僕の肝臓をあげたい

気持ち悪い。彼女がインスタのストーリーのためにスマホを横に持って周囲を撮り始めたときにそう思った。今俺とここでいることをSNSにアップする必要がある。

そもそも俺は自分の顔に自信がないので写真や動画に撮られることが嫌いなのもあるが、それを差し引いても近頃みんな撮りすぎだろ、と思う。

楽しい空気に水を差したくない、そう思って言葉を引っ込める。

本音は時に、場を壊す。中学生のころの苦い思い出から、俺は何気なくの発言を過剰に気にする。

自分の中に沈殿した思いをかき混ぜたくて、ペットボトルのお茶をぐいと飲む。

なんでかなあ。伝えたい言葉は、就職活動のとき、やっともらった内定を、親に反対されて取り消した時も、体のどこかに沈殿していった。

いつも、思いは言葉にならない。このままじゃいけない、という思いはいつの間にか消え去って、仕方ないにすり替わっていた。


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