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カレー回文ストーリー 権太「これ害がない長いカレー粉団子」(ごんたこれがいがないながいかれこだんご)

これはカレー回文、
権太「これ害がない長いカレー粉団子」(ごんたこれがいがないながいかれこだんご)
にまつわるお話です。 

むかしむかし、都市「アブラノタウン」の中心部、小高い丘の上には「権太のカレー屋敷」が建っていた。この店の建物は白い壁と赤い瓦屋根、アンティークな窓が特徴的で、まるで歴史の息づく古い洋館のようだった。しかし、店の前には毎日長い行列ができており、都市の間では非常に人気のスポットとなっていた。

その理由は、店の名物料理「長いカレー粉団子」にあった。この団子は、権太の家系が代々守り続けてきた秘伝のレシピで作られている。料理研究家としても知られる権太は、この団子を更に進化させる研究を日々続けていた。

ある日の昼下がり、店内は賑やかな声で溢れていた。テーブル席で団子を食べるお客さんたちの表情は、一様に幸せそうだった。若者たちは、団子を食べると瞳を輝かせ、夢見るような表情で「この感じ…まるで宇宙を旅しているようだ」と囁いていた。疲れている様子のサラリーマンも、団子を口にした瞬間、顔色が良くなり、リラックスした様子で遠くを見つめながら、全身の力を抜いて席に沈んでいた。

店の隅のテーブルには、中年の夫婦が座っていた。女性は団子を食べながら、「この陶酔感、まるで若い頃の初恋を思い出すわ」と目を輝かせて夫に話していた。

権太は厨房からその様子を見ながら、満足げに微笑んでいた。
彼の心の中には、もっと多くの人にこの団子の素晴らしさを知ってもらいたいという強い思いがあった。

夕方、都市の街並みがオレンジ色に染まる中、「権太のカレー屋敷」のシャッターがゆっくりと下りてきて閉店の時間がやってきた。

「ご利用ありがとうございました。次回も心からお待ちしております」と権太は少し甘めの声でお客さんたちに告げた。
客たちは「長すぎて全部食べられなかったよ。取り置きできますか?次回も必ず来ますので...」と、ぼんやりとした目で答え、店を後にした。中には、子供たちが「権太さん、また長い団子が食べたい…長くて、ずっと食べていられる」と瞳をキラキラさせながら言っている姿もあった。大人も子どもも中毒性のある「長いカレー粉団子」に魅了されていた。

閉店後の店内は、照明がやわらかく輝き、微かな煙とカレーの濃厚な香りで包まれていた。スタッフたちが次の日の準備を始めた。その中で、権太は黒いエプロンを前に結んで店のカウンターに座り、一日の収益を計算していた。

しかし、その平和な時間は突如として打ち破られる。

店のガラス窓に映る大きな車のヘッドライトが店内に鮮烈な光を投げかけた。その車から降りてきたのは、都市で大きな影響力を持つ大手食品企業「スパイシーインク」の代表取締役、ミスター・スパイシーだった。彼は中年の風格を感じさせる立派な体格の持ち主で、深い皺に刻まれた瞳は鋭い輝きを放っていた。彼の髪は逆立てられ、その白髪は権力の象徴とも言えるものだった。彼の身の回りには、ダークスーツに身を包んだ筋骨隆々としたボディーガードたちがついており、その存在だけで周りの空気を圧迫していた。ミスター・スパイシーが歩く先々で、人々は無意識に道を譲っていた。

「権太君、こんばんは。この店の名物、"長いカレー粉団子"を先日食べたんだ。」ミスター・スパイシーが低い声で話しかけてきた。「普通の団子とは違って、食べると夢のような気分になる。それは、終わりが見えない旅をしているようだったよ。食べてる途中で、いつ終わるのかと思ってね。まるで人生そのもののように長い団子だね。」

権太は少し苦笑しながら、手をこすり合わせた。「ありがとうございます、ミスター・スパイシー。確かにうちの団子は長いです。私の家族が代々伝えてきた秘伝のレシピを使用しています。なにが入っているのかは秘密ですが、端から食べると徐々に効いてくるんです。」

