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新規事業アイデア着想の切り口7種【初期アイデア創出ステージ】

新規事業の初期アイデア創出ステージでは、初期アイデアの着想をもとに、顧客・課題・プロダクト案・ビジネスモデル・単価・顧客数まで一気に初期案を考えます。
初期アイデアは、市場や顧客課題起点のものもあれば、経営陣の思いつきの場合もあり、自社の業界内の別領域に機会を見出すこともあれば、既存顧客に新しいプロダクトを提供する場合もあります。先端領域中心に考えることもあれば、他社のマネした後追い参入事業もあります。様々なパターンがあるがゆえに、初期アイデアの着想自体に難しさを感じるかもしれません。

初期アイデアを見出す観点にはいくつかパターンがあり、新規事業や起業を何度も行う人は、多くのパターンを自分の技として身につけています。

①画期的な事業アイデアは不要、画期的な課題を見出そう

初期アイデア着想にあたり大切なのは、画期的な事業アイデアを考え出すことではなく、それまで解決されていない画期的な課題を見出すことです。
課題解決力ではなく、「課題設定力」や「課題発見力」が重要です。取り組んで解く価値のある「問いを立てる」のです。

オンライン決済サービス「Paypal」創業者のピーターティール氏は著書「ゼロ・トゥ・ワン」で、「賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?」と問いかけます。その観点を持ちながら、事象や状況を観察して課題探索します。
みんなは当たり前だと思ってるけど、実は違っているのではないか。みんなあまり考えていないけど、深く考えるとこうではないか。みんなは無視してるけど、実は着目すべきではないか。
とある事象に直面した際に、「まあそういうものだ」と受け入れると、それは課題ではありません。一方で「21世紀の今になっても、なんでこんな我慢・不便があるんだ!」と憤れば、それは課題として受け止めることになります。
レンタルビデオ返却が遅れて延滞金を請求された際に、「まあルール通りだし」と受け入れると、それは課題ではありません。一方で「なぜそもそも延滞金なんて存在するんだ!」と憤れば、それは課題として受け止めることになります。良質な学習塾は高額で都心部だけにある状況に対して、「まあ地方は人口少ないし」と受け入れると、それは課題ではありません。一方で「なぜそんな不公平がまかり通っているんだ!」と憤れば、それは課題として受け止めることになります。
ほとんどの人は、ルール通り延滞料は払うものと捉え、需要と供給の関係から都心部以外に良質な学習塾が少ないことに違和感を感じることはありません。皆が当たり前と考えるそのような中に、実は不合理や不条理が存在するのではないか、と五感で感じ取る感性やセンスが求められます。

優秀なエース社員ほど、なぜ延滞金が必要なのか、延滞金制度がない場合にどういう問題が発生するか、詳しく理解しています。正解主義的に素晴らしく、ルールを適切に理解し、できない理由をきちんと説明可能であるがゆえに、優秀なエース社員ほど新規事業に向きません。
事象や状況の観察を通じて、実はおかしいのではないか、実は課題が潜んでいるのではないかと、クリティカルに捉えてそれまでにない形で課題を見出すことが、新規事業アイデア着想に求められる基本的な思考回路です。
新規事業の開発には、いかに新たな観点で問題を見出すか、課題を発見するかが極めて重要です。課題を見出すことができなければ、それを解決するプロダクトを作りようがありません。

②他業界や海外の成功ビジネスを参考にする

画期的な課題を見出すにあたり、他業界や海外の成功ビジネスを参考にするのは有効です。
どんな成功ビジネスにも考え込まれた仕組みや工夫、成功に至る流れや理由があり、他業界や海外の成功ビジネスの型をお手本に、自業界に当てはめて取り込むことで、既存の延長線上にない新しい事業を作ることができます。参考にすべきは、同業他社ではなく、他業界や海外の成功ビジネスです。
成功ビジネスは、ビジネス誌やインターネット上に分析記事やインタビューなどがあり、具体的事例として情報収集できるのがメリットです。様々な施策や工夫、その背景にあった環境情報、意思決定の推移など時系列を追って捉えることができ、新規事業の成長ストーリーやシナリオ検討の参考にもなります。

