見出し画像

人事制度とは?等級・評価・賃金制度の枠組みを決める


​等級制度 〜組織をデザインする〜

等級制度とは、在籍社員を能力・職務・役割などによって区分・序列化し、業務を遂行する際の権限や責任、さらには処遇を決める根拠となる制度です。

つまり「社員」を「何らかの基準」で「数段階」に「区別した」ものということができます。代表的な等級制度として、職能等級制度、職務等級制度、役割等級制度があります。

また等級制度を設計する際は、等級制度の内容に加えて、昇降格制度を定義する必要があります。

評価制度​ 〜成果を決める〜

評価制度とは、社員が行った業務、創出した成果を一定の基準に基づいて、数値化する方法を定めた制度です。

評価制度は等級制度、報酬制度を正しく運用し続けるためにも重要ですが、人材育成や企業文化の醸成という観点でも重要です。

評価制度を設計する際は、何のために評価を行い、どのような組織を作っていきたいのかをイメージしながら設計します。

賃金制度 ​〜給与を決める〜

賃金制度とは、基準に従って社員の給与や賞与などを決める制度のことです。賃金制度における基準は等級制度や評価制度によって定義されます。

報酬制度を設計する際は、業界・業種・地域の給与平均などを参考にすることも大切ですが、社員が何年でどこまで昇格し、どのような給与になるのかという社員の生活をイメージして給与設定することが重要です。


人事制度の作り方 ー 等級制度

等級制度を作るにあたっての主な観点は以下です。

  • 今回作りたい等級制度は、職能等級制度、職務等級制度、役割等級制、またはそれ以外か

  • 等級の数はいくつにするのが最適か

  • 各等級に求める能力or成果、行動(要件定義)はどのようなものか

  • 各等級への昇降格はどのような基準で昇降格させるか

さまざまな人事制度のタイプ

◼︎職能資格制度

職能資格制度は勤続年数の積み重ねに伴って、得られる職務遂行能力を基準とした等級制度です。要件定義の中身は「〇〇ができる能力を有する」となります。これは日本型の終身雇用を前提とした制度です。

部署異動を積み重ねる中で様々な職務を遂行できる能力が培われていることを評価するため、同じ職務を担っていても給与が異なる場合があります。

給与の面では、いわゆる年功序列の仕組みになりやすい制度で、ゼネラリスト育成に向いています。人材の⻑期確保や部署異動の容易さにメリットがあります。デメリットとしては、⻑期雇用に伴う人件費の高騰、年功序列による若手のモチベーション低下が挙げられます。

◼︎​職務等級制度

職務等級制度は、遂行する職務の難易度を基準とした等級制度です。要件定義の中身は「〇〇の職務を行う」となります。
いわゆるジョブ型と呼ばれる等級制度で、元々は米国企業で主流の等級制度でしたが、近年は日本でも増加傾向にあります。

能力ではなくどのような職務を行っているかを評価するため、同じ職務を担っていれば給与は同じです。報酬は職務の難易度によって決まるため、決めやすく、スペシャリスト育成に向いています。

人件費の変動が少なく、担う役割がはっきりしているため優秀な人材を採用しやすいことにメリットがあります。デメリットとしては、部署異動等の人員配置の難易度の高さが挙げられます。
また 職務自体の定義の難しさや、仮に定義をしたとしても仕事が流動的に変化してしまう場合に対応が難しいこ ともデメリットとして挙げられます。

◼︎​役割等級制度

遂行する職務と職務遂行能力を合わせて役割として基準とした制度です。要件定義の中身は「〇〇の役割を担う」となります。職能等級と職務等級の良いとこ取りですが、設計難易度の高い制度です。

能力と職務によって役割を定義するため、同じ職務を行っていても給料が違う場合はありますが、担っている役割、つまりその職務を行う意味は異なります。報酬は「その役割が企業においてどれくらいの成果を上げているか」 によって決まり、スペシャリスト・ジェネラリストどちらの育成にも繋げることができます。

柔軟に目標設定することが可能で、社員の強み・主体性を引き出しやすいことにメリットがあります。デメリットとしては、等級制度設計の難易度の高さと、組織の発達段階に合わせて適時制度の見直しを行っていく必要がある点が挙げられます。


人事制度の作り方 ー 評価制度

評価制度は人事評価制度の根幹となる部分であり、設計が一番難しい部分でもあります。しかし決めなければいけないことは整理すると実は単純です。

  • 何を(評価項目)評価するのか

  • どのような割合で(評価ウェイト)評価するのか

  • どのように(評価方法)評価するのか

上記を明確にできれば評価制度を設計することが可能です。

今回は上記の3つについてみていきます。
この他に評価フローを決定する必要があります。

何を(評価項目)評価するのか

評価する項目は大きく分けると4つに分かれます。

◼︎成果評価

成果は個人の成果、組織の成果の2つにさらに分けることができます。

◼︎行動評価

メンバー層の場合は個人の行動が評価され、マネジメント層の場合は部下の行動も評価に組み込まれる場合 があります。

◼︎能力評価

能力評価は職能等級制度で用いられることが一般的で、職務等級制度と役割等級制度が使われている場合、 用いられることは少ないです。

◼︎バリュー評価(姿勢・情意)

