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おひとりさま

editor's note
ぽん多本家

今回取材でいろいろなお店に伺いましたが
多かったのがover50の女性同士のお客様。
同世代の男性同士は安価な昼呑みできる店
(ホッピーが呑めるような)には多いが、
きちんとした食事をするようなお店で見かける
ことはありませんでした。
そんな中、
上野広小路の『ぽん多本家』のカウンターで
見かけた先輩(多分年齢的に)は素晴らしく
スマートに、しかも男らしく食事をされていたので
noteとして記録します。

桜も散りかけた4月の平日、11時半頃。
既に先輩はひとりカウンターで
「ビール小瓶」をやっつけて
「赤ワインのハーフボトル」
に転進されておりました。
食事は、当店名物「カツレツ」ではなく
「ポークソテー」。カツレツと同じロース肉
の芯をじっくりと焼き上げ、甘辛の醤油ベース
のソースが周囲にも食欲をかきたてる逸品。
お肉の旨みをかみしめるように、ゆっくりと
静かに咀嚼し赤ワインで飲み下す仕草が
なんとも「美味しそう」。

そして、残り2切れになったところで
「ご飯と赤だし」を追加注文。
白飯とお肉をじっくりと味わった後、
カウンター越しのご主人に一言
「このソース、ご飯にかけていただいてもいいですか」
と小さな声で伺うと「もちろんでございます」とご主人。
65歳過ぎ(多分)の紳士が、うれしそうに肉汁
たっぷりのソースを白飯にかけて食べる様子は
まるで子供のようでありました。
全てを平らげ、きれいに整えられた口ひげの
周りをナプキンでふき取った先輩は、バーバリーの
スプリングコートを手に持ち、
ご主人に「ごちそうさまでした」ときちんと一礼。
隣に座る私も幸せになるような一幕でした。
おひとりさまでも「じっくり」「ゆっくり」
美味しい食事ができる幸せ。
私たちも是非愉しみましょう。

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