本書はコラムが趣深いです。

そのコラムにはGoogleに限らず、ICTを使った教育と向き合うためにはどのようなマインドセットが必要か、ということを凝縮した話を読むことが出来るため、ぜひ、多くの先生方に読んでもらいたいところです。

そして、その上でそこで述べられている考え方について、職員室で賛成反対、同意反論さまざまな観点から、授業や教育についての議論が始まるとよいのではないかと感じます。

そのような対話の積み重ねが、教育を行っていくときの強靱さにつながっていくだろうと思います。

本書の内容が一日も早く「これくらい当たり前だよね」と言われる日がくることを期待しています。

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