【天使のたまご】何となくモチーフ読解?【考察】

 作中に登場するキーワードやモチーフを自分なりに解釈したものを並べてみました。あくまでも個人的な解釈ですので、不正確なものや矛盾するものもあると思いますがご容赦ください。

羊水。「胎児」である少女は主にこれを飲み、またそこにおしっこをする。「夢」の世界(=少女にとっての「子宮」または「羊膜」)の中に満たされており、彼女を「外界の干渉」から守るもの。少年は「少女の夢」の世界(=『子宮」)の住人ではないので、これを飲まない。
ラストの洪水は「破水」すなわち「夢の世界=子宮」から少女が出ていく(目覚めて独立した一個人となる)ことの象徴か。

子宮、または羊膜。中に「水(=羊水)」を満たし、少女を「外界」と隔絶して守るもの。故に少女は「水(=羊水)」を満たした「瓶(=子宮)」から周りを見、「水(=羊水)」を満たした「瓶(=子宮)」を自分のねぐらである「方舟」に並べて自分を守ろうとする。

ワイン

(経)血、転じて「性的に成熟した女性」の象徴。自身の性的成熟を望まない少女にとっては不要なもの。

ジャム

臍帯血?「胎児」である少女にとっては直接の栄養源。

方舟

未来への希望、種の存続の願い。しかし化石だらけである(=乗せてきたであろう動物が死滅している)ことから、未来に対する絶望・拒絶・無関心の象徴となっている。
その最奥で無数の「瓶(=子宮)」の「水(=羊水)」に守られて寝起きする少女は、パンドラの箱と化した方舟に残された最後の希望ということか。

「瓶(=子宮)」「水(=羊水)」「ジャム(=臍帯血)」「ワイン(=経血)」があり、少女の生命を支える場所。しかし「漁師(=男性の性欲)」によって度々破壊される存在でもあることから、少女を養う「母」または「年長の女性(たち)」の象徴か。

富・幸・生命力の象徴、転じて「欲を煽るもの」
しかし実物はこの「(夢の)世界」には存在せず、捕まえることもできず「幸・生命力」をもたらすこともない。

漁師

「魚」を求めてその影に向かって銛を投げ、「街」を破壊する、コミュニケーションのできない存在。「欲」に突き動かされる「男性(の暴力性、性欲)」の象徴か。

処女膜。これが割られることは「破瓜」を意味するか。
作中に登場する「窓」の中の部屋は、その多くが女性のものらしい調度となっていること、少女が見上げるアングルによくなることから、少女から見た「年長の女性」の象徴でもあるのか。

戦車

「街(=少女を養う年長の女性たち?)」に砲身を向けて進み、いつでも「街」を壊そうとしているように見える存在。漁師同様「男性(の暴力性・性欲)」の象徴か。

少年

少女と同じく人間の姿であり、「漁師」とは異なりコミュニケーションの取れる存在。「男(異性)」という概念ではなく、対話できる個性・精神性を持った他者

「外界(=神)」からの干渉、「目覚めよ」と呼ぶ声か。

鳥(天使)

「神」の伝令。化石となっていることから、「神の意志(与えられた使命・運命)に対する少女の拒絶を表すか。
この場合の「神の意志(与えられた使命)」とは「他者(異性)と交わって世界を再生すること」であり、これを拒絶するのは「人間の世界の再生=他者との交流がある世界」への消極的な否定ということになるか。

「少女の夢の世界=子宮」の出口、すなわち産道。少年を追いかけてこれを越えようとしたということは、少女は「何も考えないし傷つかない(胎児の)自分」であることよりも、「少年(他者)と交わる喜び」を選んだということであり、「他者との交流のある世界(=新しい物語)」を生み出す決意につながるか。

可能性・未来の象徴

少女の持つ「卵」

自分が生んだわけではないが「鳥(=天使=神の使い=少女自身が一度は拒んだもの)」が宿っていると少女が信じて常に持ち歩くもの。求められる使命の放棄・外界への無関心。中身はおそらく「成熟した(新たな「世界」を生み出す)少女自身」。
少女本人にとっては「他人に壊されては困る」が「孵化されても困る」存在でもあるので常に持ち歩いているのではないか。
少年は「中身」が「少女自身」であることを察してはいるが、中身を少女自身の口から聞き、「鳥」の死亡(=少女が「神の伝令」を拒絶したこと)が確定するまでは手を出さない。少女が「卵と少女と少年の未来」について口にしたことで、少女の精神が「夢から覚めるのに十分なだけの希望を持っている」ことを確信するも、それを壊して(破瓜を迎えさせて「新しい物語」を孕ませることで)少女を目覚めさせることには最後まで葛藤していたか。

少女の産んだ「卵」

「新しい物語(人間同士が交わる世界)」の象徴。他者(=少年)と交わることで孕み、生まれたもの。膣からではなく口からの呼気として発生したということは、生物としてではなく「言葉を中心としたコミュニケーション(理性や知性の交流)」で発生する「物語」の世界の始まりか。
本能(「神」が与えた「産めよ増やせよ地に満ちよ」という使命)に殉じる肉体の交わりによって続く世界ではなく、各人が己の意思によって他者と精神的に交わって生み出す「物語」のための「世界」を生んだ?

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