見出し画像

男性教員が1年間の育休をとった話【かけがえのない豊かな時間】


小学校教諭のsmyle(スまイル)です。
今年度は6年生を担任しています。


私には1人息子がいます。

息子が小さい頃、
1年間の育児休業を取っていました。

現在所属させていただいている教育コミュニティ「EDUBASE」で、
最近、産休・育休の話題が出ていたので、
自身の経験を書こうと思い立ちました。

これから育児休業を取ろうと思っている男性教員の
後押しになれば嬉しいです。






なぜ育児休業をとったのか


私が育休をとったのは、
息子が1歳になろうかというタイミングでした。

妻が出産に伴って産休・育休に入り、
もうすぐ生まれて1年になろうかというところで
妻が職場復帰。
替わって、私が育休に入ることを検討しました。

その際、考えていた育休期間は「2年間」。
育休は子どもが3歳になるまで取れるので、
要は取れる期間MAXまで取ろうと思いました。

なぜ、そんなにも長い期間、育休を取りたかったのか。
それはもちろん、
子どもが育っていく姿をなるべく近くで見ていたかったから。
そのかけがえのない時間はあとから取り戻せないから。
それ以外ありません。

育休中は給料の代わりに「育児休業手当金」をいただけますが
もちろん給料よりは少ないです。
しかも育児休業2年目は、手当金も出ません。
私の収入はゼロになり、
妻が働いているとはいえ、世帯収入は大きく下がります。

でも、いいのです。
綺麗事では全くなく、
お金より子どもと過ごす時間の方が間違いなく大事です。
育休は、仕事を一休みして、育児に注力できる大チャンス。
そこに迷いは一切ありませんでした。


そしてもう一つの理由。
それは、
教員という仕事から一旦離れたかった。
週末も、夏休みなど長期休業中も、常に頭の中に
「休み明けに何をするか」を考え続けてしまっている。
「休み」のはずなのに、
途切れず仕事のことを考え続けて頭が休まる暇がない。
それが定年まで続くのか…と
正直、ひと休みしたかったという思いがありました。


育休をとろうと思ったのは、
上に挙げたどちらかの理由でなく、
どちらも、です。


育児休業「まで」のアプローチ


育休を取るとなると、
当然校内人事に大きな影響が出ます。
なので、なるべく早めに校長先生にお伝えしました。
「来年度の4月より、育児休業を取らせていただきたいです。」

その当時、私の知る限りですが
男性教員で育休を取っている方は、周りに一人もいませんでした。
同僚の先生に聞いても、
「遠い知り合いに、一人いたかも…」くらい。


いずれにせよ、
非常にレアケースだったことは間違いありません。

その事実を聞いたとき、私は思いました。
だからこそ、育休を取ろうと。
私がファーストペンギンになって、
男性教員が育休をとることが、当たり前の空気を作ろう。


校長先生への直談判、その反応は
「本当にいいのか?」的なニュアンスでした。
直接的な言い方はしませんでしたが、
"今後のキャリアに響くぞ"的な。
私は思いました。
(あー、やっぱりそんなのあるんだな。)

これは、その後の育休中に出会った
元同業者の「パパ友」さんに聞いたのですが、
ある先生が育休を取りたいとお願いしに行ったところ、
管理職から圧が掛かり、なんやかんやで、
最終的にはその先生は退職してしまった、なんて話を聴きました。
(お会いしたわけではないので、真偽のほどは不明ですが)
今から数年前ですが、未だにそんなことがあるのか、と
思った記憶があります。

ただ私は、
この仕事における出世・キャリアにあまり興味がないので、
意に介さず、育休をお願いしました。

すると、
次に校長室で話したときには
打って変わって比較的ポジティブな反応で、
既に教育委員会にも掛け合ってくれていました。

前回と今回の間に何があったのか、
どんな心境の変化があったか分かりませんが…
最終的には承諾してくださいました。
しかも、数か月でなく「2年間」というお願いも
快く受け止めてくださいました。


ということで、無事に
「育休生活」に入れることになりました。

悩ましかったのが
学校の子どもたちに育休のことをどう伝えるか、という点で
女性の場合はお腹が大きくなったりする分かりやすい過程があるので
「そろそろお休みに入るんだな」と共通認識がしやすいですが、
男性の場合、しかも年度初めの4月から育休に入る場合、
果たしてどう伝えるべきなのか。
そもそも誰に伝えるのか。伝えるべき人はいるのか。

