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テレビ朝日系ドラマ『ザ・トラベルナース』は、社会にインパクトを与えられるか?

テレビ朝日系列の木曜日21:00からの新ドラマ『ザ・トラベルナース』の初回を観ています。

「私、失敗しないので。」で、お馴染みの『ドクターX ~外科医・大門未知子~』を手掛けた中園ミホさんのオリジナル脚本です。

この作品、設定が面白いです。男性二人の看護師が主人公なのですが、岡田将生さんが演じる那須田歩は、一定の範囲内で自ら判断して医療行為を行うNurse Practitioner(ナース・プラクティショナー)(NP)としてアメリカで働いていたという設定です。

この設定に私は注目しています。というのも、これが医療現場での役割について固定概念を覆すかもしれないなと感じるからです。

日本でもすでに制度化

ドラマを通じて初めて存在を知ったNurse Practitioner(ナース・プラクティショナー)ですが、調べてみると日本では診療看護師というそうです。現行の制度の枠内という条件付きながらも存在しているようです。

ただ、看護師の団体、日本看護協会は、看護師の地位向上の一つとして、このNPをアメリカ並みの権限拡充を求めているようです。

日本看護協会は、看護の基盤をもちながら、一定レベルの診断や治療などを行う、米国等のような「ナース・プラクティショナー」の資格を、日本においても新たに創設し、急増する医療ニーズに応えていくことが必要だと考えています。

現実の対応を考えると、看護師の権限拡大は、メリットはあってもデメリットは少ないのではと感じます。このような視点から俯瞰すると、日本の医療行為は医師への権限が集中しているなと感じます。

処方権を持つアメリカの薬剤師

さらに別の視点でも医師への権限の集中がみられます。それが薬の処方です。アメリカの薬剤師さんには、処方権があるのだそうです。

日本のような国民皆保険制度がなかったアメリカでは、薬剤師さんが医療従事者とのファーストコンタクトとなる場合が一般的なのだとか。その観点では役割としては重要で、場合によっては医師よりも重要な役割を担っているともいえるのでしょう。

医師への権限集中は、結果として医療現場の階級的構造を誘発・固定化し、それが一部には機能不全を起こしていることは考えられそうです。

変化のない日本の医療体制に議論を起こせるか

日々医療現場で献身的にお仕事に従事されておられる医師の方々にいささかの疑念はないものの、生産性、効率性という点で、医師に権限が偏重しているのではというのは、見方として成立するのかもしれません。

医療費の問題が社会問題化する中で、病院経営者層が突出した高額所得者となるケースは、制度の歪が出ているという指摘として、考慮に値するのではと思います。得た富のすべてが市場経済の中から自助努力で得たとは言えず、制度の恩恵という側面は存在します。

そのため、制度の固定化は、結果として医師の既得権益としての側面を持ってしまっているのかなと感じます。

塾講師として、過熱状態と化した医学部入学競争は、正直なところ健全な印象を持てません。このドラマでは、令和版白い巨塔のような医師たちが登場しますが、まだ受験生なのに、振る舞いだけは「一人前」の人は、現実に存在します。

過酷な競争が意識の面でカースト的視点を肯定しているのだろうと思います。そのため、実際に競争を勝ち抜いた医師が、それに見合う恩恵を求めるのは自然だとも感じます。過度な競争は、人間性にダメージを与える側面はそれなりに社会が理解すべきことなのかなと思います。

日本では、制度の固定化、権限の固定化が起こりやすいという指摘があります。この『ザ・トラベルナース』というドラマが、日本の医療の役割分担の在り方について、議論を喚起する役割を果たせるか興味があるところです。








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