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記憶の中の物語、記憶のような物語

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随想、或いは、私小説と呼ぶのが一番近いかもしれません。 でも出来れば、物語と呼びたい。
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記事一覧

淡い憧れだけで

 中古の小さな鍵盤は、四千円もしなかった。  ハノンの楽譜は千円ちょっと。表紙には「大人…

清水はこべ
1か月前
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父の一周忌に寄せて 『銀雨の星 〜♭4 self cover 2023 〜』

「この歌、何だか、お父さんを思い出した」  私が作詞で参加した、なおがれさんとの共作オリ…

清水はこべ
8か月前
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魔法使いになりたい【30日間毎日note:その5】

料理は苦手です。 苦手すぎて、月に一度、料理するかしないか、というところ……。つまり、ほ…

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史上最速の桜【30日間毎日note:その2】

今年の開花は、観測史上最速だったそうだ。例年と比較すると、2週間も早い。 花を待ちわびて…

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今更のご挨拶 〜清水はこべのプロフィール〜

そう言えば、ご挨拶していませんでしたね。 おはようございます。こんにちは。こんばんは。ご…

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紫陽花と中学生

自宅近くに、こんなに紫陽花が沢山咲いているなんて、知らなかった。 ---★--- 在宅勤務が始…

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木曜日の陽射し

先週の木曜日、突然、春が来た。 ---★--- 家を出た途端に、あ、前日までと、陽射しが明らかに違う、と思った。空が随分高い。 水曜日までは、冬だったように思う。厚手のコートにくるまって、通勤路を、背中を丸めて歩いていた。 陽射しが違うと、近所の家々の庭木の枝の色も、公園のブランコの色も、違って見える。 風はまだ冷たい。厚手のコートでまだ丁度いい。 それでも、いつもの通勤路の、前日までよりも軽やかな色彩に、背筋を伸ばした。 ---★--- 昨今のニュースの報道

歌って演じる書き手

推敲せずに、ただただ文章を連ねると、nanaという音楽アプリの事ばかり書いてしまう。今、いち…

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信じられないままでいてくれてありがとう

「はこ、これあげる。最近、はこが明るくなって、嬉しいの」  学級委員の夢ちゃんから手渡さ…

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ふたつの町

 五月は、通勤が楽しい。  新緑の中だと、バスを待つのが苦ではない。バスに乗り込んでから…

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歌と祈り――そうじゅもりおさんと、ティル・ナ・ノーグの事

 歌姫は、杖を突きながら、ゆっくりとステージに立った。  長いスカートのワンピースで、華…

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噴水と鐘の木、そして、ソフトクリーム

 ニュースの見出しに、懐かしい場所の名前を見掛けた。幼い頃を過ごした町にあった、象徴的な…

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呑んだり呑まなかったりする人の話

「え? 清水さん、お酒呑むんですか?」  日本酒を頼んだら、同僚に驚かれた。無理もない。…

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流星群へ宛てた手紙

 元気ですか?  今、どんな景色を見ていますか?  そこからは、私が見えるかな。どんな風に見えているのかな。頼りなくて、危なっかしいかもね。はらはらさせているかな。笑われちゃうかな。  頼りなくてごめんね。でも、君は知ってるね。私が君を想ってる事。  一時期、誰よりも側に居たから。  ---★---  私からは、君が見えない。  それどころか、顔も知らない。声も。どんな風に笑うのかも、どんな風に泣くのかも。何が好きなのかも。何をしてみたかったのかも。  私に似