結果的には、
3月まで受け持っていたクラスの子には特に何も伝えず、
(まあ、6年生だったので、卒業して来年度は居ないというのもあり)
次の年度初め、4月の始業式の時に全校児童に明かされ、
私は「いつの間にか居なくなった」状態でした。
まあ、そんなもんですかね。



育児休業「中」の過ごし方


さあ、満を持して始まった
父と子の育休生活。

ひと言で言うと、とても豊かな時間でした。


寝かしつける時間も、おむつを替える時間も、
離乳食を毎日作って食べさせる時間も、
どれも愛おしい時間でした。
(もちろん大変さもありましたが、大変ささえ愛おしい。)

実は、育休に入ったタイミングで
妻の仕事の都合で、田舎の方に引っ越しました。

妻が仕事をしている間、
息子を抱っこしながら、ゆっくりと近所を散歩します。
ふと、近くの小学校の横を通ると、そこには学校の日常がある。
すぐそこにあるのに、まるで別の世界のように感じました。

もしかすると、
人によっては「世の中から取り残されている感」を
感じる人もいるかもしれません。
でも私にとっては、別の世界で生きている感覚は
この距離感はとても心地いいものでした。

「どうしよう、仕事から離れて大丈夫かな…」
なんて焦りなどは、全くありません。
むしろ私は、それを望んでいたのですから。
ただただ豊かな時間を、全身に浴びていました。


私が育休を取って半年後、
妻が、諸般の事情で仕事を辞めることになりました。

当初「2年間」で頂いていた育休は、「1年間」に短縮することに。
育休の時間は短くはなったのだけれど、
でも、つまりはそこから半年間は
私と妻と子と、3人でゆったり過ごす時間になったのです。

本当に本当に豊かな時間でした。
だってこんな時間はもう2度と手に入らないのですから。
かけがえのない時間を、3人で、ゆっくりと味わうことができました。



育児休業「から」の復帰とその課題


そして1年後、
職場への復帰を迎えることになります。

育休中は本当に、
仕事のことはほとんど考えないで過ごしました。
良い意味で、「それどころじゃない」からです。

復帰が近づくにつれて、
また仕事に順応できるかな…なんて不安はよぎって来たけれども
けれどバタバタと復帰に備えて学ぶよりも
目の前の我が子と、この瞬間を全力で過ごす方が
結局はより大きな「学び」になる気がしたんですよね。

子育て2人態勢で、少し生まれていたゆとりには、
読み聞かせのボランティアに挑戦したり、
仕事には直接つながらない、カルチャースクールに通ったりしていました。

仕事だけの人間・人生にならないように。
そして仕事以外のことで視野を広げることは、
きっと仕事にも還元されるであろうと信じて。



もう少しで育休が明けるという頃、
校長先生から電話がかかってきました。
(育休の間に、新しい校長先生に替わっています)

電話の内容は、復帰後の校務分掌についてでした。
その電話口で打診されたのは、
・飛び込みの6年生担任
・生徒指導主任(やったことない)
・その他諸々

でした。


今思えば、なかなかの人事です。
今思えば、明らかに他の先生方がやりたがらなかった分掌が
回ってきた感がプンプンです。
(実際、そんな感じだったみたいです。)

電話口でその打診を受けた私は、こう答えました。
「生徒指導主任をやったことがないのですが、私に務まるでしょうか…」

話は逸れますが、
この、異動してきた方やましてや育休明けの人に
いきなり重めの分掌を持たせてしまうのって、
あるあるなんでしょうか。
正直、私の勤務校や自治体では蔓延っていて、
ある年異動した先生方が、異動先に行ってみたら
全員6年生担任だった(6年生担任は、一般的に重いとされている)
なんていう笑えない話も聞きました。
かくいう私自身も、今の勤務校に異動してきたとき、
飛び込みの6年生でした。(しかも過去に荒れ気味だった子どもたち)

それって、ハッキリ言って良くないですよね。
大変な分掌を持ちたくないのは分かるけれども、
外から来た人に優しくないのって、
めぐり巡って自分たちの首を絞める気がするのですけれども。
こんなことで、育休を取ろうとしている方が
「それならやっぱり育休とるのやめようかな…」となってしまっては
元も子もないですから!

