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灯台のぼる記 #5 潮岬灯台(和歌山県串本町)

「はしっこラバー」という種族がいます。
「日本最北端!」や、「九州最西端!」「知多半島最南端!」といった、いろいろな「はしっこ」を求めて半島の先っぽなどを訪ね歩く人たちのことです。

(自分のことはさておき)少なくとも私は現実世界でそんな人に出会ったことはありませんが、それでも、確かにどこかにいるんだそうです。

今日は、そんな人にぴったりな灯台にのぼります。


歴史ある「最初期」の灯台

本州最南端に位置する和歌山県の潮岬しおのみさき、そこに立つ潮岬灯台です。

歴史的・文化的に価値が高いとされる「Aランクの保存灯台」(全23基)に選ばれているほか、当然のように「日本の灯台50選」にもその名を連ねる、灯台界のスターです。

歴史的に見ても、国内で指折りの古さを誇っています。

初点灯は1873年(明治6年)ですが、実はその3年前の1870年(明治3年)に灯台は完成していました。当時は木造で、これは日本初の洋式木造灯台と言われています。
その姿かたちは、灯台に併設された資料館の模型で見ることができます(下)。

1870年完成の初代潮岬灯台(模型)
19個の反射鏡が備わる独特の灯器。

ではなぜ点灯が遅れたのか。
この灯台に使うためにイギリスから機材を船で輸送していたところ、トラブルによって船が沈没(!)、急遽アメリカから蒸気機関車用のランプを取り寄せて「仮点灯」したのだそうです。
結局ちゃんとした部品が届くまでに3年の歳月を要し、正式な「初点灯」が3年遅れたのだとか。

初点プレート。記された"1878"は、現在の2代目灯台(石造)がつくられた年を表しています

海の難所を見守る

さて、まずはその姿を遠目に見てみましょう。

冒頭で「本州最南端」とは書きましたが、実際の最南端は上の写真に写る岩礁ではなく、もうちょっと東側にある「クレ崎」という岩場です。

それにしても、切り立った崖のようにも見えるゴツゴツした岩肌がそこかしこに露出しています。
なるほどこれは船乗りにとっては悩みのタネだったのではないでしょうか。
この地に灯台建設が急がれた理由が分かるような気がします。


灯台の前には観光用駐車場があります(\300)。

本州最南端ということで、大阪から車で3時間ほどかかります。
ただ、目の前の駐車場まで車で行けるため、アクセスの難易度はそこまで高くありません。
ちなみに、公共交通機関を利用する場合は、JR紀勢本線の串本駅から串本町コミュニティバス「潮岬・出雲線」で20分弱だそうです。

近づいて、あらためて灯台を見上げます。
高さは22.5m。取り立てて長身というわけではありません。
そのためか、すらっとした印象はなく、むしろずんぐりとした姿に見えますね。
地上部分の建物がどっしりとした四角形なのもそう見える要因なのかもしれません。

玻璃板。内部にはLB-H120型灯器が収まる

玻璃板ハリハン(=レンズを囲うガラス窓)は三角形基調のデザイン。個人的には四角形基調のものより好きです。
良く見ると監視カメラがついていますね。
このカメラの映像は海上保安庁によって公開されていて、以下のURLから24時間見ることができます。

目を凝らすと石の模様が見えてくる

階段最上部にひと工夫あり

螺旋階段を反時計回りにのぼっていきます。

段数は68段。
特徴的なのが、踊り場に出る直前の「はしご」の部分。

たいていの灯台は狭くてここですれ違いのための行列ができているのですが、潮岬灯台の場合はこのはしごが2つあり、それぞれ一方通行になっています。
踊り場付近での渋滞が発生しづらく、これはスペースの有効活用と言えますね。


見えるはどこまでも海、海、海

踊り場まで上がってきました。
景色はこちら。

南方向
多くの船が行きかう
東方向

東~南~西と、ほぼ180度のパノラマは太平洋。
遮る島もなく、ただただ水平線の丸さを感じることができます。

それにしても、ゴッツゴツのゴッチゴチですね
大きな岩場がごろごろと海に浮かんでいるようです。

その上で釣りを楽しむ人たちの姿も。
波にさらわれたりしないのだろうか…。

北西方向
山中に見えるは「潮御崎神社」
時間がなかったので今回はお詣りできず

個人的残念ポイント=レンズが見えない

さて、踊り場からの景色としてはかなり素敵な潮岬灯台ですが、個人的には残念ポイントも。

それが、レンズです。

潮岬灯台に使われているレンズはLB-H120型と呼ばれるもの。
他の「のぼれる灯台」の多くが水銀槽や特殊車輪によって大きなフレネルレンズを回転させる方式であるのに対して、このLB型はレンズと光源を一体化し、モーターで直接回転させています。

…と、ネットの受け売り知識で書いてはみましたが、正直なところ私もよく分かっていません。これから勉強します。

問題はそこではなくて、こちら。

レンズ、見えず…!

そう、踊り場からレンズが見えないんです。
ハリハンまでの高さがあるため、どんなに背伸びをしても、手すりに体を預けてのけぞるようにのぞき込んでみても(しちゃダメです。あくまで比喩)、見えないんです。

ならば内側から、と塔の中へ入ってみても。

天井に阻まれ…

相変わらずレンズを見ることは叶いませんでした。
潮岬灯台は秘密主義のようです。


おわりに

そんなわけで、個人的にはちょっと心残りのある灯台です。
しかし本州最南端というバリューもあり、和歌山南部の風光明媚な海岸線を楽しみながら訪ねられるこの灯台。
関西に住む方の休日を爽やかに彩ってくれることは間違いないでしょう。

次回はすぐ近くにある、樫野埼灯台(和歌山県串本町)にのぼります。

おわり。

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