わたしと年金

「なあ、ほんとにここでいいのか?」
「いいから手を休めるな」
「お前のもってくるネタはいつもうさんくさいんだよ。ほんとにそんなうまい話があるのか」
彼はため息をつくとツルハシを腰に固定し、宇宙服のヘルメットをこちらに向けた。
「何もしないのに褒美をくれる、ユウキュウ・キュウカがかつて地球に存在したことはお前も知っているだろう。しかしユウキュウには制限が多いという。俺たちがここで狙っているのは、コツコツやれば残りの一生食うに困らないという、あのネンキンだ。ケチなユウキュウじゃ割に合わねえ」
「しかしネンキンもとっくに絶滅したってはなしじゃねえか」
「いや。俺は古代の、ネンキン設計者による記録をみつけたんだ。そこにはこうある。『最後のおひとりまでネンキンをオシハライする』と。俺たちが諦めたら、オシハライもないんだよ」
なんだよそのオシハライって、と思ったが口にはださず、俺は黙って作業を再開した。いつかネンキンがこの生活を楽にしてくれる日を夢見ながら。

(これはMastodonに書いたものの修正版です)

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