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夢の饗園

夢は目覚める寸前の
ところで
夢そのものを焼き尽くすように
激しく上映する
焦げゆくフィルム

その速度を遅めようと
今まで見た夢を回想する

しかし
夢の速度は止まらない

思ってもみない乱暴な夢や
怪しい夢

今まで上映してきた夢とは
辻褄の合わない内容

まるで客を花咲く庭先に
もてなしてくれた老女が
出してくれた料理を堪能していると
ある瞬間からそれをまだ食べている内に
器を引ったくるように奪い取り
最後には敷物まで無理やり引き剥がして
その場にわたしを取り残して
どこかに行ってしまうかのようだ

夢もわたしを丁寧に案内するのに
業を煮やしたに違いない

燃え上がるフィルムは
破壊のメロディーへ

起きろ!起きろ!

最後はあの花々も舞い上がり
消えてしまう
目覚めるとまるで悪い夢を見たかのような
後味

夢の中で食した物は
跡形もその余韻もない

ふと思う
いつ、何をきっかけで
あの老女の態度が変わったのか
饗することをやめようと思ったのは

わたしが夢の中で
あの桜を眺め続けようとしていたからなのか…

なぜわたしをもてなしたのか
燃え尽きた夢の残骸を拾い集める間もなく

また一日が始まる