この流れ、絶対やめた方がいいです。


ただし。

私はと言うと、上記の打診を受けたとき
6年生担任は何回か経験していたので
「うわっ」とは全く思いませんでした。
「6年生か。よし!」と気合が入ったくらいのもんです。

また、初めての生徒指導主任のご指名についても、
謙遜する意味で「私に務まるでしょうか…」
と言いましたが、それ以上に
自分を大役に指名していただけたことへの
誇らしさを感じていました。

誰にでも任せられる分掌ではないですからね。
きっと、内実は誰もやりたがる人ややれる方が居なくて
それで白羽の矢が立った面はあると思うのですが、
でもその矢が立てられたのが自分であったことに
「よーし、やってやろう!」と心から思えたことも事実です。
なので、自信はなかったけれど、迷いはあまりありませんでした。
育休のおかげで、心がしっかり充電できていたことも
あったかもしれません。

どうせなら、やらされたではなく
任せてもらえたというマインドで仕事をしていたい、
と思う私です。
もちろんそう思える為には、
心のゆとりが必要なのだろうな、とも。



育児休業とろうぜ!



育休を取った経験がある、ということは、
男性教員にとって大きな「強み」になると思います。

これは、社会としては良いことではないのですが、
私が育休を取ったことを周りの人が知ると、
「すごいね!」「えらいね!」などと言ってくださいます。
そう言われるということは、男性の育休は
まだまだ「当たり前」ではないということです。

でも、せっかくそう言ってくださる環境なら、
そのことを強みにすればいいと思います。

育休を経たからこそ学んだことを、仕事に生かせばいい。
子育てに携わらないと分からないこと、たくさんありますからね。
自分に子どもができてから、
学校の子どもたちに対する考え方・アプローチが
大きく変わりました。

他の男性教員が、充分に獲得できていない経験ができたことは、
本当に有難いことです。

「育休をとった」という事実で、
例えばそのことで保護者の方から少し信頼や安心感を得られたり、
例えば、懇談会の場などで子育ての話がしやすかったり、
そうであるに越したことはないのです。
プラスのイメージがあるのなら、それを生かせばいいのです。



私が、育休をとった2年ほど後、
同僚の男性の先生が、育休を取りました。

期間としては数か月でしたが、その先生は
「先生のおかげで、育休がとりやすかったです!」
と言ってくださいました。

事前に相談を受けて、私なりに回答することもできましたし、
誰かのために良い前例を作れたことは、
とても喜ばしいことです。



育児休業がとりやすい社会に



昨今、ますます教師不足が叫ばれています。
私の勤務校も同様で、もはや自転車操業状態。
誰かが倒れるんじゃないかという、心配な状況です。

そんな中で、
めでたくお子さんを授かり育休をとる方がいるのですが、
とても申し訳なさそうにしているのです。
何より喜ばしいことであるのに。

絶対そうであってはいけません。
子どもを授かること、育てること以上に
大切なことなどないのですから。

学校の子どもはもちろん大切だけれど、
自分の子ども、自分の人生が
いちばん大切ですから。

申し訳なさなど抱かせずに快く送り出したいし、
当人も気持ちよくお休みに入れる環境にしたい。


あと、既に育休に入られている先生が
手続きや学校行事等でたまに学校にいらっしゃるのですが、
その先生、職場に顔を出すたびに
お菓子を持ってきてくださるのです。

毎回となると結構、経済的な負担も大きいはず。
そのお菓子、必要なのでしょうか。
「育休いただいていて、すみません」的なニュアンスのものなら
ないほうがいい。

そもそも育休中の身で、小さいお子さんがいる中で
毎回買いに行くのも大変ではないですか。
本人の気持ちだから良い?
でも、そうしなければいけない空気が生まれてしまったら、
そのことで苦しむ方もいるかもしれない…

私はなくてもいいかなと思うのですが、皆さんはどうなのでしょう。



いずれにせよ、
男性も女性も、子育てのために
気兼ねなくお休みをとれる社会になるといいなあ。

子どもたちと直接関わる仕事であり、
子どもたちの目の前に立ち
彼らにとってのロールモデルになり得るこの仕事だからこそ、
気兼ねなく産休・育休が取れる教員世界に
していけたらと思います。

この記事が参加している募集

これからの家族のかたち

育児日記

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?