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アニメ「無職転生」第6話感想 性的合意の問題を雑に扱ってるのが気になる

今回は日常回として街の様子やボレアス家の面々、家庭教師の実際の様子、何よりヒロイン、エリスの魅力が描けていた回だと思います。正直手放しで褒めたいところですが、今作で初めて個人的に問題と思う箇所があったのでその点を考えていきたいと思います。

9歳児の寝込みに手を出すシーンはさすがにアウト

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問題となるのは授業を抜け出したエリスが納屋で寝ているところにルディがやってきて、寝ているエリスの胸を触ったり、パンツを脱がそうとするシーンがあるのですが、さすがにこれはギリギリどころか余裕でアウトじゃないでしょう。(中身精神年齢40overですし)

もし反論があるとすれば、表現の自由、いまさら無職転生という作品(ある程度エロやゲスいのは前提の作品)でポリティカル・コレクトネスの話をしているのはおかしい!などあるいは原作準拠だからあえてやっている!という主張もあるかと思います。それぞれに問題となる点について指摘したいと思います。

前提として表現の自由として一般論で片付ける問題というのはなくそれぞれ個別の問題。

もちろん表現することや内心の自由というものがあってよいのですが、ある表現に対してそれが及ぼす「害」がある場合はその「害」について問題を指摘する、時には改善や賠償を要求することも当然の権利としてあります。なので一般論的に「表現の自由」としてすべての問題がオールOKで片付けられるわけではなく個別のケースをそれぞれ注意深く見ていくことが常に大事だと考えます。(※私はこのnoteで謝罪や賠償を求める考えではなく、これって問題じゃないでしょうか?と皆さんに考えてほしいというのが趣旨です)

そもそも無職転生のこれまでの1~4話までの作品メッセージに反している。

深夜アニメとしてある程度ゾーニングされている作品ではありこれまでも、下衆な描写や性的な描写など多くある作品であることは承知しています。ただし、今までのエロや下衆なシーンについては主人公のルーデウスがことさら相手に対して「害」を与えるというほどのものはありませんでした。(ロキシーのパンツを盗むのはわりとNGですが相手にとってはすけべな5歳で困ったもんだという認識くらいで個人的にはギリギリ耐えている認識です)

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今回なによりシナリオ上問題なのは、第3話でシルフィのパンツを脱がした前科があったときルーデウスはかなり反省したことをなかったことにしているのが罪深いのではないかと考えています。

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このときは珍しくパウロいいお父さんとしてルディを諭して、「むりやりはいけない」という話をしており対するルディは「ごめんなさい」と深く反省して謝っているんですね。もちろん、ここでは女の子のだと知らなかったという反省があるのですが、それ以外に相手の気持ちがわからなかったという点や無理やり行動にでたことの反省も十分大きくあったわけです。それに対してシルフィの場合は、事後の関係も数日ギクシャクしてしまったりしたわけです。そもそも無職転生の大テーマとして、「人生を本気でやり直す」というものがあり、人との関わり(特に女の子との)において前世の失敗をなんとか克服して一歩成長したというのが第3話なわけです。

それを第5話において無自覚に相手の同意を得られない形で無理やり胸をさわったりパンツを脱がすというのは、あまりにも残念な展開で作品のテーマに反していますし、第3話の自身の反省やパウロやシルフィの良い話をだいなしにしているのが残念です。もし、今回相手がエリスではなくシルフィをだっとしたら? 寝ているシルフィの胸をさわったり、パンツを脱がしているシーンがあったとしたら、誰でもそれは「アホだろう、傷つけるだろう」と思うのではないでしょうか。しかし、今回はエリスはさっぱりした性格なのでストーリー上は殴っただけであっさり流してくれましたが、相手の同意がとれない段階では、そうなる保証はなく、単なる結果オーライにしているにすぎず、エリスにもまた傷を与える可能性もあったわけです。その可能性をはらんだままに「エリスだからOK」「コメディ的に演出しているからOK」としてしまっているが残念です。このような本質的な問題は演出によってごまかすことはできないし、ごまかそうとしてはいけないと考えます。

性的同意の問題は昨今とくに重要という認識の欠如

社会問題として「性的合意」の問題において日本の法律が他の先進国よりだいぶ遅れているのは昨今問題になっているのが現実です。たんにエロい表現がOKかどうかというのとは異なる人権の問題です。もちろん、そういった事情をあえてわかった上で、これはフィクションであり、今回はルーデウスのアイデンティティや作品メッセージを描くにはどうしても原作に準拠するために今回の描写になっているんだ!という主張もあるかと思います。しかし、その場合でも別に寝ている相手じゃなくて起きているエリスに手を出そうとしてボコボコ殴られるとか(エリスの方が強者なため拒否できる状況)ラッキースケベ的な展開とか、もうちょっと同じような意味を得つつ別のやりようがいくらでもあったかと思います。「性的合意」の問題がナーバスだと理解していれば、原作の意図は損なわず同様の効果を得られることできるシナリオやコンテは組めたのにそうできなかったというのが私が批判したい点です(それがアニメの「シナリオ」の役割ではないでしょうか)。とはいえ私の想像ですが、スタッフの意図的にやったというよりも、ゲスい内容も受け入れられている「なろう」の媒体では読者に意識されにくい描写が、文字ではなく公共の電波を通した映像になったことにより、パンツを脱がすというシーンが思いの外、リアル犯罪臭の強い表現になってしまうことを軽視したのかもしれません。

配信を停止するとかは全く望んでないです

個人的にはこのシリーズは原作や今回のアニメ制作自体素晴らしいものだと考えており、主人公のルディの人間らしい成長をしていくので彼のファンではあります。なので今の中国の炎上のように個人的には配信を停止したりとか、そういうことは全く望んでいません。しかしだからこそ、つまらないところで誤解を招くような表現することで作品やルディの良さを安易に貶めるべきではないと考えます。私としては、今回制作側はわりとこの問題を深く考えずにやっていたか、あるいは外注の配分が多いため監督を中心とした制作ディレクションがうまくいっておらず、作品コンセプトのコントロールがうまくいってなかったのではないかと感じます。なので、上記のような理由を踏まえて(特に3話との兼ね合いで作品メッセージに矛盾が生じる)改めてチーム全体で考え直すようなことがあれば、ブルーレイの販売などの際、改めて考え直し別の表現にするということはできるのではないかと思っています。もちろん、いまのままで良いとその上で判断されるようならば制作側の自由だとは思いますが、いかがでしょうか。

最後に

第6話自体は、美しい背景描写や卒のない家族の紹介、なによりエリスの可愛らしさなどすばらしく描けておりいい部分がたくさんあったと思います。今回の問題点とはそれらの良さを別にして考えたかったので、第6話本来の感想については余裕があれば別途まとめていきたいと思います。
「無職転生」アニメ制作スタッフは本当に素晴らしい仕事をしていると思いますので今後も頑張ってほしいと思います。

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