デザイナーを目指す就活生の皆さんへ

こちらの記事は2018年に母校の就活生向けイベントに登壇した際に書いたものです。2023年に一部を編集してnoteに移行しました。現在は株式会社shizaiで活動しています。

こんにちは。
NHN Japan株式会社という会社で働いている、酒井と申します。
2012年卒ですので、社会人になって約6年のデザイナーです。

まずは読み始めてくれてありがとうございます!
このテキストは就職活動の担当者の方に「こんなことを喋って欲しい」と言われたことをまとめたものです。僕はデザイナーをしていますが、デザイナー以外でも「制作系の職につきたいな〜」と思っている方なら参考になる話があると思います。少しでもあなたのお役に立てたら嬉しいです。

心配症な僕が、イベントでお話をした内容を補足する意味合いで書いたものですから、結構長くなっています。お菓子を片手にお家でゆったりと読んでくださいね。
(目安:約15分)


まとめると

  • ポートフォリオは見てくれる人のことをよく考えて作ろう

  • 面接は仲間選びなので難しく考えないでね

  • 好きなことを仕事にしたほうが楽しいよ

  • めんどくさがりほど今やったほうが楽

  • ライバルを知っておこう

  • 情報収集が大切

1.学生時代・今の仕事について

まずは僕について書かなければいけません。
簡単に書きますから、よかったらお付き合いください。「興味ねえよ!」という方は飛ばして「2.就職活動について」からでも大丈夫です。

学生時代について

現役で受験した全ての大学に落ち、一浪して地方の映像系大学に入学。美大に行きたかったのですが、全く絵が描けず断念。入試にデッサンが無く、デザインの授業があったので映像の学科を選びました。書いてみるとひどい😭

3年生からの専攻はCGで、Adobe FlashにあるActionScript3.0という言語を使ったインタラクティブな作品作りや、Android端末で音声アプリの開発などをやっていました。(当時はまだスマホが出たばかりでした)
デザインは基本をゼミの先生に教えて頂き、普段は自分で情報を集めて勉強していました。ヒィ〜ヒィ〜言いながらポートフォリオを作ったことを覚えています。

今の仕事について

僕が所属しているNHNグループは、ゲーム・マンガなどを扱うエンタメ系の会社です。
代表的なサービスは
・comico
・LINEディズニーツムツム
・妖怪ウォッチ ぷにぷに
・#コンパス 戦闘摂理解析システム
などがあります。
その中で僕はマンガアプリ「comico」のアプリUIデザインを担当しています。

https://goo.gl/98h03U

もしユーザーの方でしたら、いつもありがとうございます。あなたのお陰で頑張れています。知らない方でしたら、ぜひ使ってみてください。
ほぼ立ち上げから参加をしているため、2018年3月現在、4年と3ヶ月ほどcomicoに関わっています。(追記:2018年夏に退職済みです)

UIデザインってなに?という方もいるかもしれませんね。すごーく雑に言うと、アプリ(やWEBサービス)を快適に使えるように設計・整備する仕事です。細かい話をすると長くなってしまうのでgoogle先生に聞いてみてくださいね。(丸投げ)
楽しい仕事ですから、これを機に少し調べていただけたら嬉しいです。

ちなみに今回は就活の話ですが、会社に入るまでより入った後のほうが30倍ぐらい大変です。毎日自分の無能さを痛感させられ、理想と現実のギャップが凄すぎてとにかくツライ。でも事実だからどうしようもない。

「なんだか大変そう〜」と思ったかもしれませんが、憧れていた職業ですからとにかく楽しいです。数年かかりましたが、必死にやっていたらいつの間にか自信をもって「僕はデザイナーです」と言えるようになりました。

デザイナーとして、自分が作ったものが初めて世に出た時の気持ちは一生忘れません。本当に小さな仕事でしたが、ものすごく嬉しくてその日はスキップしてご褒美にスイーツ買って帰りました。
ツライ時もありますが、自分の作ったもので誰かが一喜一憂しているところを見るたびに、それを超えた喜びを感じます。
これは制作系の職種でないとなかなか味わえない事なのかもしれません。

2.就職活動について

当然ですが就職活動は千差万別です。
こんな奴もいるんだなぁという参考程度に読んでいただきたいと思います。

活動期間と就活内容について

僕が今の会社を受けたときの面接の流れはこんな感じでした。

  1. グループディスカッション(「身近なUXとは?」という内容)

  2. 書類選考(ポートフォリオ提出)

  3. 人事面接(2時間)

  4. デザイナー面接(2時間) ※ほぼここで合否が決まる

  5. 社長面接(1時間半)

