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日本人の無意識の思考回路を認識して、突き抜ける【後編】

新規事業の推進にあたり、大半の日本人が無意識に持ちがちな新規事業に不適切な思考回路も、意識的に認識するのがよいでしょう。

●思考回路4:ルールは守るものだと思い込んでいる

ほとんどの日本人は、ルールは守るものだと思っています。そのルールの存在理由やルール制定時の背景や狙いを知らずとも、「ルールだから」と言われれば、ほとんどの日本人は黙って従います。ルールは守るものだと思っているためです。
そのおかげで、世界各国と比べて、日本は民主主義、自由主義な国でありながらも高度に統制が取れ、秩序が守られた安定した社会になっています。新幹線など電車ダイヤの正確性は、世界のどこの国も真似することができません。

ただ新規事業においては、既存ルールに挑んだり、ルールを作り直したり、現代に合わせてルールを解釈し直すことが必要な場面が少なくありません。どの業界にも暗黙のルール・業界慣習が存在します。同業他社のモノマネではない、新しい価値創出を狙う新規事業では、業界ルールや暗黙の慣習の延長線上ではなく、ルール自体を書き換える必要性があり得ます。
ルールは、ルール自体が正しいのではありません。ある領域、ある時代において、ある共通目的の達成や実現に向けて、そこに関連する人や組織が守ることが望まれる共通的な行動基準や制約がルールです。ルールは、昔から勝手にそこに存在するものではなく、誰かが意志を持って作るものでもあります。
ルールは守るものだと思い込みがちの日本人の思考のクセを、認識しておきましょう。

●思考回路5:「和をもって貴しとなす」が良いと思っている

聖徳太子の時代からなのか、ほとんどの日本人は、「和をもって尊しとなす」が良いと思っています。できれば意見の対立を避け、仲良くやることを優先しようとします。
そのおかげで、「あ・うん」の呼吸でものごとがスムーズに進み、「空気を読むこと」や「適切な忖度」により不要な対立やトラブルが少ない、世界でも有数のハイコンテクストな文化が形成されています。強い主張をすれば、その内容の良し悪しに関わらず、「出る杭」として周囲から叩かれます。

新規事業は、現状にない何かしらの事業を創る営みであり、今までと異なる明確で強い主張なしには新事業を創ることはできません。意見の対立は、当然頻繁に発生することです。関係者の軋轢を恐れて、その場の雰囲気に合わせ、事なかれで忖度して、真っ当な新規事業を創れることはありません。社内で多くの人が「いいね」という新事業案は、業界ルールや社内都合に合い、既存の延長線上の発想なため、大抵筋が悪いです。
「和をもって貴しとなす」が良いと思い込みがちの日本人の思考のクセを、認識しておきましょう。

●思考回路6:失敗を極度に恐れる

ほとんどの日本人は、失敗を極度に恐れる傾向にあります。失敗は恥だと感じるからか、失敗したら誰かから責められるからか、失敗恐怖症といえるほど、失敗を避けることを何より優先する人も少なくありません。
失敗恐怖症的な国民性のおかげで、失敗しないよう、きちんと準備して計画立てるため、様々なことが期待通りに進んでくれ、余計なストレスの少ない社会生活を送ることができます。

しかし新規事業は、それまでの常識と異なる新しい事業を創る営みであり、日々わからない場面に直面します。試行錯誤しながら行動して失敗して学びながら進めます。「フェイルファースト」という言葉があるほど、新規事業推進において失敗は必然です。
「失敗を恐れずどんどん挑戦しよう!」のような、単なる標語はほぼ無意味。ほとんどの日本人は、失敗を極度に恐れることを、認識しておきまそう。


新規事業に向く資質を持つ人(①「知覚」が特異で、ものごとの捉え方が特有、②自分の判断基準を持ち、自分の頭で考えることができる、③見えないものを観て、ものごとを抽象的に構想できる、④自分駆動で意思決定&行動志向である、⑤「人と違うことは良いこと」と思っている)は、日本人の無意識の思考回路とは、やや異なる思考回路の持つ可能性が高いです。
そのため新規事業リーダーは「自分がこのような思考回路に陥っていないか」と自問する必要はないでしょう。
しかし、自社の人たちの多くが、このような無意識の思考回路を持っています。新規事業に向けられる批判や非難の声の深層には、典型的に日本人が持つ思考回路が関係する場合も少なくありません。社内から寄せされる様々な声を受け止める際、日本人の無意識の思考回路を認識しておくことは有効です。

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