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ジョブホッパーへの道〜甘い誘惑(1)~

エピソード#28 始めての飲食業界への転職


私は社会人大学院でMBAを取得することを決断してからというもの、転職活動にも変化が現れはじめた。おそらく、私のマインドがこの決断により明らかに前向きになったことにより、以前よりも行動力が増してきたことによるものであると思われる。

転職エージェントに対しても、来年度には社会人大学院に進学する旨の意思を伝えたところ、意外にも好意的に受け止められ、ある有名なスイーツ専門店の経理職の求人案件を紹介された。

会社概要
事業内容:菓子の製造販売、飲食店のフランチャイズチェーン運営
設立:1997年
代表取締役社長:ファンドからの出向者(当時)
売上高:約80億円
資本金:11百万円(非上場)
従業員:約230名

このスイーツは2000年頃に爆発的にヒットし、全国各地に販売店が急速に拡大した。そのピーク時には、日テレの月曜の夜更かしでマツコ・デラックスに紹介されていたスイーツである。店舗は全国の駅前、駅ナカに出店している形態のため、お土産としても喜ばれる菓子であった。もちろん、私も何度も食べたことがある。

求人票を見て初めて知ったことは、このスイーツ専門店の親会社が〇〇園という東証一部上場企業であったことである。まったく親会社の販売している商品とはジャンルが違っていたことを不思議に感じた。

そのスイーツ専門店のホームページでは、商品と店舗紹介が中心であり、当該企業の財務状況は非上場企業のため開示されていなかった。そこで根気よく、ホームページやネット検索で過去のニュースリリースを探して行くと、ようやく、数年前に〇〇園が投資ファンドからスイーツ専門店を約94億円で買収したという記事を見つけた。

また、私がこの求人案件に興味を持ったのは、募集要項に「次期経理部長候補」と書かれていたことである。転職エージェントの話によれば、現在の女性の経理部長が来年には定年を迎えるため、その後任者を募集する背景があるとのことだった。

振り返ってみれば、経理職は女性のイメージが強いものの、これまで女性で管理職をしている人は前職では皆無であったため、女性が活躍できる土壌があるという点にも強く関心を持った。

そこで転職エージェントに応募の意思を伝えたところ、あっさり一次書類選考を通過し、すぐに一次面談がセッティングされた。

初対面での女性経理部長は、ふくよかな体に上品なワンピースを身にまとうことで見事に欠点をカバーし、物腰が柔らかく、終始穏やかな雰囲気を漂わせていた。一次面接時点で、私は大学院進学について正直に話したところ、女性経理部長から、むしろ私の向学心を評価するとのお言葉をもらい、その後の話も和やかに進んだのであった。

そこで私は、女性で部長になれるほどの実力のある人から後任者として指導を受けることができることに安心感と大きな魅力を感じた。というのも、この時点で私は部下を持った経験はなく、さらにお手本になるような上司に恵まれてこなかったからだ。

また、スイーツ専門店は海外にもフランチャイズチェーンを拡大させており、今後もグローバルに事業を展開していくとのことで、前職の経験を活かし、さらに成長できるチャンスがあると夢が広がった。

ただ、どうしても求人条件のうち、気がかりな点がふたつほどあった。ひとつめが年間休日が104日と少ないこと、ふたつめが会社に退職金制度がなかったことである。これに対して転職エージェントに問い合わせしたところ、女性経理部長が直々に説明したいのでもう一度面接に来てほしいと連絡がきた。

この連絡を受け、もしかして求人条件にケチをつけたことを怒られるのではないかと、私は内心びくびくしながら女性経理部長との面接に臨んだ。

しかしながら私の意に反して、その面接では女性経理部長が私を見込んで、内々に入社をオファーしたいという意向と飲食業界では年間休日は店舗営業日の関係で少ないのが通例であり、その分有給休暇を消化することで埋め合わせができるということを丁寧に説明してくれた。

また、退職金制度については、今後導入を検討中であること、また部長になれば年収も現職よりも大幅に上がるため、それまで我慢してほしいとのこと。その話を聞いて、私は生涯年収よりも仕事の内容にこだわるほうがよいだろうと考えを改めた。

そして最終的にオファーを受ける決断に至ったのは、女性経理部長が前職のポンコツ課長とは雲泥の差があり、またこの人の下で働けるならば条件面での懸念点をカバーできると思ったからであった。

加えていえば、親会社が東証一部上場企業であればコンプライアンスもしっかりしているだろうとも思えた。

そして、私はスイーツ専門店を全国展開している本部の経理財務部シニアマネージャーのポジション、年収700万円の内定書を受諾したのであった。

しかし、実はこのオファーには隠された重大な目論みがあったことを入社してから知ることになるのだった。。。


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