山口良太

見慣れないものごとをわかりやすく、身近に。そしてたのしい気分になること。大阪でデザイン…

山口良太

見慣れないものごとをわかりやすく、身近に。そしてたのしい気分になること。大阪でデザインを仕事にしています。「音楽と演劇の年賀状展」というイベントや、谷町六丁目の「往来」というお店をしています。ごはんをよくたべる。

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小劇場のための感染症対策サインを無料配布します

このコロナ禍の中で公演活動を再開した劇場や施設、舞台を上演する劇団のために、感染症対策サイン=張り紙を作りました。すべて無料でダウンロードしてご使用いただけます。 演劇で食べていくことはしばらくできないかも、と思っていた 僕はグラフィックデザイナーです。演劇やダンスなど、特に小劇場と呼ばれる分野のチラシ・ポスターをデザインする機会が多く、演劇の世界では「宣伝美術」と呼ばれる仕事をしています。厳密に言うと演劇専門のデザイナーではないんですが(音楽、食品、福祉、教育、ファッショ

    • 『そして羽音、ひとつ』チラシで描く醜さと美しさ

      「マジョリティはどうすれば自分のマジョリティ特権に気が付けるか」というテーマで作品を作ります、と演出家の山口茜さんに聞いた時、正直最初はピンとこなかった。マイノリティは少数者(少数派)。それに対して、マジョリティは多数者(多数派)、という意味はわかる。では、ここで指すのは何においての少数者/多数者のことですか? と僕が聞くと「すべてにおいてです」と茜さんは答えた。 環境に違和感を抱いて社会になじめなかった10代から始まり、自分は「みんな」が選ぶ道を選ばない(100%マイノリ

      • 「音楽と演劇の年賀状展」をやめることにした

        「なんで12年でやめようと思ったんですか?」 これまで12年間すべての年賀状を展示する「音楽と演劇の大年賀状展」名古屋会場のひとつ、Cafe&Bar drawingで設営作業しているところをお客さんに声をかけられた。干支を一周してちょうど一区切りついたから、ある程度やりたいことをやりきったから、ぼく個人の生活の変化など、理由はいろいろある。 「12年続けるってすごいですよね。僕も大学院生の頃はいろんなプロジェクトをやってたんですけど、仕事が忙しくなってからはなかなかできな

        • 僕は戦争と暴力のある世界に抵抗する。できるだけおだやかに、楽しいやり方で

          「音楽と演劇の年賀状展」という展覧会を始めたのは2011年1月、大阪・梅田のOZC GALLERYというギャラリーで、一週間だけの展示だった。110人の出展者とやりとりし、たくさんの人の手を借りてできた展覧会。ソワソワしてウキウキして、ふらりと訪れた見知らぬお客さんとギャラリーの真ん中に置いたコタツに入っておしゃべりしたりして。 最終日のクロージングイベントには大好きなバンドと憧れの劇団に来てもらって(三田村管打団?、子供鉅人、坂口修一さん、リュクサンブール公園という今考え

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          『サハリンを忘れない』を忘れない

          「サハリンの写真を撮り続けてる人がいるんです」2019年のこと。後藤悠樹さんという写真家を教えてくれたのは、ニットキャップシアターという劇団の高原さんだった。 「今度の公演、サハリンが舞台の話なんです」 サハリン。 北海道の上にある島。えーと、樺太? それくらいの認識だった。たぶんほとんどの日本人が同じ程度の認識だろうと思う。サハリンで暮らす人々とその歴史を、1900年代初頭から約100年にわたるクロニクルで描く物語、それを上演するという。 そんな作品『チェーホフも鳥の名

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          音楽と演劇の年賀状展11、はじまります

          「音楽と演劇の年賀状展」という展覧会をやっています。 音楽家や俳優など、音楽と演劇にたずさわる方々から届いた年賀状を展示する企画で、最初に始めたのが2011年のこと。 それから10年、毎年お正月に開催しています。 誰も見たことがない表現、最前線のトレンド、社会に強く訴えかけるメッセージ、そんなものがここにあるかどうかはわかりません。 でも確実に言えることは、今年も来年も再来年も「あけましておめでとう、今年もよろしくね」と言える世界であってほしいし、こんなのんきな展覧会が催さ