ミスター・スパイシーはクスリと笑い、「実はね、君の団子のレシピをうちの会社で使いたいんだ。」

権太は微笑みながら答えた。「申し訳ありませんが、それは家族だけの秘密です。でも、団子の長さの秘密だけなら教えられますよ。」

ミスター・スパイシーは興味津々で、、「それはどういうことだ?」と尋ねた。

権太はにっこりと笑い、「とてもシンプルです。長くするだけですから。」と答えた。

ミスター・スパイシーは頷き、「君はユニークだね。次回はもう少し長い団子を期待しているよ。」と言葉を選びつつ、店のドアを開けて外へと足を運んだ。

数日後、権太は店を開ける前に、いつものように朝のニュースをチェックしていた。ところが、その日のニュースは何とも信じがたい内容だった。「都市の名店、権太の「長いカレー粉団子」に健康上の問題が?」という見出しに、彼の顔色は一変した。ニュースの中では、一部の消費者が「長いカレー粉団子」を食べた後、体調不良を訴えているという内容が報じられていた。

権太は困惑しながらも、そのニュースの出所を確認したところ、それは都市で大きな影響力を持つメディア関連企業、一部には「スパイシーインク」との関連性が囁かれている局からのものだった。権太は直感的に、ミスター・スパイシーの仕業だと感じた。

店内では、スタッフたちも驚きと不安の表情を浮かべていた。店の評判を守るためにも、このデマを速やかに打破する必要があった。権太はスタッフたちを集め、「私たちは何も悪いことはしていない。このデマを打破するため、真実を伝える戦略を練る必要がある。」と言った。

スタッフの中には、広報エキスパートであるハナコがおり、彼女は「私たちの商品には何の問題もないことを示すため、第三者機関での検査を公開しましょう。そして、結果を公表する大々的なイベントを開催するのはどうでしょうか?」と提案した。

権太はその提案に賛同し、都市の有名な研究所と連携して、公開の場で「長いカレー粉団子」の安全性を証明することを決意した。実験の日、多くの報道陣や市民が集まった。権太は自ら団子を食べ、その効果を体感することになった。

彼が団子を食べた瞬間、会場は一瞬の静寂に包まれた。皆が息をのんで権太の様子を見守っていた。権太の表情は徐々に変化し、彼の瞳は遠くを見つめるようになった。突如として、目の前の景色が変わり、権太は異次元の世界「粉団子界」へと引き込まれてしまった。

この異次元の世界は、彼が知っているどの景色とも違った。空には巨大な団子が浮かび、地面はカレーの流れる川でできていた。そして、彼の前には美しい女性が現れた。彼女はカリーナと名乗り、この世界の精霊であることを明かした。

カリーナは権太に近づき、彼の手に触れた。「権太さん、あなたはこの「粉団子界」の選ばれし者です。この世界は団子の魂たちで形成されており、彼らはあなたの作った団子たちの魂なのです。」とカリーナは言った。

権太は目の前の情景に驚きを隠せない。「なぜ、私がここに?そして、この世界の目的は何ですか?」
粉団子界に限らず、世界の目的とは一体なんなのだろうか。真面目な権太はいつもこんな風に考えがちだ。

カリーナは権太の質問には答えず、おもむろに指先で、空中に何かを描き始めた。その動きは何とも言えず魅力的で、権太はその動きから目を離すことができなかった。彼女の指が描いた軌跡から、突如として巨大な団子が現れた。しかも、その団子は浮遊していて、カリーナの指先で操られているかのようだった。

「これは…?」権太が驚く中、カリーナは団子を口に入れ、目を閉じた。数秒後、彼女の髪の色が虹色に変わり、体全体が透明になっていった。

「権太さん、これが本当の「粉団子界」の力。団子の魂と一体になることで、異なる次元を自由に行き来することができます。」とカリーナが言った。

その瞬間、彼らの足元や視界がゆっくりと変わり始め、目の前の景色が一変した。突如、彼らは暖かくて濃厚な香りに包まれるカレーの海の上に浮かぶ小さな島に立っていた。このカレーの海は、金色に輝くカレーの波がゆっくりと打ち寄せる様子が見え、その香ばしい香りが空気中に広がっていた。島の中央には、巨大な祭壇が設置されており、その上には太陽のように輝く金色の団子が神聖に置かれていた。祭壇の周りでは、さまざまな形や色をした団子の魂たちが、陽気な音楽に合わせて楽しげに踊っていた。

