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アニメ「無職転生」第5話感想 エンタテインメントで本気出す回


今回第5話の無職転生は大満足の回。一人原画で話題になっていましたが、今回だけでなく1話から通じてこの5話まで2時間の劇場版サイズといえます。序盤・中盤でそれまでの積み上げた演出が一気に花開いた!といえる展開だったのではないでしょうか。今回で3ヒロインも登場し、ここまでみてきた視聴者を本気で落としにかかってますね。見どころが盛りだくさんでしたので、時系列にそって感想を書いていきたいと思います。

冒頭は前回からの回答+軽快なコメディに

前回ルディが馬車で連れ去られたところからの続きで、パウロの手紙を用いつつ、ギレーヌとの掛け合いでサクサクと説明していく脚本とアニメーション&声優さんの演技が見事でした。

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ギレーヌの「読め」の発音がいい

手紙を投げつけての一言なんですが、この発音はかなり異質。想像ですがかなりリテイクして録ったような気がします。特に意識せず「読め」の二文字を読んでしまうとふつうは強い命令調になってしまうと思うんですよ。ただギレーヌっていうのは圧倒的な強者であって子供相手だろうが誰であろうが、自分を大きくみせたり、威張ったり、恥じらったりしない。だから短いフレーズなんですが、実際のアフレコの声は、ぶっきらぼうというより、単に言葉遣いを知らないだけで、ふんわりとした強者ならではの優しさがある、たった2文字だけどそういう読み方だと思いました。この段階で声優さんがすでに役柄を掴んでいるような気がしましたね。

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知性あふれる父、パウロが良い

前回のアレから株が下がったというパウロですが、個人的には「ほんと、どうしようもないなぁ」という感じつつ、どっか憎めないんですよね。かなりふざけているようですが、この「無職転生」というある意味、父と子の物語(まっとうに父になり、まっとうに子になる)というテーマがあり、パウロとの関係はやり直しの人生の中で大きな意味を持つため彼との何気ないやりとりも大切に描いているという印象がありました。

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エリスの登場回でありながらインパクトをあえて下げる演出バランスがうまい

いわゆる3大ヒロインで人気も高いエリスの登場をかなり楽しみにしていて、ぶっとんだ暴力キャラが存分に描かれると予想していたのですが、思ったより抑え気味だと感じました。たとえば以下のようなシーンではルディが鼻血だしたり青あざができたりしないのですが、イメージしていたエリスの凶暴性からするとかなり被害が小さい! おそらく、あえてそこまで痛々しくしないのが後半の別の暴力描写を際立たせるため計算されつくした演出だったと思います。

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低いカメラ位置を多用、こども目線の没入感

また子供の世界と大人の世界の対比を描くためにこの回ではカメラの位置を子供の目線においた低いものを多用(あるいは大人からの見下ろす視点)しており、あくまで子どもの世界にいるルディ&エリスの目から見た世界の恐ろしさということについて没入感を高める演出になっていると思います。(ただアオリやパースのついたアングルがかなりクドいくらいだったのでコンテの方の個性という面もあるかと思います)

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「外の世界=真の暴力」を描く

エリスが暴行され目を背けたくなるようなシーン。これまでのややコミカルな展開から冷水を浴びせるような流れですが、これをみてしまうと実家やブエナ村でいかにルディが外の世界から守られていたかが実感できます(ソマル坊のいじめも今や可愛くみえますね)。この展開を見据えて序盤エリスの暴力も抑え気味になっており、作り手側はこの第5話で外の世界の暴力を描くことをテーマにしていることが強く感じました。

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しかしそれでも心が折れないエリスお嬢様はさすがですね。

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(ぐぬぬ)

ハリウッド映画ばりの逃走劇の王道演出

ここからは恐怖の対象から逃げるという怒涛の王道のエンタメ展開になります。おそらく作り手が過去みてきた王道の逃走劇のシーンをここぞとばかりに盛り込んでいる印象です。まさに劇場版クオリティ。

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馬車の音響の作り込みも細かく、耳をそばたてたこころに誘拐犯の馬の激しい音が通り過ぎるのなどセリフのないシーンがドキドキ感満載ですね。

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街のゲートをくぐる意味深な煽りの構図で緊張感をきわだたせています。何も起きないのにわざわざ尺をつかって描いたのがすごく好き。

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安心したところにガバっと!こういうお約束の展開は最高ですよ!

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初の本格的な戦闘!無詠唱もすごいが相手が強い

ルディの無詠唱魔法の流れるような動きのアニメーションが素晴らしい。エリスをキャッチしつつ、動きをとめることなく岩砲弾!反撃読みのバックステップからの3連ファイヤーボール!前世で格ゲーマニアだったルディの感覚では確定コンボののりだったのでしょうか?

