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新規事業の領域パターン⑥事例:受験サプリ×山口氏の場合

「未解決への対応・潜在的な需要」×「隣接領域・周辺領域」×「新商品(新しいビジネスモデル)」の領域の、2010年代の成功事例である受験サプリ(現スタディサプリ)について。

■新規事業企画者(山口氏)の背景(リク社入社前)
・慶応卒業後、3年パチンコや高額バイト(会計士勉強のテイ)。
・テレビ授業で受講し、テレビ授業なのに授業料高かったなあ、と思ったことは、新事業企画のきっかけの一つ。
・親から叱られ、25歳の時に国産ERPパッケージベンダーに就職。
 3年間社長のかばん持ち。
→慶應出て3年フラフラは、その時点で、高偏差値大出身者として珍しい。

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■新規事業の企画化に至るまで
・28歳:リク就職、進学事業部署に配属。同事業は傍流事業だった。当時、高校生向けの事業部に在籍。
・同事業は、毎年売上が減り、人が減り、再成長の絵が描けず悶々としていた。
・新規事業コンペNewRingに毎年挑戦し、5年連続でダメ。
・6年目に出したアイデアが受験サプリ。
 「子ども達に最高の学びを世界の果てまで届けよう」というコンセプト
→傍流事業で、本流事業の常識に染められていなかった。
→新規事業コンペに5年連続落ちても、6回目を出すという、自分に新規事業やらせろ欲求。


■企画に対する周囲からの冷ややかな反応
・受験アプリのアイデアを、部署メンバーに話すと反応はイマイチ。
・同社のビジネスモデルはマッチングで、コンテンツ課金ビジネスモデルで成功事例はなかった。教育コンテンツを作るのは無理、という意見が支配的。
→社内常識に反する画期的新規事業あるある。山口氏も「うちでは無理でしょう」「うちらしくない」と言った社内の声と戦ったのでしょう。

■当初はコンテンツ課金ではないビジネスモデル案だった
・元々はマッチング広告モデルを想定していた。
 無料受験コンテンツを高校生に提供し、学生のデータベースを構築。例えば早稲田大学が、東京大学を第一志望にする高校生に広告を送るという形。
・ただ考えるうちに、広告で少し収益を上げたとしても、それで世の中を変えていけないと。
・必要なのはやはり予備校授業や通信教育のようなしっかりしたコンテンツ。最低限の料金で、日々の勉強に必要な有料コンテンツを提供するモデルにした。

■時代の流れや大局観、社会に対する憤り
・経済的・地理的な理由で予備校に通えない生徒たちの声。
・そのような子たちに、都会の大手予備校講師の授業を無料・格安で提供できたら、絶対使ってもらえると思った。
・これは世の中に絶対必要、“なくてはならぬ、やらねばならぬ”サービスだと確信。
・韓国はすでにオンライン予備校が浸透しており、韓国に行き学生20名くらいにインタビュー。
 いつでもどこでもカリスマ講師の授業を見て勉強している、と聞く。
→自らの内なる動機に自らガソリンを投入し、自らの動機を強めていった。

■違法ではないが、ギリギリの攻め方
・「どうせ教育コンテンツは作れない」の意見を跳ね返すために、コンテンツ作成能力・本気度を会社に示す必要あった。
・NewRing選考途中で、ツテをたどり有名予備校講師2人に面会を申し込み、2人を必死に口説く。
・講師側は「ネットやスマホで授業なんて、教育なめるなよ」と思い、当初断るつもりだったそうだが、山口氏のあまりの熱意に押されて、その場で加入することを決めた。
・有名講師2人を退職させてしまった。NewRingで敗退したら、2人の人気講師は無職になるにも関わらず。
→自身はノーリスクのまま、他人に退職させるのは、真人間には行えず、ちょっと頭がイカれてないとやれない行為。

■「子ども達に最高の学びを世界の果てまで届けよう」な妄想
・世界共通の国境を越えた教養コンテンツ(哲学、宗教など)と、ローカル to ローカルの勉強用コンテンツ(学校教育)のプラットフォームが併存し、その国の公共料金並みの金額で提供したら、いつか何億人の子供が使ってくれる、という世界を妄想。
 その第一歩として高校生の大学受験。
・「何でこの夢ある構想が、受験サプリってう名前になるんだよ、そんなこと言うなら降りるわ」と言ったら、当時の上司に怒られた。
・目指すのは教育業界の価格破壊ではなく、学ぶことのあるべき姿を描きなおし、そちらに社会を持っていこうとすること。

■プライシング
・価格は、最初は月額5000円だった。 
・事前カスタマー調査をし、大半の保護者が「5000円なら払ってもいい」と答えたので。でも蓋を空けてみたら、その価格では全然ダメだった。 
・5000円は予備校と比べれば安い。でも「月額オンラインサービス」としては高い。
 その頃動画サービスHuluが月額見放題980円で成功しつつあり、「これなんじゃないか」と。
・「1000円を切る」のが、ビジョンである「教育環境格差を変えたい」というところにも意味があると思った。
 塾や通信教育会社のコスト構造を分析した時、絶対に他社では980円は実現できないだろう、と思ったこともある。
・損益分岐点超えのための必要固定コストを膨大にした。他社が真似できないようにするため。後発参入企業が「このレベルの先生をこんなに多くは用意できない」、「こんなコンテンツ量を用意できない」と思うレベルをとにかく作ってしまい、参入障壁を高くしようと。
・長期的な視点で投資もオペレーションも構築。

■参照記事
https://newspicks.com/news/1035089/body/
https://diamond.jp/articles/-/78363
https://business.nikkei.com/atcl/report/16/102600176/102600003/
https://www.dhbr.net/articles/-/2454

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