会社の理念やビジョンへの共感や、会社の行動指針に準じた行動、自身の目標外の組織貢献など本人の意欲 が表れる部分を評価します。バリュー評価をどのように扱うかは会社の文化醸成に密接に関わります。

何を評価するのかを選ぶのは非常に難しく、かつ重要なフェーズです。

「社員にどのような行動をとって欲しいか」と
「どのような企業文化を作っていきたいか」を明確にするということです。

どのような割合(評価ウェイト)で評価するのか

評価ウェイトについては、社員にとって欲しい行動と作り出したい会社の文化が見えていればそこまで悩まず決めることができます。

上位等級に上がるにつれて、成果の評価割合を上げていくことが一般的ですが、「上位等級はマネジメントに力を入れて欲しい」ということであれば、マネジメントに関する行動の評価ウェイトを高めるか、もしくは部下の成果を上司の評価に組み込み、その評価ウェイトを高めるという考え方もあります。社員 の行動と作り出したい文化を軸に決めていきましょう。

どのように(評価方法)評価するのか

何を、どのような割合で評価したいかが決まれば、次に「どのように評価をするか?」という評価方法の選定に移ります。ここでは代表的な3つの評価方法について説明していきます。

◼︎目標管理制度(MBO)

グループや個人で目標を設定し、目標の達成率や達成プロセスで評価する手法です。最も汎用性のある評価方法であり、主に成果評価・行動評価・情意評価を行うことができます。個人個人で目標の目標が明確になり、また個人で目標を設定することで、目標達成への意欲や主体性が高まります。

一方で曖昧な目標設定を 行ってしまうと公平な評価ができなくなることや、設定する目標の難易度が人によってバラつくという懸念点があります。

■コンピテンシー評価

行動特性による評価基準を設定し、その行動特性がどれくらいのレベルでできているかを評価します。主に行動評価・能力評価・バリュー評価に用いられます。行動特性による評価基準の作成方法は、ハイパフォーマーな人材に共通する行動特性を評価基準とする方法と、成果を出すための理論上のモデルを作成し、そのモデルを実行する上で必要な行動特性を評価基準とする2種類の方法があります。

いずれの方法でも成果を出すために必要な行動を評価基準としているので、評価の公平性が高まりやすく、評価の納得感を得やすいことが特徴です。
一方で評価基準自体に問題がある、もしくは評価基準となっている行動特性に対する解釈にばらつきがあると期待通りの効果が得られない可能性があります。

■360度評価

360度評価は評価対象者の上司だけでなく、評価対象者の部下や同僚、他部署からの評価などによって評価対象者を多面的に評価する評価方法です。
主に行動評価・バリュー評価に用いられます。

上司のみでは見切れない普段の行動を評価することができるため、評価される行動の範囲が広がることが特徴です。また複数人による評価が行われるため、公平性や客観性が一般的には高まります。

一方で評価を気にするあまり、人間関係や上司部下関係に支障をきたすことや、人間関係自体が評価に影響することも考えられるため、情意評価における加点要素として扱うことや、上司が評価を行う際の参考とすることが推奨されます。


人事制度の作り方 ー 賃金制度

自社内で人事制度設計を行う場合でも、賃金制度のみはコンサルティング会社や社労士事務所にご相談いただくことをおすすめします。なぜならば、人事制度の設計に伴い減給などが発生する場合、訴訟リスクが発生する点や、給与シミュレーションをしっかりと行わないと人件費のコントロールが効かなくなる点が懸念されるためです。

弊社では賃金制度単体の設計コンサルティングや、賃金制度の給与シミュレーションから制度の懸念点を洗い出すコンサルティングを提供しております。賃金制度のみのご相談も承っておりますのでご活用ください。さて上記を前提にした上で、賃金制度設計における論点は下記となります。​

  • 基本給をどうするのか

  • 手当をどうするのか

  • 賞与をどうするのか

論点は上記となっておりますが、要するに賃金の構成要素をどのようにするのかという1点に論点はまとめることができます。その中で賃金制度設計における主な論点は基本給と賞与になります。これは等級制度と評価制度と連動する可能性のある賃金の構成要素が、基本給と賞与であるからです。

人事制度の詳細な設定方法についてお伺いしたい方は、お気軽にお問い合わせください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?