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夜逃げ中のミッション(モラトリアム期間2)

夜逃げ10日目ぐらいだろうか、父に仕事を手伝えと人生で初めて言われた。これには不謹慎だが胸が踊った。もう弁護士を諦めていいんだなと確認をしたかったぐらいだが怒られそうではあるのでその言葉は飲み込んだ。

正直19歳浪人生ウィークリーマンションに缶詰め10日、刺激に飢えていた。連れて行かれたのは大田区にある倉庫だった、他の会社と共用なのだろうか一つの倉庫の中に簡単な仕切りのような線の中に無造作に色々と置かれている。父の社名が書いてある場所に行くとのブルーシートに覆われた山のようなものが現れた。

父は無造作にブルーシートを引っ張ると、そこには大量のCHANELやPRADA、GUCCIなどのバッグがあった。バッグ以外にもあったが小物ばかりだ。高級品をこんな雑な保管方法でいいのか。父はバッグを10個ほど私も同じぐらいに袋に入れ倉庫を出た。
タクシーで向かった先は新宿NSビルの目の前にあるパチンコ屋だった、卸先らしい。裏口から入り担当者に検品してもらいこれでお仕事完了。少なくみて定価15万それが20個だとして300万。もちろん卸値はもっと低い。こんなことをするより店で店頭販売したほうが利益は大きいはずだ。

何故即金にしたいのか。そんなに現金に困っているのか等を勝手に試行錯誤した、不渡りを出して銀行が凍結されているのか、それとも銀行に行けない又は店に行けない理由があるのではと。聞けばすぐ分かる答えを私は相変わらず聞かずに自分で考える癖がある。聞くと相手の自尊心を傷付けてしまう、特に父であるなら息子の前では最も見せたくない、私も見たくはない、そんな配慮がいつからか身に付いていた。この金はおそらく宿泊代や生活費に消えるのだろう。

長期戦だということを父は私に伝えたかったのだと思う。

その次の日は父のスーツを着せられ委託販売をお願いする飛び込み営業をやらされた。営業トークは父に仕込まれ、父の顔が効く店に私が他人を装って行くという算段だ。私と父は顔が似ている、気付いた人もいたが知らないフリをしろとキツく言われていたのでシラを切った。中には全てを知ってるようにこちらの条件を飲んだ上で大量の委託に応じてくれた店主もいた。銀座にも人情があったのかと若僧ながら感動したが、本当にこれでいいのだろうかと疑問に思えてならないことがあった。

在庫を現金化したいので有れば買取業者や買取店舗に持っていけば効率が良いはずなのだ。この不合理にも言える行動には私も父に意見をした。父はそこでカラクリを教えてくれた。

全部「スーパーコピー品(偽物)」だと。

次回「夜逃げに至る失態」

メンヘラで引きこもり生活困窮者です、生活保護を申請中です。ガスも止めてスポーツジムで最低限の筋トレとお風呂生活をしています。少しでも食費の足しにしたいのが本音です。生恥を重ねるようで情けないのですがお慰みを切にお願いします。