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本当は怖い「ユーミンの歌」全集

【ユーミンの歌詞世界】


 先日、新海誠監督の新作映画『すずめの戸締まり』を観てきたのですが、途中で流れ始めた「ルージュの伝言」に意表を突かれてしまいました!(軽いネタバレすみません!)
 ジブリの『魔女の宅急便』でも、キキの旅立ちの場面で使われた曲です。

 あのフェードインしてくる軽快なリズムは、旅に出る時なんかのワクワク感にピッタリなんですが…
 歌詞の方は決して希望に満ちたものじゃないですよね。


「ルージュの伝言」1975.2

5thシングル、アルバム『COBALT HOUR』収録

あのひとの ママに会うために
今ひとり 列車に乗ったの

 旦那さん方のお義母さんに彼の浮気を報告に行くって歌なんですが、そっちか、そっちなのか~って思いませんでした?
 男目線で考えると、一番、堪えそうなとこを突いてるんです!(いや、原因は男の方って分かってる..  分かってるんですけどね… 冷汗)

 なんか、楽しそうに歌えば歌うほど、ちょっと怖いという…


 明るい曲調なのに、こういう”ドロッ”とした内容の歌詞を合わせるのがユーミンらしいですよね。

 ユーミンの歌って、生々しくてちょっと怖く感じちゃう歌があるって話をよく聞きます。
 今回は、そんな曲について "note" していこうと思います。
 ただ、基本、男目線(しかも私個人の…)で怖く感じる曲のセレクトなんで、その点はご了承ください!


+  +  +  +  +  +


「真珠のピアス」1982.6

 アルバム『PEARL PIERCE』収録

Broken heart 最後のジェラシー
そっとベッドの下に片方捨てた
Ah..真珠のピアス

 イントロのカッティングギターが印象的な曲なんですが、歌詞では、お別れすることになった彼氏の部屋のベッドの下に、ピアスを片方だけ忍ばせておくって内容です。

 「ルージュの伝言」と同じく ”仕返し系” の歌だと思います。
 ただ、怖いといっても冷汗をかくぐらいかな,,, ささやかな復讐ですよね。


 基本、 ”仕返し系” は耐えられそうなんですが、私がほんとに ”怖さ” を感じるのは、強すぎる思いを歌っているやつなんです。
 好きでいてくれるのは嬉しいんだけど、その思いが強すぎると毒になることもあるんです…. 

※ ちなみに、この後、紹介する曲は、50周年記念ベストアルバム『ユーミン万歳!』には未収録の曲ばかりです。


■ 強すぎる思いの歌


「まちぶせ」1976.6

 三木聖子さんへの提供曲(1996年にセルフカバー)

あの娘がふられたと 噂にきいたけど
わたしは自分から 云いよったりしない
別の人がくれた ラヴ・レター見せたり
偶然をよそおい 帰り道で待つわ

好きだったのよあなた 胸の奥でずっと
もうすぐわたしきっと あなたをふりむかせる

 やはり、”強すぎる思い” というと、まずは「まちぶせ」ですね。タイトルからして ”狙った獲物は逃さない!” って感じで、行動も冷静で戦略的なところが怖い… いや、スゴイですよね。
 もともと三木聖子さんへの提供曲で、1981年に石川ひとみさんがカバー、さらに1996年にはユーミン自らセルフカバーした曲です。(ユーミンが歌うと、ほんと狩猟者ハンターっぽくなるんですよね 笑)


「12階のこいびと」1978.11

アルバム『流線形'80』収録、16thシングル『星のルージュリアン』B面

軽い寝息が ひとりぼっちにさせる
こんど逢う日も決めもしないうちに

 メジャー調の淡々としたメロディの曲なんですが、描かれてるのは、どうも秘密の恋をしてる女性のようです。
 男性の方は、次にいつ会えるかって話をしないうちに寝ちゃったりしてる場面です。

Mon amour
もしあなたが目の前から消えてしまったら
ここは12階 窓を開けて舗道をめがけ
紙のように舞うわ

 この彼女は「次、いつ会えるの?」なんて、自分からはきかない女性なんですよね、きっと…
 でも、だからといって、完全に割り切ってるわけじゃないんです。
 そんな女性には、怖いほどの覚悟があることを知らず、男性は寝息をたてているわけなのです。


