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勢いの良い話

大学4年の冬

「勤務地については、2月下旬から3月上旬にかけて、順次電話でお伝えし、そのあと面接を行い、最終決定します。」
と通達され、遊びに行けないね〜と言っていた同期を横目に私は1週間ロンドンに行った。

勤務地の電話や面接より
4年間一緒に働いたアルバイト達との旅行をとった。

今はそんなことできないなと思ってしまう。

それは先のことを考えられる大人になったと言うべきか、それとも、先のことばかり考えて今を楽しんでいない大人になったと言うべきか、よくは分からない。

大学4年の冬に、大して迷わずロンドンをとった、そんな勢いの良さは一体どこにいってしまったのだろうか。

          *

ロンドン旅行は最高だった。
主な観光地はほとんど行った。大英博物館に、バッキンガム宮殿、ウェストミンスター寺院、ビッグベン、ロンドンアイにタワーブリッジ、ワーナーブラザーズにも行けた。本初子午線を股にかけ、アフタヌーンティーを嗜み、二階建てのバスにも乗った。
めちゃくちゃベタだけど、めちゃくちゃ笑った。

          *

またあの頃の勢いの良さを取り戻したい。
不安定に生きることが楽しかった頃の気持ちを取り戻したい。

でも、ロンドンでめちゃくちゃ笑った私はもういない。あの頃の気持ちには戻れない。

ただ、ロンドンに行けなくなってしまったこの時代に、ロンドンめちゃくちゃ楽しかったよねって画面越しで笑い合える友達がいる。それもこれも、大して迷わず決断したあの頃の私のおかげである。

取り戻せないものもたくさんあるけれど、
今あるものをちゃんと大切にしていきたいな。
と、あの頃より少しだけ大人になったわたしは思う。


          *


ちなみにロンドンから帰国後、
私は1画面には収まりきれない着信履歴を見て深夜の成田空港で震えていた。

だけど明日は土日なので、平日必ずかけ直します。と心に誓い、ビッグベンの余韻に浸りながら爆睡したのであった。

アゲハ蝶が持つ意味やらメッセージやらを調べたらいっぱいありすぎて驚きました。とにかく縁起がいいらしいです。勢いも良いらしいです。だから、勢いの良い話です。

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