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トトノイマセン死ヌマデハ

ここ数年のサウナブームが終焉する気配がない。昨今のブームは第三次サウナブームという位置付けらしいのだが、私自身そのブームに完全に乗り遅れた感がある。どちらかと言えば、私は2.5〜2.8次ぐらいのサウナブームの中に居て、少し古いタイプのサウナーだったのかもしれない。

そもそも私は以前サウナと温泉が大好きで、特に深酒をした翌日のサウナが最高に好きだった。ちょうど私の中のブームのピークは、元TOKIO松岡昌宏がサウナ内で倒れたのを吉川晃司が救ったとされる2012年前後だったと思うのだが、当時はそれこそ以前綴ったように週末パーティなどに参加し、翌日サウナ&温泉もしくは派遣型風俗というのが定番コースだった。サウナに入って体からじっくりと前の日のアルコールが放出されていく感覚と射精は同じぐらいの開放感で、快楽よりも寧ろストレスの解消にもつながっていた。ピークだった2012年以前の土日休みが定着していた20代後半のあたりは、当地にある健康ランドに土曜日の朝から潜伏し、生ビールを飲んでサウナに入って夜まで寝て、起きてから街に繰り出して朝まで遊び、また健康ランドに戻るような退廃的な週末を過ごしていたのだが、それが何よりも当時は楽しくて幸せだった。

友人界隈も昔からサウナと温泉が好きだった人が多かったため、友人達による近年のInstagramなどSNSへのサウナに関する投稿には特段驚きはないのだが、妻の友人の女子などもサウナにハマっている旨の投稿をしていて、そういった流れからやはり巷では相当なサウナブームの最中なのだろう。それこそひと昔前はサウナといえば「漢」と書いて「男」と呼ぶような厳つい奴らが汗を流す場所で、先の松岡昌宏ではないが、漢達が頭に手拭いを巻いて野球中継を眺めてグダグダ言いながら汗を流す光景を幾度となく見てきた。また、繁華街にあるサウナは稀に背中にモンモンを背負ったガチな方々が居たりして、割とアンダーグラウンドな世界の中にサウナは存在していた。それこそ先述の「モーテル」などが繁栄した時代、所謂バブル期に多く作られたと思われるパチンコ店とサウナとカプセルホテルが同じビルに入るレジャー複合施設などは、モーテル同様にネオン輝くド派手な看板で、明らかに金の匂いがプンプンしている感じが決して上品とは言えなかった。

以前の女性のサウナ利用年齢層などは不明だが、2000年代「岩盤浴」なる施設がいたるところに出来て、どちらかと言えば女性は岩盤浴に流れる傾向だったと思う。私自身も一時期岩盤浴にハマった時期があり、サウナと違ってアルコールを抜く手段ではなく、昼の時間帯に体から毒素を抜く目的でよく訪れたものだった。個人的にはサウナよりも所謂「ととのう」ってやつに到達した感が強かった記憶がある。個人差はあると思うが、サウナは割と絶頂まで早い段階で到達するのに対し、岩盤浴は2〜3時間はかかった記憶がある。岩盤浴は料理でいうところの低温調理みたいな要素を含んでいて、低温調理を施してから焼くステーキがめちゃめちゃ美味いのと同じように、岩盤浴で仕上がった身体は最高に旨みが詰まってジューシーになっている気がする。仮に岩盤浴後に食人族と偶然街で居合わせた場合、真っ先に狙われること必須だろう。

岩盤浴の拾い画像。カップルを見かけたことは何度もあるが、こんなに笑顔な奴らとは会ったことがない。

私が通っていた店舗は当初男女共同の岩盤浴で、美の追求に夢中な若い女性が友達同士で訪れたり、カップルで訪れたりしていた。その中で私は文庫本を読むなど少し気取った風情で汗を流していたのだが、中には明らかにスケベ目的なカスも混在していたことは間違いない。昔混浴の温泉で見かけたこともあったが、くっきりと凝視し易いようにメガネに曇り止めの用途でサランラップを巻きつけて入っているやつなどはガチな助平というか、カスだ。私も365日のうちだいたい200日はエロいことを考えている気がするが、その辺のモラルというか常識は弁えている。そういう輩が後を絶たなかったのか、私がよく行っていた岩盤浴は男女別となり、仕舞いには全国的に「岩盤浴は不衛生」とかいう根拠があるのかないのかよくわからない噂が拡がり閉鎖となってしまったのだった。

今はその岩盤浴のスタイリッシュさを兼ね備えた小綺麗なサウナが人気で、老若男女が気軽に楽しめるレジャーに成り上がったようだが、正直サウナが健康に良いかどうかの真相は知らない。「ととのう」という言葉を常用している昨今だが、近年までは定義が曖昧だったようである。

そもそも「ととのう」というのはサウナー用語のひとつで、簡単に言うと「とても気持ちがちよくて、心身共に快調に感じられる状態」なんですが、人によって表現の仕方は様々でした。

ダイヤモンド・オンライン 加藤容崇インタビューより

この加藤氏が後に「血中には興奮状態の時に出るアドレナリンが残っているのに、自律神経はリラックス状態の副交感神経優位になっている状態」という科学的な答えを導いたらしいのだが、もはや何のことかさっぱりわからず、麻薬系のドラッグを超えた解脱の域の体験談みたいな説明になっている。私が冒頭で射精と同列の表現をしたが、あながち間違ってないのだろう。思えば昔、もう廃業したが地元に大きな温泉施設があり、そこには通常のサウナと共に箱サウナという設備があった。割と家族などで訪れることも多かったのだが、この設備の中で誰かの射精跡を発見して以降、2度と訪れることはなかった。

箱サウナの様子。正直やりすぎ感があるが、まだ現存する施設もあるらしい。ルールは守ろう。

というか、一説によればサウナは精子が減るという情報があり、私自身も結婚後サウナを控えるようになっていた。私は昔から血圧や内臓脂肪、コレステロールなどの生活習慣病ワードについてはほぼ無視した生き方をしてきたのだが、どうしても生殖器系は億劫になりがちだ。古くは「コーラを飲めばインポになる」「赤LARKやマルメンを吸えばインポになる」などといった類の迷信を聞くたびに怯み避けていた経緯があるため、同様にサウナも避け始めていた。インターネットの情報では、どうやらサウナによって精子が欠乏するのではなく、キンタマが熱くなれば欠乏になる傾向にあるらしい。その説が正しいとしたら南国の奴らはどうなるのか。南半球の国なんかは想像以上に子沢山であり、全くばかげた話である。

とにかくある程度のルールを守り、ある程度のモラルを保っていれば健康だろうが不健康だろうが気持ちよくて楽しければそれでいい、それがサウナである。そんなサウナの良さを語るにあたっては、文章が終始整わないのも魅力のひとつなのだろう。

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