他業界や海外の成功ビジネスを参考にするとき、目に見える表層をマネるのではなく、抽象化して捉え、ビジネス構造に活用可能なものを見抜く必要があります。そのビジネス構造や型、背景環境との力関係やキーポイントなどを抽象化して捉えて自分の知識とし、それを自社の場合に当てはめて再構成して新ビジネス案をと考えます。
「アナロジー」と言われる思考方法で、未知の物事・深く知らない事柄(ターゲット領域)に、既知の物事や情報(ベース領域)を当てはめて推論する思考です。ターゲット領域とベース領域の対象カテゴリー間の異質性が高いほど、飛躍的なアイデアに結びつきやすくなると言われます。
イタリアのルネサンス期の天才「レオナルドダヴィンチ」が遺した傑作の1つである人体解剖図に、心臓の血流が描かれています。そこには「血流の流れ」も描かれており、見えないものをなぜ描くことができたのか、数百年もの間、謎に包まれたままでした。
2014年、オックスフォード大学の研究チームが、生身の人間の血流の流れを磁気共鳴映像法によりリアルタイム解析に成功し、450年の時を経て、レオナルドが正しかったことが証明されました。レオナルドは地球や自然を生物と考えており、水を生命の源と捉えていたそうです。山奥に流れる小川の水の流れや渦などの様(ベース領域)を、心臓の血流として描いた(ターゲット領域)のではないかと言われています。これもアナロジー的なものごとの捉え方です。

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日本の高度成長期にも、他業界や海外ビジネスを参考にして、多くの新規事業が創られました。
運輸大手のヤマト運輸は、元々は法人向けの運送会社でした。2代目社長の小倉昌男氏が個人宅配市場に着目して新規事業開発を検討した際、基本的な戦略については牛丼の吉野家からヒントを得ました。吉野家のように思い切ってメニュー絞り、法人と個人の両方やるのではなく、個人の荷物しか扱わない会社になるべきだと思ったそうです。
個人宅配事業の仕組みの試行錯誤を繰り返す中、1973年アメリカ出張時にアメリカ大手運送会社UPS社の集配車が、ニューヨークのマンハッタンで小口配送する光景を見て、事業全体での損益分岐点に加え、車両単位での損益分岐点にも着目すべきと閃き、事業計画を練り直したそうです。

当時イトーヨーカドー取締役の鈴木敏文氏は、当時商店街の小型小売店が衰退する中、アメリカから「コンビニエンスストア」という新業態を模倣して、セブンイレブンジャパンを立ち上げました。

インターネット時代になっても、他業界や海外の成功ビジネスを参考にするケースは多いです。法律ポータルサイトの「弁護士ドットコム」は、創業者の元榮氏が2004年に、ネットサーフィン中に「引越し比較.com」というウェブサイトを偶然目にした際に、引越し業の比較のように、弁護士が比較できるサイトがあれば良いと思いつき、2005年に弁護士ドットコムを立ち上げたそうです。
ネットベンチャーのビジョナル社の創業事業である「ビズリーチ」は、アメリカの課金型転職サイト「TheLadder.com」を真似て立ち上げられました。
アメリカのクラウドサービス大手の「Salesforce」社の創業者マークベニオフ氏は、EC大手Amazonに着想を得て、法人向けソフトウェアもハードウェアを購入することなく、インターネット経由で利用できるシステムを作ろうと、1999年にクラウド型CRM「Salesforce」を生み出しました。

他業界や海外の成功ビジネスを参考にするのは有効な方法です。しかし「他業界・海外」はほぼ無限の広がりなのが難しい点であり、新規事業リーダーのセンスやビジネス嗅覚に依存します。
新規事業の担当になってから他業界や海外を調べ始めるのでは間に合わず、普段からのビジネス好奇心の有無が直接的に影響します。様々な業界や領域について何年も何十年も情報収集する人、つまり書籍「両利きの経営」における「知の探索」を自身の好奇心に従いやり続ける人ほど、新規事業の初期アイデアを思いつきやすいです。

③30年前から変わらぬことを、今風に根本的に作り変える

20〜30年前から変わらぬことに着目するのも有効な方法です。
30年前と現在では社会はガラッと変わっています。そうであるにも関わらず、30年前から変わらないプロダクトは、古めかしい方法のままで顧客に我慢や不便を強いているかもしれません。

30年というのは、社会は完全にガラッと変わるのに十分な期間です。1930年から1960年の間は、満州事変から第二次世界大戦、終戦後を経て、もはや戦後ではないとなり、池田内閣が所得倍増計画を掲げたのが1960年。30年で社会は完全に変わりました。
1960年から1990年では、「安かろう悪かろう」な粗悪品生産国な頃から、ジャパンアズナンバーワンと言われるまでになり、バブル経済でGDP世界第2位で、三菱地所がアメリカの富の象徴「ロックフェラーセンター」を買収したのが1990年です。30年の間に、これほどまでに社会は変容するのです。
20〜30年前と変わらぬことは、長年解決されない問題が内在する可能性が高いと解釈し、そこにある課題を見出しましょう。