「白日夢・DAY DREAM」1980.5

 15thシングル

一年迷って会いに来た町で
あなたの友達 口をつぐんだ
すさんで求めただけと言ってよ
恋人は私に似てるはず

 あまり知られていないシングル曲のひとつです。
 ここで描かれているのは、以前、彼を置いていった女性のようです。
 ただ、何かを信じて1年ぶりに会いに来たのですが、彼の友だちの様子から、どうやら彼の方には新しい彼女がいることを察するんですよね。
 愛は必ずしも永遠ではないという曲ですが、察した後の「恋人は私に似てるはず」ってとこが、強がりであっても迫力あり過ぎなんです。 


「夕闇をひとり」1981.11

 アルバム『昨晩お会いしましょう』収録、18thシングル

あのひとのうわさが聞ける街なら
私は流れてゆくわ

 大好きな曲のひとつなんですが、歌詞は、ちょっと怖いです。
 冒頭、街に流れてくるってのも、アレなんですが、その後、繰り返されるAメロ部分の歌詞は、そうとう怖いです。

あのひとを愛してくれる女なら
私はたずねてゆくわ
さくらんぼの包みと できるだけの笑顔と
最後の連絡先もって

 え、彼女の方に訪ねていくの!
 その”最後の連絡先”って何のため? どう使ってほしいの?
 ってなりますよね….


「忘れないでね」1982.6

 アルバム『PEARL PIERCE』収録

横に眠るひとがいるのも知っていて
でもあなたを好きになった
せめて夢の中にしのんでゆきたいわ
もう星影も薄れゆく時刻

ルルル ルルル ルルル
と三回鳴らして切ったら
それはそれは
淋しい私から"I want you"
忘れないでね baby baby

 可愛い曲調とは裏腹に、彼女の行動は切実です。
 決まった相手のいる男性と恋してる女性のようなんですが、別の女性がそこにいるのを知っていながら、夜更けに電話をかけようとする歌なんです。
 ”もしかすると誤解されるかも” という事は、当然、折り込み済みの行動なのです。


「DANG DANG」1982.6

 アルバム『PEARL PIERCE』収録

Dang,dangとdang,dang,da-dangと
弾丸をぶち込んで
疲れたハートに

彼女は知らないなら
友達になるわ
それしかあなたに会う
チャンスはないもの 今は

 「真珠のピアス」、「忘れないでね」に続いて、アルバム『PEARL PIERCE』からは3曲目のセレクトですね。 笑
 この「DANG DANG」はストレートな失恋ソングなんです。
 彼から振られて派手に砕け散っちゃえ!って感じなんですが、2番の歌詞にちょっと怖い部分があります。
 振った相手が、その後、自分の好きな人の友達になってきたら… ど、どうします? いや、ど、どうしよう…



■ なんか怖さを感じる歌

 強すぎる思いの歌とはタイプが異なるんですが、よく考えると、ちょっと怖い歌を2曲

「CHINESE SOUP」1975.6

 アルバム『COBALT HOUR』収録

莢が私の心なら
豆はわかれたおとこたち
みんなこぼれて鍋の底
煮込んでしまえば形もなくなる
もうすぐ出来上がり
あなたのために Chinese soup
今夜のスープは Chinese soup

 アメリカ民謡調で可愛い歌なんですよね。
 夕食の準備をしてる時みたいなんですが、そこにサラッと、あくまでサラッと、こんな歌詞を入れてくるユーミンはやっぱすごいんです。
 「女性は上書き保存」なんて言われることがありますが、きれいに消しちゃうっていうよりも、煮込んじゃって形がなくなるって方がリアルなんじゃないですかね?(←誰に言ってる?)
 今彼が何も知らずスープを飲んでるとこを "見てる" 彼女を想像すると… やっぱり怖いかもです!