「面接時間長くね?」と思うかもしれませんが、実際にやってみると一瞬で終わります。超必死なので。当たり前ですけど、選考が厳しい方が会社に入ってからは大切にされるので、狭き門なのは悪い面ばかりでは無いと思います。

なぜ今の会社を受けたのか

完全になりゆきです。
時は大学4年の11月。僕はやっとポートフォリオができて(遅い)、さぁこれから会社面接行くで〜(遅い)と意気込んでいた時でした。たまたまその時期に学校に会社説明会と面接をしに来た会社がありました。それがNHN Japan株式会社という会社だっただけです。(自分から出向いてさえいない)

先生が「絶対行け(怒)」って言ってるし、しゃーない行くか〜ぐらいのノリで説明会に行ったのが始まりです。ただ、実際に話を聞いてみて、どうしてもこの会社で働きたいという気持ちになりました。それは何故かと言うと、2012年当時はNHNがオンラインゲームをメインに扱う会社だったからです。

僕は1浪しており、高校3年から大学1年までの約3年間いわゆるネトゲ廃人(死語)でした。特に浪人時代はネットの世界にしか友達がいなくて、メンテナンスの時以外ログインしっぱなしの状態でした。

どっぷりハマっていた世界に飛び込めて、夢だったデザイナーにもなれるなんて、まさに最高の条件や!と、そのままの勢いでグループディスカッションに参加しました。そこから、面接で「中毒者にしか出せない雰囲気」を出し、内定を受けます。
これは面接をする側になって初めてわかったことですが、自分の仕事を好いてくれているだけで嬉しいです。あと本当に好きかはすぐわかります。

ここまでの偶然はあまりないかもしれませんが、多くのチャンスは「いきなりやってくるもの」なんじゃないかなと思っています。しかも僕みたいに自分でそのチャンスに気付けず、周りの人に気付かされる場合もあります。何がきっかけになるかわからないので、迷ったら一旦行動してみることをオススメします。

なぜ内定がもらえたのか

実際に僕のポートフォリオを見てくれた方・面接をしてくれた方から聞いた話を参考にしつつ、僕も今は現場の人間ですから、どんな人を採用したいかを書きたいと思います。
面接の流れのところでも書きましたが、制作系場合は人事ではなく現場のリーダーが入社させるかの決定権を持っている事が多いです。(あくまで僕の観測している範囲でですが)

■ 非常に重視されていたこと
一緒に働きたいか
学生を採用する際は、ほとんどの場合その後の成長を期待して採用することになります。自分かチームメンバーがあなたの面倒をみなければいけませんよね。まずは「後輩として一緒に仕事ができるイメージを持てるか、チームに入れて大丈夫か」を受け答えから判断しています。なんか婚活みたいなイメージです。(※大量採用の場合は当てはまらないかもしれません)

形式張った面接形式を取っているのでなんか緊張しますが、よくよく考えてみれば会社に行って質問に答えて相性を確かめてるだけです。制作系の仕事は必ず誰かと一緒にモノを作ります。会社にすでにいるメンバーとあなたとの相性が実際一番重要です。

「いや、そんなのわからんやん」という声が聞こえます…!そう、わかりません。なので等身大の自分で望みましょう。ここで嘘をついてミスマッチが起こると一番ツラいのはあなたです。入ってしまえばなんとかなるという考えの方もいるかもしれませんが、周りの人も不幸にするので個人的にはオススメしません。

最低限の知識を持っているか
デザイナーならデザイナーの共通言語で話ができるか、面談で確認します。口でデザイナーになりたいと言っているだけで、あまり勉強していない状態はすぐにわかります。最低でも今起こっているトピックを知っている状態にはなっておきたいところです。

自社のサービスや希望している職種に興味があるか
「うちのサービスのどこが好き?そしてそれはなぜ?」
「うちでデザイナーになってやりたいことは?」
この部分はしつこいぐらい聞かれました。本当に好きなものを仕事にしている人と、そうでない人では成長速度にものすごく差が出ます。

よく少年マンガに出てくる急成長するキャラって、象徴的な姿ですよね。夢を持ち、好きなことを努力を惜しまずやり続ける。その姿にみんなが共感してサポートするようになっていく。最初はポンコツでも必ず天才的なライバルを倒すほどに成長します。現実ではうまくいかないこともありますが、やっぱり好きなことをやっている人は応援したくなりますよね。