クリステンセン教授の「ジョブ理論」によると、既存の不満足な解決策の刷新は、新市場型破壊的イノベーションを生み出す定石アプローチです。 そのような課題の見出し方は、書籍「ジョブ理論」にある通り、「生活に身近なジョブ」や「間に合わせの対処策」、「できれば避けたいこと」を探ること。
個人的な探し方は、ものごとをクリティカルに観察し「どうして今どき、そんなやり方を強いられているんだ、もう21世紀だぞ!」と憤りを感じることを探します。顧客やユーザーとして感じる面倒や不便さ、不都合や我慢の強要、複雑さやイライラ、期待外れや失望感、不要なステップや無駄な時間など。21世紀になって20年以上も経つのに昔のやり方のままで、憤りを感じることを捉えます。
例えば、携帯電話(スマートフォン)の電源が切れる不安は、PHSが主流だった1990年代後半から何も変わっていません。なぜいまだに、外出中にスマートフォン電源が切れる不安を感じないといけないのでしょうか。多くの人が抱えるこの問題が、20世紀末の頃から解消されないのはなぜでしょうか 大半の人は、その状況を「そういうものだ」と受け入れ、モバイルバッテリーを持ち歩きます。専門家は、電池や電源の進化の過程や、できない理由を詳しく知っているでしょう。常識人や専門家はそのような対応をします。一方で、新規事業を作ろうとする人は、このような業界常識を、問題として捉え直します。 

レンタルDVDの延滞料は損した気分になりますよね。道端でタクシーが捕まらないとイライラしませんか。広告費はなぜ先払いして広告主が一方的にリスクを追わねばならないのでしょう。海外への送金手数料はなぜあんなに法外に高いのでしょう。賃貸マンション引越す際に、住む側がなぜ「お礼である礼金」を払わねばならないのでしょう。
大半の人は「そういうものだ」と受け入れますが、今のご時世そんなのおかしいだろうと捉えた人が、延滞料という概念のない月額固定額のDVDレンタルサービスを始め、スマートフォンのタクシー配車アプリを始め、成果報酬型の広告サービスを始めました。

子供をインフルエンザ疑いで病院に連れて行き、検査しても、インフルかどうかわからないと診断されるのはなぜでしょう。
従来のインフルエンザ検査方法は、ウィルスが増殖する前の感染初期段階では判定できず、そのためそのような問題が発生していました。 それを「そういうものだから仕方がない」と諦めず、課題として取り組んだのが富士フィルム社のある研究員です。富士フィルムは新技術(高感度検出技術)を用いて、ウィルスが少ない感染初期でも診断できる機器開発に成功し、2011年より提供しました。

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20〜30年前から変わらぬことに着目するのは有効な方法です。しかし、自業界で30年前から変わらぬプロダクトは、大手企業にとっては既得権益であり、利益の源泉です。だからこそイノベーションのジレンマが起こるわけですが、他業界からの参入や同業他社が先に取り組む前に、ぜひ自社で取り組みたいものです。

④無消費状態になっている、隠れた抑圧を見つけ出す

無消費状態になっている、隠れた抑圧を見つけ出そうとするのも、新市場創出を狙う場合は有効な方法です。
無消費状態は市場になっていないため、市場調査などのデータに出てきません。そのような二次情報に頼るのではなく、消費者としての違和感を感じるセンスや感度がポイントになります。

⑤規制緩和や法改正の機会を活かす

規制緩和や法改正の機会を活かすことは、新規事業開発の定石の一つです。規制緩和により、新しいビジネス市場が広がることが、半ば保証されているためです。
戦後日本は、政・官・財の鉄のトライアングルや護送船団方式などにより、奇跡の経済成長を果たしました。しかし1990年代初めバブル経済崩壊後に経済の停滞に直面。日本は成長原動力として規制改革に焦点を合わせるようになり、1995年頃から様々な業界や領域で規制緩和が進められました。

規制緩和の大半は、許認可や法律などによって今まで取り組めなかったことに、あるタイミングから取り組めることを意味するため、新市場や産業の創出の大きなチャンスです。 規制緩和には、テレビやビジネス雑誌などで大々的に取り上げられるメジャーなものから、その業界で長年緩和が待ち望まれてきたマイナーなものまであります。
メジャーな規制緩和は、確かに市場規模が大きく一見魅力的な機会に見えますが、誰でも参入可能で直ぐに過当競争になり、参入企業の大半が黒字化せずに事業撤退することになりがちです。圧倒的な顧客基盤を有する、ブランドを活かせる、最後の数社を除き倒産するまで粘る財務力がある、など本業の強みを活かした勝ち筋を見出す必要があります。