          音楽と演劇の年賀状展11、はじまります

          あたらしい音楽と出会う場所

          あたらしい音楽とかバンドとか、どうやって出会ってきただろう。同じ趣味の友達なんてひとりもいなかった10代の頃の情報源はラジオだった。音楽の趣味の近い知人友人ができた20代からは、人から教えてもらうことがぐんと増えた。 T.V.NOT JANUARYはそんなバンドのうちのひとつで、初めて聴いた時は衝撃だった。メンバー全員横並びで、全員アコースティックギターを弾いて、全員歌う。歌うというか、合唱というか。そんなバンド見たことない。日々うじうじしながら生きて、あっけなく死んで、日

          あたらしい音楽と出会う場所

          1Kの宇宙

          山口君、展覧会しない? と、俳優の赤星マサノリさんに誘われて、グループ展に参加した。 自分が企画している展覧会で「音楽と演劇の年賀状展」という、いろんな音楽家や俳優さんから届いた年賀状を展示するという企画がある。年賀状展を始めたのは、自分には作りたいもの、表現したいもの、伝えたいこと、みたいなのは特になくて、自分が前に出るんじゃなく、自分の好きな人と一緒に何か作りたいなと思ったのが最初の動機だった。 それは今も変わらなくて、自分にはやりたいことってあんまりない。やりたいこと

          はたらくすべてのお父さんとお母さんに

          谷町六丁目に往来というお店がある。 コワーキングスペースと言って、2時間から借りれる気軽なシェアオフィスなんだけど、電源とWiFiがあるだけの8畳和室だから、設備はしょぼしょぼだけど、畳でゴロンとできるという点で、世界でいちばんくつろげるコワーキングスペースだと思っている。 僕はそこのスタッフをもう6年ぐらいやっていて、毎週火曜に店番をしている。 「4ヶ月のこどもと一緒なんですが、大丈夫でしょうか」という電話があった。やってきたのは赤ちゃん連れの女性。 職場復帰に向けて準備

          はたらくすべてのお父さんとお母さんに

          公園をつくる

          僕にとって2年目のストレンジシードが終わった。終わってしまった。静岡市のまちなかでダンスや演劇、パフォーマンスが繰り広げられる4日間。僕が担当しているデザイン業務はもちろん、当日の運営は毎回しぬほどたいへんなんだけど(一応アートディレクターという大層な肩書きがあるんだけど、事前の印刷物やウェブサイトのデザインだけでなく、現地の看板や張り紙・装飾の設営、広報活動の統括、公式アナウンスのテキストチェックや本番のツイッター中継まで、ってあれ?アートディレクターってこういう仕事?とい

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          プラハの夜

          ヨーロッパに行ってきた。フィンランド、チェコ、ドイツ、オーストリア、ハンガリーをめぐる17日。ひとりで旅行はちょこちょこしてるけど、現地に知り合いのいないまったく初めての国に行くのは6年前のアイルランド以来だった。 チェコ・プラハでの話。人形劇を見た帰りに入った店でビールを飲んでると、常連らしきおじさんがよろよろと店に入ってきて「ここいいか?」と僕の前に座った。正確には、チェコ語でそれっぽい雰囲気で話しかけられただけなので、実際にはなんと言っていたのかはわからない。ごきげん

          プラハの夜

          一枚の演劇

          「演劇のチラシのデザインって特殊やから自分ではようできへんわ〜」とデザイナーの友人に言われたことがあって、それは例えば、まだ完成していない商品(公演)のビジュアルをつくる難しさだそうで、なるほど、確かにそうかもしれない(あとやたらタイトルのタイポグラフィにこだわるデザインが多いのも)。 乱暴なたとえだけど、スーパーのチラシは商品写真を載せれば伝わるし、映画のチラシは映画の中の1シーンを抜き出せばこんな映画ですよーと伝えることができる(あくまで乱暴なたとえです)。 演劇のチ

          一枚の演劇