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思わず「勝った」といってしまいましたが、ゲームで言えばこちらが60fpsで動いているとしたら120fpsくらいのチートムーブで反撃してくるという、いままでの村で守られていた世界の法則をひっくり返すような戦闘でした。

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ギレーヌという常識外をこれまでの世界観をぶち破るイレギュラーな演出で表現

正直、ギレーヌの登場から必殺の剣技を放ったシーンには本当におったまげました。ここ数年のテレビアニメで一番ビックリしたかもしれません。ギレーヌは「剣王」ということで世界に片手で数えるしかいない王級クラスの人なのでしょうが、アニメーションでそれを表現するのは極めて難しい問題です。しかし、その難題を想像を遥かに超える形で見せてくれたスタッフには本当に脱帽です。

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音と光を一瞬で置き去りに。みたことのないような斬新さでありつつ、決めポーズは王道の時代劇やスーパー戦隊の必殺ワザ後のような「これがみたかったんだよ!」というような美しい型も兼ね備えていましたね。

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耳鳴りの演出がすごいのはこれまで構築した緻密な世界観をぶち破るから

ギレーヌの技が決まったあとの耳鳴りの演出は本当に驚きました。直前まで「画面の向こうに没入していた自分」が、突然、画面の外の「いまここにいる自分」に対して技が飛んできたような効果を生み出すことに成功していますね。これが非常にショッキングに感じたのは、単に音響がすごいというだけでなく、いままで1-4話までで背景美術やパウロとの体術主体の戦闘訓練など、私を含めた視聴者を無職転生の世界観に没入させることに成功させていたからだと思います。「中世をベースとした剣と魔法の世界の常識感」みたいなものがいつの間にか作られていたことにより、SF的な光速を表現する虹の出現や、現代的な戦場での爆発で現れるような耳鳴りが「非常識な現象」としていつの間にか異物として感じるようになっていたということです。これは単にアクション演出として優れているだけでなく、1~4話の丁寧な描写がありつつ、物語上の意味づけとして「この世界の想像を超えた暴力=ギレーヌ含むさらなる達人の世界」を表現できているのがなにより素晴らしい。これにより、ルディが初めて他人の死やこの世界での自分の死を思わせるような衝撃とリンクしいる。視聴者もまたブエナ村で培った常識の外のさらなる異世界へと放り出されるという形になりました。これが全編通してルディの物語が外へ外へと関わっていく展開に説得力をもたせており、私達もルディの成長とともに新たな世界を実感できるようになっているのが本当に素晴らしいと思いました。

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この世界の暴力を見せつけられるルディ
(死体が目の中に写っているのが細かい)

エリスについて最後にまとめ

まさか今回エリスがギレーヌに喰われるとは視聴前には思わなかったので非常にびっくりしました。とはいえ来週以降はずっとエリスのターンだと思います。今回それでもエリスらしさを声優さんやアニメーションでの芝居が非常にうまくいっているのではないかと感じた点がありましたので次回に向けてポイントをおさらいしておきます。

声がでかい
気持ちの強さとバカっぽさが十分に表現されていて素晴らしい。

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気が荒い
見ての通りですね。ザ・鼻息。

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判断が早い
グーパンからマウントポジションまでの流れが秀逸。

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折れない
ひどい目にあっても父親の手を振り払って一人で立ち上がる強さ。(父親とうまくいってないのかも?パウロとの父親像の対比もあるかも?)

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淀みがない
「ふ、ふん!」みたいな照れとかないんですよね。単に「ふん!」なんですよ。ルディをみとめる最後のシーンもギレーヌにならって「単にエリスでいい!」ってのも清々しさがありますよね。

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思ったより子供らしい
「さっきのは嘘よ」一方ですぐに前言撤回するとか可愛らしい。7歳と9歳の男の子と女の子の身長差でていたシーンでは、エリスの方が背が高いにも関わらず両者ともに子供らしさがにじみ出てくるというのが面白い表現でした。

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意外に素直
大声出さない約束を思い出して頑張る。

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そしてデレる兆し
ルディの花火もギレーヌの技同様にこの世界の常識の外にある現代的な発光エフェクトなんですね。だからこそエリスもそれをみて「お屋敷の外の世界」をルディからみることができた。ちゃんと物語上の必然的な意味をもった演出があってデレるわけです。そこが素晴らしい。

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ルディが新たな世界の暴力をみる一方、エリスは新たな世界の希望を見ているんですよね。

さてさてどうなることか。次回からの活躍が楽しみですね!!


おまけ~今週の鼻の穴

やっぱパウロかな…。

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