僕は学生で実力に大きな差があることは稀だと思っています。であれば自社サービスや職種がめちゃくちゃ好きでどうしてもやりたいという方を採用したい。

■ そこまで重視されていなかったこと
作品の質と量
僕の学生時代のポートフォリオを貼っておきます。見たらわかると思いますが、正直クオリティは高く無いですし、作品数も少ないです。(今見るととてもつらい…)
とはいえ、最低限ここは超えてほしいというラインは超えていたと聞いています。僕の場合は足切りには引っ掛からなかったというのが正しいかと思います。

実際のポートフォリオ
実際に渡した名刺。下部には学校名と名前が入っています。※現在URLは死んでいます

質の部分では「今できるか」より「今後できるようになるか」を見ていたようです。それは「才能」のような抽象的なものではなく、流行りを上手く取り入れられているか、デザインのマナーが守られているかといった「ちゃんとデザインを大切に(勉強)しているかな?」という部分です。

数に関しても、多ければ多ければ良いというわけではありません。実際に、僕は希望者の中でも圧倒的に作品数が少なかったです。
ポートフォリオは、1つでもいいから作品を見た人に「話を聞いてみたい」と思ってもらえるものがあるかの勝負だと思います。僕の場合は作品数が少なすぎて「もっと作品を見たい」と言われ、後から追加で作品を出すことになりましたが…

ポートフォリオについて

作品を全部載せるというより、これを見てほしいという作品に絞ったほうが興味を引いて良い場合もあります。悲しいことにポートフォリオを見る人は全てのページをしっかり見てくれるわけではありません。現場は基本的に忙しいですから、少し見て興味がわかなかったらその時点で終わりです。
ですから、見てくれる相手のことを意識してポートフォリオを作る必要があります。

僕はWEBデザイナー希望だったので、自前でポートフォリオサイトを作りました。当時はそんな人は少なかったようです。ほとんどが紙でした。というのも、他の方はWEBデザイナーだけでなく他社でグラフィックデザイナーも同時に受ける前提のポートフォリオになっており、WEBでポートフォリオを出してくる学生が少なかったようです。
今みたいに手軽にサイトを作れるサービスが無く、ドメイン(※自分のサイトのURL)を取って、レンタルサーバーを借り、コーディング(※プログラムを書くこと)をしなければいけなくて、作るのがとても面倒だったのもあると思います。
ポートフォリオは相対で見られますので、WEBでポートフォリオを制作している時点で、目立つことができたのだと思います。

もしあなたが、僕と同じように作品が少なかったり、どうしても行きたい会社があるのなら、オススメな方法があります。それは、希望している会社が出しているものを真似して作ってみて、その中で学んだ良いところと改善案をまとめたレポートを作ることです。とても勉強になると思いますし、僕なら制作されたデータを確認してレポートを読みます。自分がやっている仕事ですから、学生がどう考えているか、とても興味があります。現場の情報がないので改善案は的外れなものになってしまいがちですが、それでも良いです。ただし、あくまでその企業向けに共有するにとどめ、SNSにアップするのは避けましょう。また、作成者へのリスペクトに欠ける書き方になっていないか注意してください。)

その人の考える力や制作能力もわかりますし、内容が良ければ実際に話を聞いてみたくなります。オススメです。そしてもうひとつ、ぜひやってほしいことがあります。作ったものを誰か(できればターゲットに近い人)に見てもらいましょう。なるべく早い段階で。恥ずかしい?笑われるかも?わかる〜僕もいまだにそう思います(笑)

でも一番効果的で、何が問題か本番前に分かるからとても大切です。自分の作ったものを自分で正しく評価することはかなり難しい。どうしてもできた後のテンションは「もしや天才では…!」となりがちです。だいたい誰かに見てもらうと全然反応がなくてへこみます。

たまに学生が僕のところにポートフォリオを持ってきてくれますが、その時点で素晴らしいなと思っています。とても勇気のいることですし、自分が作ったものへの反応が知りたいと思えるのはクリエイターに向いていると思います。

お前は誰かに見せたのかって?もちろん見せてボロカスに言われてます…。でもその甲斐もあって、ポートフォリオは使えるレベルになったと思います。

3.メッセージ

社会人になって感じたことや、大学の同期を見て感じたことを書きたいと思います。

好きなことを仕事にしたほうが良い

これはポジショントークなのですが、好きなことを仕事にしたほうがいいんじゃないかと思います。1日の大半を仕事をして過ごすことを考えてみると、全然好きじゃないことを仕事にするのは忍耐が必要になると思います。社会人になると勉強しなければいけないことが増えるのに、そこへのモチベーションが続かなくて苦しくなっていきそうです。

