見出し画像

キッズキッチンレター4月号

1年間キッズキッチンを応援いただきありがとうございました。今年度のテーマは「まるごとの素材を知ろう」でした。弊スタジオの創設者、坂本広子が生前立ち上げたプログラム案に基づいて行っています。昔は家でしていたけれど、今はあんまりされなくなったようなことをなるべく昔されていたような形で体験できるようなプログラムになっています。ぬか漬け、1匹の鶏をさばいて肉にする、いかをさばく、いろいろな芋を使ってみるなど、1年間様々な「丸ごと素材」を使ってみました。
3月は海鮮、特に貝を中心に全部!丸ごと!使いました。春は二枚貝の季節、潮干狩りが始まる季節でもあります。今年は少々寒いので例年通りではありませんが、あさりがとれる季節になりました。潮干狩りができる場所も、そして資源もだんだんと減っています。海に出かけるのが難しく、スーパーマーケットを観察しているだけでも、環境問題も身近に感じられるものです。
また、ちょうど神戸ではいかなごの解禁の時期でもありました。年々遅くなり、今年は3月9日に解禁と言いながら、天候のためさらに遅れ、そして3月11日に1日だけとって終了してしまいました。いかなごは3cmぐらいの新子をいかなごと呼び、同じいかなごでも10cm程度の親は、古背(ふるせ)と呼びます。新子の解禁前は、古背がぼちぼちお店に並びます。そのまま茹でるとぐにゃぐにゃ曲がるため、真っ直ぐな姿のまま塩茹でまたは醤油で煮付けるのが代々伝わる家のワザです。大袈裟でしょうか。皿などで挟んでゆっくり火を通すという方法です。これも素材がいなくなれば、伝えられません。今、私の子どもは小学生で、いかなごの炊き方はかろうじて伝わるかどうかの瀬戸際です。直炊きと呼ばれる独特の方法が、細々でいいので、子どもに伝えられたらいいなと思います。海の環境を改善するには、どうしたらいいのでしょうか。まだそれはわかっていないようです。そんなわけで、あさりやいかなごで、春は特に環境を意識する時期でもあります。

貝は大きく分けて2種類に分かれます。巻貝と二枚貝です。教室でも両方用意して、パエリアを作りました。海の中の生き物で、人間が食べているものは、魚だけではありません。エビやカニなどの甲殻類や、イカやタコなどの軟体動物、貝類、ウニ、ホヤなど、多種多様です。今回のパエリアには、有頭エビ、イカ、ホタテを中心に、その日ある貝が登場しました。ですので、クラスごとに違う素材を使うことになりました。
3月によく使うあさりやはまぐりのような全部食べられる貝もあれば、タイラギやホタテのように貝柱とヒモを主に食べる貝もあります。バイガイのように、唾液腺という人間には毒になる部分を持つ貝もあり、唾液腺を抜くのを見せたり、ひとくちに貝と言っても、形もいろいろ、下処理の方法、料理の方法はいろいろです。
 環境の問題のひとつに、人間が利用しなくなると忘れ去られてしまう、顧みられなくなってしまうということがあります。自然に帰るという意味ではそのままでもいいのかも知れませんが、人間が持ち続けてきた知恵や食文化を伝えるには、一つには食材がなければなりません。食材がなくなれば、利用する文化も、道具も、道具を作る技術もなくなる。
普段は食べなくても、行事の時に食べる、何かの機会には食べるというふうにでも、利用を続ける必要性を感じています。
資源を守りつつ、環境を改善しつつ、食の文化も伝える、歴史をつないでいくことの難しさを感じますね。

来年度は科学をテーマにしたお料理教室です!
ちょっと覗いてみたいなというテーマがありましたら、是非おいでください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?