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【寄稿小説】はかせの媚薬【優しくする、】

ワンアワーライティングとは?


SM文芸部Twitter企画として行った「ワンアワーライティング」。 Twitterのスペース機能を用いて、1時間みんなでわいわいしゃべりながらのオンライン合同執筆会でした。 SM文芸部にとっても初めての試みで、とっても楽しい経験でした。 今回はテーマとして『優しくする、』というセリフを入れた3000文字以上の小説を合同執筆しました。
今回ご紹介するのはそんな寄稿作のひとつです。

はかせの媚薬


 媚薬が完成した。いやぁ、この色にするのが大変だった。
 惚れ惚れと白衣にかざすと淡いピンクが輝く。とろりとしたオイル風の媚薬は、スポイトで一滴垂らすだけで莫大な効果をもたらす。
 さてと、作製の行程は書き留めたし、この汚いメモはそこにいる事務の得意な同僚に書き起こしを任せよう。
 そう思って立ち上がり、メモをサッと持った瞬間、膝にびちゃっ、と液体をこぼした感覚と、もわん、と甘ったるい香りが立ち昇り。

 あ。終わった。

 ぞわり、と背筋にくすぐったい電流が走る。白衣の膝のあたりがピンクに濡れている。
 柔らかなブラシでなぞられるような震え。膝ががくがくとして、体温が急上昇していく。
 視界の端っこが黒く霞んで、へたり込むと、緩んだ骨盤底筋をぬって、じわあと温かい尿が漏れた。
「ぁ、あ、あぁ……!」
 どうしようもなく声が漏れる。
「博士……?どうした?」
「、あ」
 振り向いた同僚が驚きを隠せない顔をしている。
 その目には、上気した顔、ずり落ちた瓶底眼鏡、涙目、乱れた呼吸でへたり込み、乙女座りでおもらしをする私の姿が見えていることだろう。
「み、みるな。ぐっ」
 恥じらいが、尾てい骨の奥を甘く嬲って、絶頂の波が立つのを噛み殺す。
「だ、大丈夫か?何があったんだ」
 ぶれる指先で、床に落ちた汚い走り書きを指差す。尿に濡れてしまった紙は、媚薬の作り方の走り書きで。
「つく、りかた、みて。んは、解毒剤つく、つくってくりぇ」
「お、おう」
 こまごまと指示を出すが、言葉の隙間隙間で甘ったるい息が漏れる。

「……できたぞ」
 渡された粉を一気に飲み干して、一息ついたが、熱がひかない。
「この薬、持続性長くないか」
「な、な、ながい……だから、これから、3時間ほど、はずしてくりぇ」
 ろれつが回らない私を物言いたげな目が覗き込んでいた。
「……なにがいいたい、いってみろ」
 キッ、と睨んだ。
 同僚は、きまり悪そうに、頭をかいて腕を組んで唸ったあと、不良みたいにしゃがんで私に目線を合わせた。
「今、俺は正直おさまりがつかなくなってる。博士も同じだ。でも俺は、今何かするのは、博士に失礼だし、傷つけることになると思ってる」
 話しながら、目が葛藤で揺れている。油膜の虹色がぐらぐらとマーブルに動くように、目の色が暗く淀んだり、理性を取り戻したりを繰り返す。
 あぁ、こんな、研究に没頭して、髪もぐしゃぐしゃで、漏らしてしゃがみ込む、どうしようもない私にさえ、こいつは欲情するのか。
 しかも、クソ真面目に、傷つけると悩んで、言われた通りに席を外そうとしている。
 胸の奥が甘く痛んだあと、焦げ付くように子宮の奥が熱くなった。

 あぁ、私は、欲情しているらしい。

「……きみって、この、研究所に勤めてるのに、ばかだよな」
「は!?」
 襟首を掴んで、耳を引き寄せる。
「部屋のかぎ、しめろ」
 耳を柔らかく食んだ。
 豆鉄砲を食らった顔が強い欲情に塗り替わっていく。
 ぎゅ、と少しきしむほど抱きしめられて、
「優しくする、待ってろ」
と囁かれた。