例えば2016年の電力小売自由化の際は、わずか2年で500社近くが電気小売事業社として新規参入しました。多くの大手企業も参入したものの、オリックス電力は2017年9月に事業撤退、賃貸住宅大手の大東建託グループの大東エナジーは2017年11月に事業撤退、新電力最大手 F-Powerは2021年3月に負債464億円を抱えて経営破綻しました。
電力小売事業参入で自社の特徴や強みを活かして成功したのは、関東大手私鉄の東急電鉄グループの東急パワーサプライ社です。東急電鉄が持つ沿線周辺の顧客基盤という強みに加え、元々沿線沿い中心に様々な生活サービス(セキュリティ警備サービス、家事サービス、ケーブルテレビなど)を提供していたことで、「東急が電気提供も始める」のが自然な形で受け入れられました。 

2000年前後には金融業界で多くの規制緩和がなされ、インターネットの登場とも重なり、様々な企業が証券会社や銀行に新規参入しました。
1998年に老舗松井証券が日本初のインターネット取引を開始。1999年に元ゴールドマンサックスの松本氏がマネックス証券を創業しました。錚々たる大企業も参入し、1998年に日立グループが日立クレジット証券を設立(2011年に日本政策投資銀行により買収)、2000年にトヨタフィナンシャルサービス証券が設立(2010年に東海東京証券により買収)されました。 

特定業界のマイナーな規制緩和の例として、法律ポータルサイトの「弁護士ドットコム」は、規制緩和の追い風に乗った新規事業でもありました。弁護士業界では、戦後長らく広告は全面禁止されていましたが、2000年に弁護士広告が原則自由化という規制緩和がなされ、2005年に弁護士ドットコムが開始されました。 賃貸不動産業界では、2017年にIT重説(不動産取引の際の重要事項説明をIT活用して行うこと)解禁により規制緩和の期待が高まりました。
スタートアップのイタンジ社は、賃貸不動産のオンライン契約が法律で認められる前の2018年に、近い将来の規制緩和を見越して、賃貸不動産ウェブ申込受付クラウドサービスの「申込受付くん」を開始。その後、2021年にデジタル改革関連法が成立したことで、賃貸契約の電子化が可能となりましたが、その時点でイタンジ社の「申込受付くん」は圧倒的なシェア1位を獲得していました。

⑥大きな産業創出拡大時に、その周辺裾野に該当する領域

大きく新しい産業が生まれるとき、その周辺の数多の新規事業の機会が生まれます。
いかなる大企業であっても単独である産業創出を担うことは不可能で、新産業の「裾野」の言われる領域で様々な新規事業のチャンスが生まれます。新産業が生まれるときは、産業を牽引する主な大企業群はもちろん、メディア業界も金融業界も、行政や官僚も注目し、その新産業創出を盛り上げるとともに、多くのお金が動きます。主たる会社や事業が中心となり様々な領域に波及効果があり、そこに数多くの新規事業のチャンスがあります。

例えば1999年にドコモ社「iモード」が登場した後、ケータイコンテンツ産業が急速に成長しました。ゲーム、占い、着うた、電子書籍、広告など、スタートアップから老舗企業まで様々な業界がiモードという新産業拡大の恩恵に預かりました。
電力小売自由化前年の2015年、多くの会社が参入表明して電力小売産業が誕生することが確実視された頃、スタートアップ企業のエネチェンジ社は2015年に電気代見直しポータルサイトを開設。電力会社の乗り換え斡旋に特化することで、短期間で事業を急成長させました。
このような新規事業は、リーバイス型とも言われます。1800年代アメリカでゴールドラッシュの際、一攫千金を夢見て多くの野心家が砂金堀りに奔走。その折リーバイ・ストラウス氏は、破れにくいワークパンツを商品化。破れにくさに加え格好良く、売れに売れたそうです。ゴールドラッシュを夢見た採掘ワーカーの大半は、夢破れて破綻したと言われる中、最も経済的に成功したのが現在のリーバイス社です。

⑦アメリカのスタートアップ企業を完全コピーする

新規事業アイデア着想に海外の成功ビジネスを参考にするのは有効ですが、特に野心的なビジネスやデジタル関連の破壊的な新規事業を目指す場合には、アメリカのアーリーステージのスタートアップ企業を完全コピーするのは良い方法です。
アメリカのシリコンバレーやサンフランシスコなど西海岸には、本気で世界を変えようとする野心の塊である起業家が世界中から集まっています。AppleやGoogle、Facebookなどのテックジャイアント、UberやAirbnbなど新サービスは全てアメリカ西海岸で創設された会社あり、次の世界の当たり前を創り出す震源地といって過言ではありません。

