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お主、ディズニー幕府と戦するつもりか

聞いたところによると、私の母親がどうやら今年65歳となり定年退職するらしい。というか60歳の時も確か定年だとか言ってとような気がしたのだが、嘱託扱いになって今の今まで在籍していたとのことだった。高齢化が進むこの国において定年が従来の65歳から70歳ぐらいまで引き上げになりつつあるようだが、長年「定年は最長65歳」と刷り込まれてきた世代は65歳を迎えるとマジでやる気が失せるようで、母はもういい加減仕事などかったるくてやる気がしないらしいのだった。

そんな中でまだ口もろくに利けず物事もあまりわかっていないうちの倅に対し、「ディズニーランドへ連れていってあげる」などと言っていたのだが、ついにディズニー開府の狼煙が我が家でも上がった瞬間だった。思い出せば生まれて数十年、いろんな場面で「舞浜の変」もしくは「浦安危機」が勃発しそうなタイミングがあった。それこそかつての恋人「いつか2人で行きたいね」などとGLAYみたいなことを言ってきたり、結婚する前に妻からも一度談合を持ちかけられたことがあった。しかし幾度となく私はこの緊張を回避し続け、長年に渡って柳営とのデタントを築いてきたのだった。このノウハウを是非世界平和に役立てたいところではあるが、やはり21世紀も20年以上経過し、歴史が変わりつつあるのだろう。先の東欧中東の如く、避けられない衝突が今、起ころうとしていた。

とはいうものの、私自身は人生でディズニーランドを2度程訪れたことがあった。最初は私がまだ幼い頃、即ち今の倅ぐらいの歳の頃にその地を訪問(以下訪D)したらしい。当然ながらその頃の記憶などあるはずがなく、当時の写真を昔見せてもらったことも以前あったような気がしたが、実際その写真は現存していない。関東に住む叔母の結婚式のついでに行ったという関係者からの供述があり、当の叔母もその件について数年前に証言していたことから事実なのだろう。調べると1983年に開園したらしく、その次の年に私が生まれたので、出来て間もなく訪れたようである。風間俊介(ex. SMILE-UP)を筆頭に私と同世代でディズニーに狂ってる連中が一部居るが、こういった幼い頃の経験を元にのめり込んでいったのかもしれない。だとすれば私も没頭する予備軍に所属してもよかったのかもしれないが、2度目の訪Dでそれは破綻した。

そもそも私は大の絶叫マシン嫌いだ。まず高所恐怖症で、一般的な脚立に乗ってもキンタマの裏がスンとするタイプである。そして絶叫マシン特有のあの無駄な加速度が極めて苦手で、「もしかしたらここから放り出されて死ぬかもしれない」という強迫観念に襲われ、1%にも満たないような事故の確率を勘繰り、搭乗することすら出来ないのである。小学6年の修学旅行北海道ルスツリゾート遊園地という所を訪れたのだが、そこで生まれて初めて乗ったフリーフォールとやらがあまりに具合の悪い仕様で、搭乗後昼に食ったジンギスカンを全て戻すという事件に見舞われた。それ以来小さめのジェットコースターなどもNGで、中学・高校の修学旅行などで訪れたテーマパークでも全て絶叫マシンに搭乗することを拒否したのだった。何より何故学校の修学旅行でテーマパークに行かなきゃならんのかが小学生の頃から疑問だった。見学や研修を目的とするならばそのテーマパークの運営会社の会社訪問の方がよっぽど勉強になる。ジェットコースターの動く仕組み集客に向けた営業努力など、現場でしか聞けない話を聞いた方がよっぽど為になるというか、生きてく上で軽い話のネタになる。そんな中テーマパークで一日遊ぶ日程というのは、もはや学校側のスケジュール調整として使われているにしか過ぎないのではないかと思っていた。

