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跳び箱"何段でやるか"問題【「高さ」よりも「美しさ」】


小学校教諭の、smyle(スまイル)です。
今年度は、6年生の担任をしています。

体育で「跳び箱運動」を行いました。
その跳び箱運動について、
取り組んだことや思うことについて述べてみます。







跳び箱運動×表現運動


まずは、「跳び箱運動×表現運動」実践です。

坂本良晶先生がnoteやXなどで発信されている
「〇〇×表現運動」にチャレンジしてみました。


上記の坂本先生のnoteにもあるように、
活動のゴールに「表現運動」を据えることで
子どもたちの目的意識が大きく変わってきます。

今回のゴールは
「1分間の音楽に合わせて、チームで跳び箱の連続技を映像化する」
としました。

また「完成した映像は、お家の方に発信するよ」
ということで相手意識も持たせました。


単元構成ですが、
単元前半は、「できるを増やす、技を磨く」時間、
単元後半は、「表現の構成を考え、仕上げる」時間としました。

今回の表現運動には
「全員が①開脚跳び系、②閉脚跳び系、③台上前転系の技を披露する」
という条件を付けましたので、
単元前半では、
開脚跳び、閉脚跳び、台上前転のポイントを示しながら、
自分の技能に合った場で
できる技を増やし、技能を高める授業展開としました。


この単元前半における
個別最適な場づくり、そしてスモールステップでの指導は、
三好真史先生の書籍を参考にさせていただきました。

三好先生には、器械運動に関してのみならず
様々な書籍・セミナー・voicyなどでたくさん学ばせていただいています。


「ゴールの表現運動のため」の技能獲得・向上なので
ただただ己と向き合うだけの練習よりも目的意識がありますし、
何より、「チームでの演技」がゴールなので
「仲間の技能向上」に寄与しようとする姿勢が、たくさん見られました。

例えば、
上手く跳べない仲間にアドバイスしたり、技の補助をしたり、
怖がっている仲間のためにマットを敷いてみたり、段数を下げてあげたり、
互いにビデオを撮り合って学び合ったり。
自然と学び合いが促進されます。

また、後半の演技を仕上げる段階では、
自分達が決めたお気に入りの音楽に合わせ、
絶え間なく、何度も何度も
ポンポン跳び続ける姿がありました。

ただ「個人の技能向上」という目的しかなかったら、
こんなにエンドレスに
繰り返し繰り返し跳び続けようと、彼らは思えていたでしょうか。

チームでの演技だから、
映像に残すというゴールがあるから、
より「美しい作品にしよう」という向上心が生まれたのだと思います。


子どもたちはモチベーションを高く保ちながら、
単元を駆け抜けることができました。




「器械運動×表現運動」は他にも


跳び箱だけでなく、
以前は「マット運動」と「鉄棒」でも
「器械運動×表現運動」実践を行いました。

跳び箱、マット、鉄棒とやってきましたが、
体育授業の参加児童数、体育用具の充実度などによって
取り組み易さが変わってきそうです。

一例として、私の所属校の実態と
そこでの実践を振り返ってみます。


①「マット運動」が一番やりやすかった。

1チームにつきマットが2枚もあれば、
十分、様々なバリエーションの演技構成を考えることができます。

場づくりも、マットをずらすだけなので容易です。
2枚のマットを長く繋げてみたり、正方形のように敷いてみたり、
壁倒立のために壁際に寄せてみたり。
所属校ではマットの枚数は十分にあったので
マットのやりくりに困ることもなく、
それぞれの班が十分に演技構成を練り、練習を重ねることができました。



②跳び箱や鉄棒は台数が少なく表現が限られた。

私のところは2学級での合同体育なので、
一度に50人超の子どもで跳び箱をすることになります。
50人超に対して、跳び箱の数は10台程度。
さらに踏切板・ロイター板は、合わせても8個。
圧倒的に足りません。

チーム演技を練習するにあたり、1チームに割り当てられる跳び箱は1台。
ゆずり合ったり共有したりしても、せいぜい2台。
これでは、なかなかダイナミックな演技構成は生まれにくいです。

そもそも、ロイター板の数が足りない。
ウチの学校の場合、ロイター板が5個で、踏切板が3個。
踏切板も無いよりは良いですが、反発がないので
苦手な子の補助にはほとんどなりません。
ロイター板を置くだけで、跳べる子もいます。
買い足したい。でも予算が足りない。


鉄棒も、圧倒的に数が足りません。
50人超に9台しかないので、一度にやろうとすると行列になり
表現運動どころか、そもそもの運動量さえ十分に確保できません。
仕方ないので、いくつかのグループに分け、
同時並行で縄跳び運動をさせるなどしています。
つまり、鉄棒の活動時間は長くて10数分程度。
表現運動をしうる状況にないのです。



