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アラフィフからのアイドリッシュセブン27 MEZZO"とシティポップと私

ある日、現在の私が若かりし頃の自分の前に現れて言う。

現在の私「あんたね、30年後に素敵なゲームのメンバーがシティポップ歌うのを聴いてるで?」

若い私「は?50にもなってゲームとか何?30年後にシティポップがリバイバルとか?何?」

会話が通じる気がしない。茶番ですみません。


MEZZO"の1stアルバム「Intermezzo」が2021年10月20日に発売された。
驚くのはこれが1stということだ。
アイドリッシュセブンが実装されて6年、人気デュオのアルバムが初の発売とは。
アイナナの世界に触れたのがおよそ2年前なのだが、その時はアニメ1期も初見だったため、ぎこちない、危うい2人のイメージしかなかった。


しかし、その危うさが人気の元。こんな17歳と20歳がいたらそりゃあ人気になるよね?
実力のある、ルックス最高な、大人の心と子どもの心が同居したようなデュオ、人気が出ないわけないよね?(これ、本当の大人と子どもではダメなんである。ほら、見た目は子ども、中身は大人、って魅力あるでしょ)

そして待ちに待ったアルバム。
紆余曲折ばかりを繰り返して来た時間があった、ようやく自分たちの音を現せるようになった、そして、彼らの奏でる音楽はまだまだ続く。
と言う意味でのintermezzo(間奏)。
アルバムのタイトルとしてこれ以上のものはあるまい。さすがMEZZO"チーム。

そして、これはアラフォーアラフィフこそが聴くべきアルバム。

巻頭で話をしたシティポップ。
今回のアルバム8曲目「Tears Over~この星の君と」
試聴動画がYouTubeにて配信され、一聴した筆者は小躍りした。

シティポップとは歌謡曲からニューミュージック、j-popと繋がる日本の音楽の系譜の中で、今で言うj-popのハシリと言ってもいいジャンル。
洋楽を日本人向けにアレンジした楽曲は瞬く間に世間の注目を浴びた。
歌い手は大瀧詠一、山下達郎、竹内まりや…
シティとはそのまま東京を指す。その後で言うバブル景気というのは、テレビで見る東京そのものだった。

田舎に住んで大学も地元を選んだ自分(その頃は女が大学なんて行かなくていいと言われたものよ)には東京は憧れ以外の何物でもなかった。東京の大学に進学した友人を頼ってはよく足を運んだ。
シティポップとして紡がれる楽曲は、大人の恋を彷彿とさせた。
今のようにネットはなく、雑誌の中の洋服は買えない時代。通販と言えばタンスを買えばもう一つ付いてくるのよね?という印象の(ディスってないです)ものだった頃、東京に出ないと何もないと思っていた。
あの時代に生まれた人間は1度は思ったと思うなあ

そのシティポップが世界で大流行りと聞いたのは二年前くらいだろうか。国際ニュースの中のほのぼのな話題として取り上げられていた。とりわけ竹内まりやさんは大人気だという。しかも、カバーやアレンジではなく、日本語のオリジナルが好まれている。
元々洋楽を下敷きにしているがメッセージ性はなく、都会の中で揺れ動く恋愛模様を主体に歌われるシティポップ。
日本人歌手が歌うグルービーな、浮揚感のある、ちょっと現実離れした音楽は世界の中では異色の存在だったのだろう。今手元にあるものはわざわざ探してまでは聴かない。
ネット配信されていないものをわざわざ買い求めに来る外国人のリスナーたちが居るのだ。

私の好きなバンド「ポルノグラフィティ」のボーカル岡野昭仁氏がカバーライヴを配信で行ったが、松原みきさんの「真夜中のドア~Stay With Me」を歌われて度肝を抜かれた。岡野氏は現在47歳。(2021年10月20日現在)1979年発売の当時はまだ5歳だったはずだが、昨今のシティポップブームを元にこの曲を選曲された。素晴らしい。しかも女性の歌なのに原キーで歌いこなす歌唱力付き。
TLのフォロワーがほぼこの曲を知らず、なんとなく、( *¯ ꒳¯*)ドヤァとしてしまった。仕方ない。

Intermezzo試聴動画でを一聴後、「これは…なんだ…?AORでもR&Bでもない…そうだ!シティポップだ!」
となった自分の高揚感たるや。
YouTubeのコメントに並ぶ、大人っぽい🥰と喜ぶ若者に混じってシティポップと騒ぐアラフィフが居るがこの私だ。
その後、アルバム発売を記念した生配信番組「MEZZO"の君と一緒に楽しみ隊」で逢坂壮五役の阿部敦氏が「シティポップだなあと思って」と言われ、思わずガッツポーズをしてしまった。

そう、MEZZO"ファンの多くは「知らない」ようなのだ…

MEZZO"はアラフィフこそ聴くべきとしたのは、こんな音楽の流れを知っているはずだからだ。

小田和正オマージュ

MEZZO"の「雨」という名盤。
これが特殊EDとして流れたアニナナ1期12話。
雨のように上から降ってくるクレジットで驚いた。そして美麗な種村有菜女史の撮り下ろしイラスト。アニメを多分50年くらい見て来たが、こんなの初めてだった。あれがなかったら、今ここでこんな話はしてない。

そして、「あの日あの時あのベンチで」という歌詞。
これを聞いて小田和正氏の「ラブストーリーは突然に」を思い浮かべないアラフィフはいないはず。
「あの日あの時あの場所で君に会わなかったら 僕らはいつまでも見知らぬふたりのまま」

