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消えゆく音、終わらない音楽――『Ryuichi Sakamoto | Opus』の公開に寄せて③

楽曲解説(続) 引き続き、楽曲の成り立ちについて考察していこう。 Lack of Love BB Andata Solitude for Johann Aubade 2020 Ichimei - small happiness Mizu no Naka no Bagatelle Bibo no Aozora Aqua Tong Poo The Wuthering Heights 20220302 - sarabande The Shelterin

    • 消えゆく音、終わらない音楽――『Ryuichi Sakamoto | Opus』の公開に寄せて②

      楽曲解説(続) 引き続き、楽曲の成り立ちについて考察していこう。 Lack of Love BB Andata Solitude for Johann Aubade 2020 Ichimei - small happiness Mizu no Naka no Bagatelle Bibo no Aozora Aqua Tong Poo The Wuthering Heights 20220302 - sarabande The Shelterin

      • 消えゆく音、終わらない音楽――『Ryuichi Sakamoto | Opus』の公開に寄せて①

        坂本龍一を追体験する 「最初で最後」になるであろう、坂本龍一のコンサート映画が公開された。 8日間に渡り収録された演奏のうち、20曲の演奏がフィルムに収められ、コンサートホールではなく映画館で、坂本龍一の音楽と向き合う機会が、私たちに訪れたのである。 撮影は坂本が、NHKのラジオ番組「サウンドストリート」の収録でも使用された、NHK509スタジオで行われたという。坂本にとっては特別な空間であったに違いない。 静謐な雰囲気に包まれ、モノクロームの映像に映し出されたピアノ

        • 2つの対話篇 佐々木敦『「教授」と呼ばれた男—坂本龍一とその時代』を巡って ①

          それぞれの当事者、それぞれの坂本龍一 佐々木敦『「教授」と呼ばれた男—坂本龍一とその時代』(筑摩書房刊)の出版に際して、佐々木氏をホストに、2つのトークイベントが行われた。 このトークイベントは、佐々木氏がホストを務め、ゲストには、異なる時期、異なる分野での当事者がそれぞれ招かれた。 一人はYMOデビュー以前より、坂本龍一と付き合いのあった牧村憲一氏。そして、もう一人は『坂本龍一トリビュート展 音楽/アート/メディア』でキュレーションを手がけたICCの畠中実氏である。

        消えゆく音、終わらない音楽――『Ryuichi Sakamoto | Opus』の公開に寄せて③

        • 消えゆく音、終わらない音楽――『Ryuichi Sakamoto | Opus』の公開に寄せて②

        • 消えゆく音、終わらない音楽――『Ryuichi Sakamoto | Opus』の公開に寄せて①

        • 2つの対話篇 佐々木敦『「教授」と呼ばれた男—坂本龍一とその時代』を巡って ①

          佐々木敦『「教授」と呼ばれた男――坂本龍一とその時代』を再読する

          2つの「冒険」、2つの「二重性」 佐々木敦による『「教授」と呼ばれた男――坂本龍一とその時代』を読んだ。正確に記せば「再読」した。 それは「Webちくま」に連載の頃から、リアルタイムで読み進めていただけでなく、先日行われた本書の出版イベント(対談相手は、畑中実氏(ICCで「坂本龍一トリビュート展」を企画))が、本書を補完するような内容であったため、本書を読み直す必要性を感じたからだ。 再読後の結論を記せば、佐々木氏による「坂本龍一論」は、坂本龍一や高橋幸宏が亡くなり、「

          佐々木敦『「教授」と呼ばれた男――坂本龍一とその時代』を再読する

          GEISHA GIRLS論④ ーー30年後の少年たち

          テイ・トウワから森俊彦へ GEISHA GIRLSを語るうえで重要なポイントは、坂本龍一とダウンタウンという異色のコラボレーションがもたらすケミストリーだけではない。 アルバムに参加した豪華なミュージシャンについても、GEISHA GIRLSを経由した坂本龍一の音楽活動の変化を論じるうえで、重要な要因である。 前章では、そのような視点から、坂本の右腕ともいえるテイ・トウワについて、坂本とのかかわりやGEISHA GIRLSでの役回りについて、具体的に検証した。 そのう

          GEISHA GIRLS論④ ーー30年後の少年たち

          GEISHA GIRLS論③ ーー30年後の少年たち

          GEISHA GIRLSが蒔いた種 上記引用は、坂本龍一が出演した、映画『戦場のメリークリスマス』からラストシーンでのローレンスのセリフである。 戦場のメリークリスマスのメリークリスマスのワンシーンが示唆するように、GEISHA GIRLSは種を蒔いたのではないだろうか。それはその後の坂本の音楽活動で実を結ぶことになる貴重な種である。 前章が坂本と松本の動機を軸に、当時の音楽シーンを参照しながら、GEISHA GIRLSと世間との距離感を明らかにした。あらためて結論を言

          GEISHA GIRLS論③ ーー30年後の少年たち

          GEISHA GIRLS論② ーー30年後の少年たち

          松本人志とスネークマン・ショー前章では、GEISHA GIRLSの結成にあたり、松本人志の動機について考察した。それはテレビとは別にお笑いの作品を残すという松本の計画の一環であり、お笑いのビデオのリリースを経て、次はお笑いのCDを作成するという当初のプランが、坂本龍一との出会いによって実現したものであった。 タイトなスケジュールのなか、GEISHA GIRLSのレコーディングを断行した坂本を取り巻く状況はどのようなものだったのだろうか。本章では坂本龍一の動機を明らかにしてい

          GEISHA GIRLS論② ーー30年後の少年たち

          GEISHA GIRLS論① ーー30年後の少年たち

          なぜGEISHA GIRLSか skmt archivの本論は、坂本龍一の大胆な告白の引用から始まる。 しかし、坂本が1990年代の作品と距離を置いていたことは、少なくともファンの間では、なかばコモンセンスのような事実であったと思う。 なぜかといえば、上記引用は2017年の『async』がリリースされた際のインタビューでのものだが、それよりも以前から、坂本の作品はPOPSを意識していた1990年代の作風から乖離し始めていたし、坂本が1990年代の諸作品について、積極的に

          GEISHA GIRLS論① ーー30年後の少年たち

          はじめに ——いま時間が傾いて

          いま時間が傾いて 不存在ゆえに、存在感が鮮明になる。 坂本龍一が旅立ってから経った1年は、そのような時間であったように思う。そして、坂本がいなくなってからの1年は、私たちには、非常に短く感じられたのではないか。 なぜだろうか。 晩年に坂本は次のような言葉を残している。 「芸術は長く、人生は短し」 この1年が短く感じられるのは、坂本をめぐる時間の在り方が、坂本という主体を離れ、歴史的なものへと変容していったからではないだろうか。 つまり、坂本の作品を、歴史的な時間

          はじめに ——いま時間が傾いて