上記の実態ですと、
数人のグループに分けて、グループごとに演技構成を考えて、
という計画では難しさがありました。

さて、代案はどうしよう。
例えば、もっと1グループの人数を増やし、
1グループあたりの割り当て台数を増やそうか…
すると、少人数での表現でなく
大人数でのシンクロ跳び箱的なのもアリか…


これからもいろいろと試行錯誤し、
より良いアイデアを模索し続けたいと思います。




跳び箱って「何段」が適切なのですか。



ここまで跳び箱実践を紹介してきましたが、
実は、今回の投稿で一番言いたかった(聞きたかった)ことは
これです。

跳び箱って「何段」が適切な高さなのでしょう。


学習指導要領には
段数の指定があるわけではありません。

ですから、おそらく先生方は
自らの経験則や目の前の子どもの様子などから
段数を判断されているのだと思います。


私自身が受けてきた教育、
私がこれまでの教員人生で見聞きしてきた体育授業では、
「高い段数を跳べる=技能が高い」
「跳べる子はどんどん高い段数にチャレンジする」
というものばかりでした。
そこに違和感は感じてきませんでしたし、
そういうものだと思ってきました。


しかし、
上述の三好真史先生の著書や発信によると、
「高すぎる跳び箱は危険」である。

体育授業において、
圧倒的にケガの発生率が高いのは、跳び箱。

文部科学省 令和3年度学校安全部会(第4回)配布資料 【資料4】より抜粋


段数を上げるということは、
それに伴って助走スピードが上がり、衝突や落下のリスクも高まり、
受けるダメージも大きくなり、ケガのリスクが非常に高くなるのです。


三好先生によると、
段数は「4段」までで良いとのこと。
(高学年は+1段してもよい)

また、三好先生のつくる場は
体育館にコの字型に配した跳び箱に、
壁側から助走して跳ぶような形になっています。
(イメージが難しい人は、三好先生の本を読もう!)
これは、長い助走を敢えて取れないようにして、
助走スピードを上げすぎないための配慮です。


どんな楽しい活動も、ケガをしたら台無しです。

ちなみに今年度、他の学年ですが、
跳び箱授業中に骨折した子どもが出てしまいました。
(それは決して段数が高かったとかではなく、
 準備運動もしたにもかかわらず、着手の瞬間、手首が骨折。)
備えてもケガのリスクがある種目なのです。


じゃあ、そもそも跳び箱をなぜ学校授業でやらせるの!?
という話にもなりそうです。
同僚の先生は、知り合いの医者の方に
「学校って、まだ跳び箱なんてさせているの!?(危ないのに)」
と言われたそうです。

私も、跳び箱運動に意義はあるにせよ
必ずしも跳び箱をやらせる必要はない、とは思いますが、
現状、やらせるのであれば
安全を最優先に考えていきたい。
安全を最低限担保したうえで、取り組ませたい。

そのためには、三好先生が提唱するように
跳び箱の段数は4段程度でいいと私も思います。



「高さ」ではない。「美しさ」である。


もとより、跳び箱という種目は
跳んだ段の高さを競うものではなく、その技の美しさを目指すものです。

ですから、
「踏み切り」「着手」「空中姿勢」「着地」の一連の動きを
「美しく」することを目指すべきなのです。
オリンピックの体操競技も、美しさを採点し、競っています。


そのはずなのに、
体育授業の跳び箱はなぜか高さを追求しているし、
多くの先生方の認識も、同様なのです。

今まで出会った先生方は、そして数年前までの私も、
中・高学年くらいになると、得意な子なんかには
小学校に置いてある跳び箱のMAX段数である
「8段」なんて高さに挑戦させようとする。

子どもたちも、そういう跳び箱授業をやってきているから
私が「4段までだよ」と伝えると
「なんでダメなんですか!?」となったりする。

もちろん、跳び箱運動のはじめには、
跳び箱運動に取り組むことの意義や、
「美しさ」を追求することの価値を伝えたり、
上手い子用のミッションを与えたりしているので、
(着地姿勢の追求、スムーズな技の繋ぎ・連続技、
 赤玉や調節箱などを配置した難しい条件下でのクリア、など)
基本的には、納得して取り組んでくれてはいるのですが、
それでも子どもたちとしては
何が正しいのかが分からず迷ってしまいますよね。


私なりに、他の先生方にも
跳び箱は「高さ」よりも「美しさ」が大切であることは
伝えたりはしているのですが、
今までその先生が積み重ねて築いてきた価値観を変えるほどの
根拠をもって伝えることができていません。


どなたか、根拠となるような文献やデータなどを
ご存じの方はいるでしょうか。

そもそも、これをお読みくださった皆様は
どうお考えなのでしょうか。

お聞きしてみたいです。

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