自分が何が好きかわからないという方もいると思います。でも、この「好き」が「100%好き」なのか「10%好き」なのかで全然違うと思っていて、僕は仕事に関しては後者で十分なんじゃないかと思っています。それならある程度存在するんじゃないでしょうか。
仕事はまあ苦しいので、100%好きといえるものなんてあまり無いのではと思います。(僕もデザインが好きですが、100%好きかと言われるとそうではないかなと思います)

今やったほうが楽

就活ってくっそ面倒だしツライしやりたくない。これは当たり前で、人間の本能です。
でも冷静に考えればわかると思うのですが、今やったほうが圧倒的に楽なんです。あとから追いかける場合に必要になるパワーは計り知れないです。サボりたい・楽をしたいと思っているあなたこそ今すぐ始めるべきです。

ちなみにやる気というのは実際にやり始めてから湧いてくることが脳科学の研究でわかっています。掃除とかまさにそうですよね。だから「やる気でねえなあ〜」という時はまず小さく始めてみましょう。

小さなことからコツコツと

僕はデザイナーになりたいという目標がありましたが、デザイナーってどうやったらなれるのか正直良くわからなかったのです。わからなさすぎて漠然とした不安がありました。
ただ、どう考えてみても作品は必要なのに、ゼミ展(※大学3年時にある展覧会です)が終わった時点でWEBデザインの作品が全く無かったのです。仕方がないので、とりあえず作品を作りはじめました。すると次にやらなきゃいけないことがわかり始めました。
作品ができたからポートフォリオ作らなきゃ!その次は…みたいな具合です。

僕は何から手を付けたら良いかわからないから不安だったんです。あなたがもし僕と同じように謎の不安感に襲われているのであれば、今の状況を冷静に整理して、まずやらなければいけないことを見つけると少し安心できます。

勉強は無限に広がってしまう。…(中略)「まずこれだけ」、そして「ここまででいい」という「有限性」を設定しなければ、勉強は成り立ちません。

千葉 雅也「勉強の哲学 来るべきバカのために」

僕の好きな本である「勉強の哲学」にも記載があるのですが、何事も「有限性」を設定しなければ成り立たないのではないかと考えています。

情報収集をしよう

どんな方法でも良いですから、その仕事の第一線にいる方の情報発信や作ったものを見逃さないようにしましょう。たとえ理解できなかったとしても、知っているだけで他の学生に差をつけられます。
例えば、noteを使っている方ならみんな知っている深津さんのnoteではポートフォリオの作り方をまとめていたりします。これ読んどけば良いじゃん…

■就活用の作品ポートフォリオの作り方
https://note.mu/fladdict/n/ne61e9b48f112

こういった業界の有名人が書いた記事は、採用側も読んでいる可能性が高いです。非常に参考になりますよね。

4.最後に

ここまで読んでくださりありがとうございました。あ〜長かったね。ごめんね。
少しは参考になることがあったでしょうか。

最後にもう一度まとめ!
・ポートフォリオは見てくれる人のことを考えてね
・面接は楽しく話そう
・好きなこと仕事にしよう
・今からやろう
・情報収集しよう
就活は精神的にも肉体的にも追い込まれて大変ですが、いろんな現場の人たちと話せるチャンスでもあります。この機会を大切にして、たくさんのことを学ぶために企業を回ることをオススメします。聞きたいことはなんでも聞いちゃいましょう。先輩社員もあなたと同じただの人間ですから、面接では同じように緊張しています。(たぶん)

リスペクトする気持ちを持って一緒に会話を楽しめば、面接は必ず成功すると思いますよ。
このテキストはあなたの不安を少しでも取り除き、少しでも前向きになれるようにと思って書きました。どうだったでしょうか。
最後まで読んでくれたあなたが内定を勝ち取れますように。

◆◆◆

ここまで散々就活について書きましたが、僕は会社に就職することが全てでは無いと思っています。やりたいことがやれて、お金のことで悩まないのであれば、別に会社に所属する必要はありません。
「この人を支えたい!」という人がいるなら、結婚して主夫(婦)なんてのもステキだと思います。親が裕福なら全力でスネをかじれば良いですしね。

「絶対に就職しなければならぬッ!!!」みたいな堅い気持ちは一旦解いて、自分がしたいことはどうしたら実現できるのか、一度考えてみるのも良いかもしれません。たとえ就活に失敗したとしても、あなた自身が否定されたわけではないということも忘れないでください。あなたのことを必要としている人は必ずいます。

柄にもなく良いことを言ってしまった…まぁ結局幸せならなんだって良いじゃん!てことです!日々楽しく過ごせればALL OK〜

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