ワイ将、ちょっとナンパしに行ってくる

ところで、面白い小説とはなんだと思うかね。佐多クン。

俺は、ただただ読んでて笑えるものが面白いと思います。読んでいる間は何も考えなくても済むような。

君の決めたその面白いは、誰にとっても面白いのかね。それとも佐多君だけがおもしろいのかね。

俺にとってです。けれど、俺が面白いと思うということは、ほかの人にとっても当て余ると思います。頭の固い杉原教授にはわからないだろうけど、と心の中でつぶやく。

深山大学文学部杉原ゼミは伝統あるラボだ。中でもライターや小説家を目指すヤツが集まる。杉原教授はマスコミや出版社に顔が利く数少ない教授だ。その人脈に期待して、集まる生徒は毎年居る。

「我々が書くものは読まれて初めて小説になる。その小説が面白いなんて言うことはあり得ないのだ。読み手との関係性から面白いが生まれるのだよ。わかるかね。だから、それが読まれないうちはまだ、面白い小説でもなんでもないんだよ」

相変わらずよくわかんねえこと言うな。だれが読んでも面白いもんは面白いんだよ。と心の中で毒づいた。

だから、面白いものを書いてやる、なんて息巻いているうちは書けないよ。それがどんなに面白かろうと、まだだ。それが関係性の中で、どう化学反応を起こしていくのが、楽しみに待つ姿勢こそ、我々に必要なんじゃないか。

相変わらず今日も退屈な語りして上がる。あくびをして寝る体制に入った。


★★★2019年5月3日 4作品め

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