こんなに恋焦がれて苦しい心、いつまでも止まない雨のようにはやる気持ちも止められない。こんなことになるなら見知らぬふたりのままが良かったのか?いやこれは運命。見知らぬ2人には戻れない。

という「雨」。
見事なオマージュ。

東京ラブストーリーは、放映から30年経つんですってよ、奥さん。
バブル景気真っ盛り。
「雨」もそれを受け継いだように90年代のポップスの雰囲気を漂わす。

それに加えてカップリングの「甘さひかえめ」のあまりの小田和正ぶり(?)に驚いた。すまないが思わず笑ってしまった。サビの最後「忘れない味」「必要だから」「どうぞよろしく」はその前の低い音から急に高い音階を踏む。どう聴いても小田和正節。
そうか、MEZZO"にはその路線を歩ませたかったのか。作曲家、桜春樹の趣味全開である。

MEZZO"を取り巻く大人

アイドリッシュセブンについて書き始めたひとつの理由は、主体たるアイドルの周りに居る大人がアラフィフということだった。
父親だったり、事務所の社長だったり、メンバーに大きく関わる人物だったり。
例えばIDOLiSH7の所属する小鳥遊事務所の社長、小鳥遊音晴氏、亡くなった音晴氏の妻、八乙女プロダクション社長の八乙女宗助氏は元々同期入社で48歳。
ゲーム実装の6年前に48歳と言うことは、単純に言えば今は50代半ば。
東京ラブストーリーの主人公たちとほぼ同世代。ど真ん中。
バリバリ働くキャリアウーマンを取り巻く2人の男性。女1男2のドリカム状態(これも例えとしてはかなり古いなー)。
この辺りの話をやってくれると期待してるんですが…

そういう所から思うと、MEZZO"が80年代90年代ポップスの王道を狙って居るのは頷けるし、バブルを経験した八乙女社長が煌びやかな路線で高級感を狙ったというのも分かる(小室哲哉氏による「DAYBREAK INTERLUDE」は事務所からの独立後の作品として発表されているが、言うまでもなく小室世代ど真ん中の八乙女氏の大好きな路線だったと思う)。

それを踏まえるとRe:valeの所属する岡崎事務所は社長からしてまだ20代半ば、スタッフもきっと若いだろう。「いきものがかり」の水野良樹氏を起用したのはその年代に支持されているのには違いないし、月雲プロダクションのŹOOĻの社長兼マネージャー月雲了氏は30歳、ヒップホップブームの洗礼を受けた世代として19歳の棗巳波の作るギャングスターの世界観を歓迎するのは納得いく。

あと、壮五の叔父もそれくらいではないかと思っている。壮五に音楽を教えた叔父。不幸にも亡くなったが、その才能と影響力はとても高かったことだろう。なにしろあの九条鷹匡まで注目した人物である。父親の弟ならば40代50代でもおかしくない。 シティポップを聴いていたことは充分可能性がある。

ここまで考えられているとしたら凄いなあ、いや、考えてると思うなあ。

(追記)

2022年1月12日発売、IDOLiSH7のセカンドアルバム「Opus」。なんとあのスガシカオ氏が楽曲提供ということで驚きを持って迎えられた。私も驚いた。スガシカオ氏は50代。これで小鳥遊事務所の志向がアラフィフにも支持される人気のアイドル・アーティスト育成ということが証明された…のかな?

スガシカオ氏提供の楽曲「Boys & Girls」は00:48頃から。ポップな1曲に仕上がっているようだが、未聴のため(この筆は2021年12/22現在)Bメロなどで高度に変化するかもしれないという予想。いずれにしても必聴。

ただでは終わらない

MEZZO"のTears Overの話に戻るが、
このシンセの音とリズムボックスが、まんまシティポップのそれだし、メロディに半音を多用してふわふわした浮世離れ的な空想の世界を作りだすのも特徴的。
あと、「ハイウェイ」が出てくる。
都会に住んでいてなおかつ車を持ち、音楽と共に高速道路を飛ばして遊びに行く人の音楽なのでハイウェイはお約束だし、んでもって夜の街を泳いじゃうんである(このフレーズが出てきてあまりの王道さに心の中で頭を抱えた)。

MEZZO"がハイウェイを車で飛ばすイメージなんてない。壮五は20歳なので運転免許は持っているかもしれないが、ハイウェイから見下ろす世界は資本主義そのもので壮五の居たい場所ではない。環は「なーなー、なんか美味しいもん、食いに行こうぜ?」しか言わない気がする(偏見)。

MEZZO"くん本人達はともかく、彼らの歌を聴いて脊髄反射的にハイウェイをかっ飛ばしたくなるのは間違いではなかったようだ。
スキーや海水浴デートという遊びは一応通って来たので、その時にカーステに積む音楽はこんな感じという刷り込みがあるのかもしれない。

残念ながら私の地元から名神高速を走っても、山だらけで都会の喧騒とは無縁なんだけどな…

と思っていたら、なんかアウトロが不穏なのだ。不穏はアイドリッシュセブンの代名詞だが(?)、それまで順調にシティポップを鳴らしていたはずが、急に転調したかと思えばドラムのリズムをいきなり細かく刻み始める。
引っ張っては離すような雰囲気のキーボードの音色。
え?え?ちょっとちょっと?
なんか聴き間違いかと思って何回もアウトロばっかり聴いてしまったが、やっぱり間違ってなかった。

またやられたのか私は…

まあね、
シティポップです、という出オチみたいなので終わるわけないもんな…
甘いムードを泳いでる場合じゃなかったよ…

やっぱり恐るべしアイドリッシュセブン。

追記

このアルバム、10曲で46分なんですって。46分でなんとなく懐かしくなったあなたは、アラフォー以上ですね?😎

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