半分の蝋燭を折渡す。【#毎週ショートショートnote 参加作】
――人生は蝋燭だ。
比喩でも何でもなく、私には人生の濃度や残り時間が蝋燭の形で見える。蝋燭が太い程人生は色濃く、長い程長生きする。
最近、この蝋燭を人に移せる事に気付く。自身の蝋燭を一部折り取り他者のに接合し、長さを変えられるのだ。
だから。
私は生死の境を跨ぐ恋人に、自身の蝋燭を半分折り渡した。好きな人と一緒に居られない事こそ不幸だから。
こうして自分と恋人の蝋燭は同じ長さになった。
数日後、恋人は目を覚ます。
信じられないと言う恋人を滲む視界で見つめ、手を握った。
良かった、本当に。
そんな私に恋人も、なら、と手を握り返す。
「私と、添い遂げて」
勿論。半分蝋燭のお蔭で余生が同じになったしね。
〜〜〜
――ここ二ヶ月の鮮やかな過去の幻像から覚める。現実の視界は霞んでいた。
手を繋ぎ横たわる恋人が微笑む。私も微笑む。添い遂げられるのだから当然だ。
燃える七輪の音を耳に、自分と恋人の半分ずつに分けた蝋燭が燃え尽きるのを、確かに感じていた。
(空白除く410字)
※当作品は下記企画の参加作品です。お題は『半分ろうそく』。ご興味ある方はぜひご参加下さいな。
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