 鍵を締め、ロッカーから何かを取ってきて、戻ってきた同僚は、その手の無骨さに似合わない丁寧さで私の服をすべて脱がし、自分の服も下着以外は脱いだ。
 骨の浮いた白い肌に、浅黒く温かい指が這う。
 肩、胸の丸み、薄く浮く肋骨。私の輪郭を確かめていく。
 都度あがる押し殺した小さな声は、濡れそぼった脚の間に触れられて大きく跳ねた。
「は、はやく……」
 いやいや、と幼子のように首を左右に振っても、太くて大きな指は焦らすように周りに触れる。
「おい、じゅうぶんだろ!?」
と声を上げると、
「優しくするって言ったろ」
苦笑いしながら、指をつぷり、と沈められた。
「あぁっ……!」
それだけで声が漏れる。
「物足りなそうな顔だな?」
面白そうに覗き込まれて、
「あたりまえだろ、はやくしろ」
「口だけは悪いよなぁ、こんな締め付けてんのに」
ニヤニヤと指を二本に増やされて、奥の気持ちいいところをゆっくり指圧される。
 応えるように、裏返った声を上げながら、キュンキュン指を締め付けて
「あ"っ、それ、だめ……」
私はあっけなく達した。

「もういいか」
独り言のようにつぶやくと、同僚は下着をおろした。
「あ……」
呆然とするほど、硬く大きくなったそれが、獰猛によだれをたらしている。
 惹きつけられて、唇を寄せると
「おい、汚いからやめろ」
「におい、こゆい」
「おい」
 眉根を寄せながら、垂れているカウパーを舐め取る。
 ひくり、と同僚の腰が動いた。悪くないようだ。
 先っぽを溶かすように丁寧に舐めたあと、熱い口の中に柔らかくふくみ舌で遊ぶ。匂いと味が広がって、頭がふわふわする。
「すまねえが、焦れったい」
にゅるり、と口から抜かれてしまい、恨みがましい目で見ると
「そんなに美味しかったのか?」
 笑われて、カッと顔が熱くなった。

 ゆっくりと組み敷かれ、
「そろそろ我慢出来ないんじゃないか」
 入り口に勃起を添えて煽られた。いつの間にかゴムをつけている。
 睨んだけれど、どろどろのソコが私のかわりにキュンキュンと締め付けて返事をしてしまい、目をそらした。
「くくく、体のほうが素直だな。………いくぞ」
 ゆっくりと入ってきた、その重量にうめき声を上げた。
 入れてすぐ動こうとされたので、
「ばか、うごくな、もうすこし待っ、うっ、おおきいって!じかく!しろ!」
「そうか?ごめん」
 待つ間、くっついてハグをしてくれた。

 もういい、と頷くと
「いいか?動くぞ」ゆっくりと動き出す。中が掻き回される感覚。どうしようもなく声が出る。

 必死に噛み殺そうと唇を引き結んでいたが、
「もっと聞きたい」と太い指が唇を割って歯列を遊んだ。中を突かれるごとに口が緩む。
「ふあっ、やあっ」
 甘ったるい声が漏れて、恥ずかしさで昂ぶって何度も果てた。嬉しそうに笑うので
「優しくするって、いった……」
と責めると、飲み込むように笑ってから
「ごめん」
 頭を撫でられ、おでこにキスが降ってきた。
「そっちも、げんかい、じゃないか……?」
「おっ、ばれたか。いいか?」
うん、と頷かなければよかった。
 奥に擦り付けるように腰遣いが変わった。
「も、や!ああっ」
「嫌なの?やめるか?」
 腰の動きを止めて問われる。
「ばか!ちがう、ちがうから……」
 苦笑いの声と一緒に再び頭が真っ白になった。
「だめ、ばかになる」
「馬鹿になれよ」
 雄の瞳に射抜かれて、快楽の波に飲まれてしまった。
「ふあっ、しょれ、しゅき、しゅき、きもちい、すごい」とろけた口元から気持ちいい叫びがダダ漏れになる。つぶやくような「よかった」がかすかに聞こえた。
 奥を強く擦り上げられながら聞こえた「出すぞ」に、ぎゅっと回す手に力を込めて応える。
 子宮口にゴム越しの熱い射精を感じて、脳の裏に火花が散ってチカチカする快楽に潰された。

○○

 目覚めると、裸に同僚の白衣をかけた状態で横になっていた。
 隣では全裸の同僚がぐーすか寝ている。
 …………やってしまったなという気持ちとは裏腹に、体は物凄くスッキリしたし、肌は妙にさわり心地が良くなった。

 前からどんな目で見られているかはなんとなく分かっていたのに、今回その気持ちに付け入ってしまった。
 ただ、肌の触れ合いが心地よかったことが意外で、あぁ、私も憎からず想っているのかもしれない。

 同僚の一際うるさいイビキが聞こえる。見れば、寝顔はこどもみたいで、私はふき出した。


ライター:その

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