そのようなスタートアップの、特にアーリーステージのプロダクトを調べ上げ、自社や自業界に合うものを探しましょう。それを完全コピーして、日本で新事業を創るのです。
スタートアップ企業は、事業の成長度合いによってステージ分けされており、シードステージ → アーリーステージ → ミドルステージ → レイターステージ、と呼ばれます。シードステージは、試行錯誤を通じて初期プロダクトを開発する段階です。アーリーステージは、顧客に受け入れられるプロダクトがある程度できる段階です。ミドルステージは、ビジネス拡大に向けた再現性がある程度成立する段階。 野心的な新規事業のアイデア探しのためには、アーリーステージから、場合によってはミドルステージのスタートアップを調べましょう。
アーリーステージのスタートアップは、まだまだ荒々しいもので、失敗に終わるプロダクトが大半です。スタートアップ投資専門家のベンチャーキャピタルも、どのスタートアップが成功してどれが失敗するかは、ほぼわかりません。しかし、あなたの業界の専門家であるあなたの目から見て、筋が良いと感じたり、着眼点が面白く日本でも成立しうると感じるスタートアップがあるはずです。
デジタル関連のプロダクトは、無料トライアル含めて実際に使えることが多く、どのようなプロダクトなのか深く理解でき、完全コピーしやすいもメリットです。

アーリーステージのスタートアップは、日本語で探すことはほぼ不可能です。一部ビジネス専門誌やウェブメディアでは、海外スタートアップ企業を取り上げることがありますが、メディアが取り上げる時点で、既にミドルステージ以降の場合が多く、取り上げられるスタートアップ数や情報が少なすぎてあまり役に立ちません。
そのようなスタートアップを探すには、アメリカのアクセラレーターのデモデイ、未上場企業の急成長ランキングを調べましょう。

●アメリカのアクセラレーターのデモデイ

アクセラレーターとは、創業直後のスタートアップや起業家をサポートし、事業成長の促進を支援する団体やプログラムです。一度に数十社以上の起業家が参加し、起業家は、3ヶ月ほどのプログラムを通じて自社プロダクトをブラッシュアップさせます。その3ヶ月の最後に「デモデイ」という、主にベンチャーキャピタルが参加するお披露目プレゼンが開催されます。
例えば、アメリカで最も有名なアクセラレーター「Y Combinator」の2020年夏クラスのデモデイでは、198社の起業家が、各社1分のプレゼンを行いました。 有名アクセラレーターは、応募に対する合格率が極めて低く(Y Combinatorの場合は1万応募以上あり、合格率は1〜2%)、アクセラレータープログラム参加時点で相当厳選されています。アメリカでは、ハーバード大学(合格率5.9%)、スタンフォード大学(合格率5.1%)より狭き門と言われたりもします。
次の世界の当たり前を創り出す震源地のアメリカの中で、まさに次の未来を創り出さんとする野心的な起業家集団が、そこにあるのです。 有名アクセラレーターは、Y Combinator、Techstars、500(旧500startups)などがあり、それらが開催するデモデイでプレゼンされたプロダクトは、英語のメディア記事やブログなどで調べることができます。アクセラレタープログラムは多数あり、年2回デモデイを開催するところもあり、過去2〜3年分を調べれば数千のスタートアップを調べることができます。

●アメリカの未上場企業の急成長ランキング

アクセラレーターは、シードからアーリーステージの新プロダクトが中心であるのに対して、急成長ランキングを見ると、アーリーからミドルステージのスタートアップを探すことができます。急成長ランキングを調べる利点は、実際に急成長しているビジネスに限定して調査できるところです。ただデメリットもあり、対象ランキングや取り上げられるビジネス数が限定的であり、調べても真似したいビジネスが1つも見つからない可能性があります。
有名な急成長ランキングの1つはTechnology Fast 500の北米版。デロイト社が、テクノロジー/メディア/通信業界の急成長企業(直近3決算期収益の成長率)を、世界3極(アジア太平洋、北米、欧州中東アフリカ)の地域別で500位までランキングするものです。
Inc. 5000も有名で、アメリカのビジネス雑誌のインク誌が発表する、アメリカで最も収益成長率の高い未上場企業の上位5000社ランキングです。Technology Fast 500と異なり業種を限定しないため、実に様々な企業がランキングされています。 

アメリカのスタートアップ企業をしらみつぶしに調べれば、完全に真似したい新ビジネスをきっと見つけ出せるでしょう。

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