「白い服、白い靴」1986.11

 アルバム『ALARM à la mode』収録

目覚めて外を見たらひどい雨降り
何も云えずに服をたたんだ
予定ができたと電話を切った
雨降り 雨降り hu hu

 今回まとめている中では、もっとも新しい(といっても1986年の)曲です。(実は80年代は、怖いと感じる歌は減っていくんです。)
 ただ、この曲はちょっとだけ怖い!
 タイトルは、デートの時にこの女性が準備してた服装から由来してます。でも、この女性、すでに決まった人がいるのに、久しぶりに会った男性と盛り上がって、こっそりデートすることにするんです。
 前日まで、トキメキながら着ていく服装を選んだりしてたのに、当日、雨降りだったんで、す~っとドタキャンしちゃうって歌なんです。
 マツコさんの番組でも解釈が盛り上がってた曲なんですが、私としては、その気にさせておきながら(ただし、その時の気持ちに嘘はない..)、天気のような気分の変わり方に怖さを感じるのです。  



■ 死の匂いが濃厚な歌

 デビュー期の名曲「ひこうき雲」なんかもそうなんですが、70年代の松任谷(荒井)由実さんの曲には、時々、死の影(または生命の翳り)を感じさせるものがあります。
 その中でもストレートに ”死” をモチーフにしたものを2曲を紹介します。


「ツバメのように」1979.7

 アルバム『OLIVE』収録

高いビルの上からは 街中が
みんな みんな みんな
ばからしかったの
ああ 束の間 彼女はツバメになった In Rainy Sky
なんて肌寒い午後でしょう

 高いビルから投身した女性の歌なんですが、全体的に、なんかルポルタージュみたいな歌詞なんですよね。
 死を見つめるユーミンの歌詞は冷静にシリアスなのです。
 アルバム『OLIVE』は、「最後の春休み」や「青いエアメイル」が収録されている穏やかなイメージのアルバムだったので、「ツバメのように」が流れてくる時は、ちょっとドキリとするんですよね…


「コンパートメント」1980.6

 アルバム『時のないホテル』収録

白い眠りぐすり 冷たい水と喉に溶ければ
つややかな馬にまたがり テムズを渡る夢
やがて私は着く 全てが見える明るい場所へ
けれどどこは朝ではなく 白夜の荒野です

 もう一曲が、ユーミンで最も長い曲と言われる「コンパートメント」です。
 ほんとストレートに死に向かう曲で、終始、歌声が冷え冷えとしていて、かなり重たい感じです。
 7分以上ある曲なんですが、途中、人のざわめきが挿入されてる部分があって、夜、聴いてる時にすごく怖くなったのを憶えています。
 歌詞の最後には死の世界が描かれてるのですが、たどり着いたのが「白夜の荒野」ってのがまた怖いのです。


 この「コンパートメント」が収録されているアルバム『時のないホテル』は、ユーミンのアルバムとしては重いテーマの曲が多く、特にトーンの暗いアルバムとして知られています。
 余談ですが、ユーミンのこのアルバムとほぼ同時期に、中島みゆきさんは、あの真っ暗けのアルバム「生きていてもいいですか」をリリースしてるんです。(シンクロする何かがあったんでしょうね。)

 アルバムのB面4曲目に配されてたのが「コンパートメント」なんですが、その後の最後5曲目に配されてるのが「水の影」です。


「水の影」1978.6

 シモンズへの提供曲、1980年にセルフカバー

たとえ異国の白い街でも
風がのどかなとなり町でも
私はたぶん同じ旅人
遠いイマージュ水面におとす

時は川 きのうは岸辺
人はみなゴンドラに乗り
いつか離れて
想い出に手をふるの

 「水の影」自体は、けっして怖い曲ではないんですが、アルバムで「コンパートメント」の後に聴くと、なんかイメージが変わるんです。
 「コンパートメント」の最後の ”白夜の荒野” と、「水の影」の冒頭の、”異国の白い街” が響き合う感じで、「水の影」で描かれる情景がそっちの世界にしか思えなかったりするんですよね。
 … もしかすると意図的な配置なのかもしれません。


+  +  +  +  +  +


 ということで、ユーミンの ”怖い” と言われてる曲や 、私が ”怖さ” を感じる13曲を紹介しました。
 一応、プレイリストにまとめてみましたのでご活用ください。


 多分に男目線なんですが、ユーミンの場合、それも確信犯のような気もするんですよね。
 一方的な見方なんで、ご意見、また、他にもこんな怖い曲があるという情報をお待ちしてます!




(ユーミン関係note)

(怖い歌note)


(アーティストの歌詞世界 "note" )