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日曜日の本棚#36『樹木たちの知られざる生活』ペーター・ヴォールレーベン(ハヤカワノンフィクション文庫)【価値感を一変させる体感を味わいたい人におすすめの本】

毎週日曜日は、読書感想をUPしています。

前回はこちら。

今回は、ドイツで林業を通じて森林保護の活動をされている方の著書です。

この本を読む前と読んだ後では価値感が変わります。

そんな体験はなかなかできません。

この本を読めば、少なくとも樹木への見方が変わります。
恐らく、それは人生を豊かにしてくれるものだと思います。

作品紹介(ハヤカワ文庫HPより)

全世界で100万部突破の傑作ネイチャー・ノンフィクション!

ドイツ発、世界で100万部突破した傑作ネイチャー・ノンフィクション
最新の科学と長年の観察が明かす木々の驚くべき社会的な営みとは?

動物のようには動かず、声を出さないため、モノ扱いされることもある樹木。しかし、樹木には驚くべき能力と社会性があるのだ。
子どもを教育し、コミュニケーションを交わし、ときに助け合う。その一方で熾烈な縄張り争いをも繰り広げる。音に反応し、数をかぞえ、長い時間をかけて移動さえする。
ドイツで長年、森林の管理をしてきた著者が、豊かな経験と科学的事実をもとに綴る、樹木への愛に満ちた世界的ベストセラー!

所感(ネタバレを含みます)

◆私たちはあまりに樹木について無知である

本書を読む前と読んだ後では、「私」は明らかに変わった。そう断言できる。道を歩いていても、公園の散歩していても、樹木に目が行く。そして、彼らの「声」に耳を傾けようとする私がいる。

そうなってしまうほどに、本書は、私の価値観を一変させた。

ドイツで100万部を超える大ベストセラーとなるのも納得の書である。
本書を読むことで痛感するのは、私たちはあまりに樹木について知らなさすぎるということである。

◆樹木を知ることで得られる豊かさ

森の木々たちがいかに豊かに生活しているのか本書を読むことでよく理解できる。彼らが、知的であることも。
彼らは戦略的に生きている。人間よりも長く生きる彼らは、彼らなりの世界で生きている。本書を読むことで、私たちは、彼らの生き方への敬意が不足していることを理解できると思う。

◆浅はかな生き方をしているのは、人間では?という視点

本書の最大の魅力は、自分を見つめなおすということだろう。そう思わせるだけの力が本書にはある。
木々たちは、例え切り倒されて根だけになった仲間にも栄養を与えつづけたいるエピソードが冒頭に紹介される。

それに比して、人間はいかに仲間を大切にしないかを痛感させられる。

若者に対して、高齢者に対して、障がい者に対して、情のかけらもない言動を目にすると、いかに浅はかで浅ましいことをしているのかと思わざるを得ない。

ある都市の街路樹は、無残にも次々と切り倒されていると聞く。何とも愚かなことをするのかと思わざるを得ない。

そんなことを平気でできるのは、あまりに木々たちへの理解が足りないとしか言いようがない。

税込みで1000円しない本でもある。本書を読むことで、金持ちにはなれないだろうが、人生は豊かになるはずである。



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