本題に戻すが、上述にある2度目の訪Dというのは中学3年の修学旅行で、それは確実に学校側のスケジュール調整として使われた。そもそも初日に横浜八景島シーパラダイスに行き、3日目にディズニーランドという、私を殺しにきたような日程だった。当時の我が学校の教職員関係者の中で「所詮田舎モンだから都会の遊園地的なやつ行っとけば満足するべ」的な発想があったのだろう。何より私が行きたかった東京ドームの巨人戦が見事に割愛されていたのはマジで腹が立った記憶がある。その報復として八景島では教職員共の期待を裏切って絶叫系には目もくれずに園内の焼肉屋で焼肉を食ったのは良い思い出だ。同級生達は当時そこにあったバカみたいに高いとこから落ちるフリーフォールみたいなやつが面白いと絶賛していたが、詰襟の学生服姿で食う焼肉が絶品だったことはそいつらには解るまい。

当時日本一の高さと言われた八景島シーパラダイスのアトラクション。冷静に考えて「高いところに上がって急いで下がる」機構の何がおもろいのか。

そしてその翌々日、即ち人生2度目の訪Dが何より悲惨だった。まず園内に焼肉屋がなかった。また、平日の何でもない日にも関わらず人が想像の何倍も居て、アトラクションに乗りたいと並ぶ輩の列や、飯屋にも長蛇の列が出来ていた。私は持ち前の絶叫マシン系嫌いと併せてこの貴重な修学旅行という限られた時間の中でわざわざ数時間も並ぶという行為に虚しさを感じ、更には飛んでいたカラスに右肩あたりに糞をかけられ、1人絶望していた。人はよく「夢の国」と当該施設を賞賛するが、糞をかけられることが夢だとしたらクソくらえである。そもそも何を以て「夢の国」なのか。カラスのクソが田舎のカラスのクソより臭かった辺り、所詮都会の埋立地、決して良い環境とは言えないだろう。その上デフレが進む我が国日本に於いてこの地だけは経済特区となっているのか、食い物ひとつにしてもインフレが過ぎる。まあ比較的賃金の高い首都圏では標準的な価格かもしれないが、私含む国の人口1億数千万人のうち半数以上の地方地域に住む人間にとって、なかなか園内の物価状況は夢見心地になれないだろう。まあある意味そんな特区に遊びに行くという行為こそ「夢」(=希望=”hope”)なのかもしれないが、私のような砂利は残念なことに希望はおろか="fantasy"な「夢」としても受け入れられず、よっぽど吉原とかの方が夢やロマンを感じるのであった。

いずれにせよ避けて通れなさそうなディズニー幕府との衝突なのだが、そもそも幼い頃からディズニーの世界観に寄り添った生活もしていなかったのでよく分かっていない。当然ながらミッキーマウスミニーマウス、ドナルドダックという主力キャラは把握しているが、それ以外クルーの顔と名前が一致しない。正直KANDYTOWNに人が居過ぎて主軸以外よくわからないのと同じような感じで、「え?あいつもディズニークルーなのか」と思う筈である。この際スマブラのようなディズニーの格ゲーとかを思い切って出してもらえれば私のような奴は速攻覚えると思う。かのスマブラに出たディズニー版権でお馴染み「キングダムハーツ」の主人公ソラ名前だけは本編をプレイしなくとも知ってるというのもその辺のお陰だ。昔から格ゲーヤンキー漫画キャラの飽和と渋滞が定番である。しかし「東京リベンジャーズ」みたいにキャラの顔も似たような質感で、更に時空を行き来された暁にはマジで誰が誰か分からんので、ディズニー界隈は20世紀縛りとかにして欲しい。その辺は日本が誇るメイド・イン・ジャパンことジブリ作品も同様だ。そもそも「子供はディズニーとかジブリが好き」みたいな風潮を押し付けるのは、多様性が叫ばれる昨今には相応しくない。アンパンマンとかしまじろうも同様だ。あの辺は親が見せずとも保育所みたいな外の機関が子供に植え付けてくるので、誰が父親が認識するより先にアンパンマンを認識しちゃったりしてマジで立場がない。まあアンパンマンに関しては私自身長年ドキンちゃん推しで、所謂エヴァのアスカ同じ赤い類に属する女が好きというカスな理由で許容している。

と、その当事者であるうちの倅はどうやら未だディズニーやら何やらに興味がない様子で、試しにネズミ連中がパヤパヤする動画を見せてもかなりリアクションが薄かった。それよりも救急車とか消防車みたいな職業車に夢中らしい。倅にとってはどデカい幕府よりも最寄りの町火消しとかの方がよっぽど夢があるのかもしれない。

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