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共通テストの長いリード文について思うこと(1)【読解力は、読み手の問題としてよいのか】

今回は、読解力とは何かについて、思うことがあり、書いてみます。

その前に、ここで化学(糖類)ついてレクチャーをさせてください。今日の本題にかかわりのあることですので、少しお付き合いいただけるとありがたいです。

理系の高校3年生の化学で高分子化合物として糖類を学びます。
以下、糖類について説明をします。

糖類には、単糖類、二糖類、多糖類があります。
単糖類の代表例はグルコース(ブドウ糖)で、これにはα型とβ型、そしてアルデヒド型があります。
単糖類が二つ結びついたものを二糖類といい、単糖類がたくさん結びつくと多糖類となります。
αグルコースがたくさん結びついた多糖類のひとつをデンプンといいます。
また、βグルコースがたくさん結びついた多糖類の場合がセルロースです。
デンプンは、アミラーゼという酵素で分解され、マルトース(麦芽糖)という二糖類になります。
また、セルロースは、セルラーゼという酵素によって、セロビオースという二糖類に分解されます。

以上です。

今回は、新井紀子さんの『AI vs教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)の中の↓の部分について書いてみたいと思います。

『AI vs教科書が読めない子どもたち』P204

この問題、某新聞社の論説委員や経済産業省の官僚が間違えた問題として紹介されています。誤答として、③のグルコースが多かったと紹介されています。



正解は①デンプンです。

問題は読み手なのか?

このリード文(アミラーゼという酵素~セルロースは分解できない)、塾講師の目線では、かなりの悪文です。なぜかというと、何を訴えるのかの焦点がハッキリしないからです。
アミラーゼという酵素の役割を主張したいのであれば、デンプンを分解することに集中すべきです。セルロースとの比較は無意味で、混乱するだけでしょう。
また、混乱する要素として、「同じ」と「違う」という対立概念が入っています。対比に慣れているが、糖類の知識のバックグラウンドの乏しい(と思われる)新聞社の論説委員や経産省の官僚が間違うのはある程度理解できる部分があります。

これは読み手の読解力の問題なのでしょうか?

知らない単語の読解はできない

恐らく、冒頭のレクチャーを読んでいただいた方は正解されたのではと思います。正解できた理由は、単語の知識(すでにお持ちであった場合も含めて)があったからだと思います。
グルコースは、単糖類であり、デンプンとセルロースは多糖類、アミラーゼ、セルラーゼは酵素という分類ができていると思われるからです。

リード文では、アミラーゼが酵素である以外の単語の分類に関する情報は提示されていません。また、単語としてグルコースとかセルロース、デンプンは聞いたことがあっても、分類という踏み込んだ知識がなく、かつリード文から判断できない場合は、「同じ」と「違う」に引きずられる可能性は十分にあります。

新井先生は、これを読解力の問題とされておられますが、必ずしもそうだとは言えないと思います。

読解力は、共通テストの根幹だからこそ・・・

私は、この読解力の問題について、新井先生が主張されておられるように、問題があるものだという前提で考えていました。共通テストが長い文章を読ませて、考えさせることは、AI時代に求められる能力であり、これは学校教育で高めることができる学力であると考えてきたからです。

この方向性については、納得感のあるところで、それについては、↓で書いています。

ただ、それは文章が読み手の問題と帰着できるだけの精度があることは、前提中の前提です。
私は、先の糖類のリード文のような悪文は想定していませんでした。

このような文章をもってしても、読解力の問題は、読み手の問題なのでしょうか?

このことについて、数回に分けて考えてみたいと思います。というのも、共通テストの根幹にかかわる問題だと思うからです。不定期更新となるかと思いますが、じっくりと自分なりに考えをまとめていければと思います。



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