「ここは…?」権太が不安げな声で尋ねると、カリーナは彼の手を引きながら目を輝かせ、「これは団子の魂たちが集まる謎の場所。名前はまだないんです。」と答えた。

権太が驚きの声を上げる中、祭壇の上の団子が突如、輝き始めた。その光はだんだん強くなり、彼の視界を完全に覆いつくした。権太の心臓は激しく打ち始め、不安と驚きの感情が彼の中で渦巻いていた。恐怖に駆られて、彼は無意識のうちに目を強く閉じてしまったが、カリーナは何事もなかったかのように冷静で落ち着いている様子だった。

突然、その光が消え、二人は異なる場所に立っていた。彼らの足元はふわふわとした雲で、周囲は青く透明な空に囲まれていた。遠くには巨大な水晶のような山が連なり、その山々からはさまざまな色の光が放たれていた。

「ここは…どこ?」驚きの権太に、カリーナは深い眼差しで答えた。「これは、団子の魂たちが成長し、熟成される場所。あなたが毎日作っている団子たちは、ここで時間を超えて成熟し、その後現世に生まれてくるのです。この場所は団子の歴史や記憶、そして未来の可能性が交錯する、時空を超えた聖地とも言えます。」

その後、二人はこの不思議な世界を探検し始めた。まず、彼らは水晶のような山へと足を運びました。山の中腹には、透明な液体が流れる滝があり、その液体からは甘い香りが漂っていた。カリーナは手を液体に浸け、「これは、団子の甘さの元。この液体が団子に甘みを与えているんです。」と説明した。

次に、彼らは雲の上を歩きながら、虹のような光の橋を渡っていくつかの島へと向かった。各島には異なる色と形の果実が生えており、それぞれが団子の違った風味の源となっていた。権太は、赤い果実を一つ摘んで口に含むと、熟れたイチゴのような味が広がった。

さらに深く、彼らは夜の森へと足を進めた。星のように光る花々が、森の中を幻想的な雰囲気にしていた。カリーナは一輪の花を摘んで権太に見せ、「これは、団子が持つ夢のような興奮を生む成分。」と微笑んで言った。

この不思議な世界での探検は数日続き、二人は団子の元素となるさまざまな光や成分を見つける冒険を続けた。この旅を通じて、権太は何世代にも渡って語り継がれてきた「長いカレー粉団子」の秘密がわかったような気がした。彼の心は感謝と共に満たされ、新たな希望に胸を膨らませて、元の世界へと戻る準備を始めた。


すると、突然、巨大な鳥のような生物が彼らの前に現れ、その羽音で周囲がざわつき始めた。権太は驚きと恐怖で固まってしまうが、カリーナは動じることなく、「これは団子の守護者、モチノトリ。彼に導かれることで、元の世界へ戻ることができるのです。」と語り始めた。

モチノトリの羽音がさらに高まり、強烈な光に包まれる中、権太は突如、その場所から引き剥がされるような感覚を覚えた。

目を開けると、権太は先ほどの研究所の実験の会場に立っていた。周囲は静寂に包まれ、多くの報道陣や市民が彼の様子を見守っていた。権太の表情は徐々に変化し、彼は深い呼吸をして、再びこの現実の世界に戻ってきたことを実感した。

権太はその場の雰囲気に包まれ、数分の間、深く考え込んでいたように見えた。そして、数分後、彼は再び視線を報道陣と市民に向け、微笑みかけた。

「最高だよこの団子。ほんと最高。口にした瞬間、まるで心が暖かな風に包まれるような安らぎを感じた。それと同時に、頭の中には色とりどりの光が舞い、まるで遠い異次元の世界を旅しているかのような感じなんだ。僕は何世代にも渡って語り継がれてきた長いカレー粉団子の伝説を見てきたよ。そして、何よりも、長い日々の疲れや痛みが、その一口で吹き飛んでしまった。この団子が何らかの害があるということは考えられない。ぼくは、この団子を通じて、今まで足りなかった言葉や感情を手に入れることができた。長いカレー粉団子万歳!!!」

権太の言葉に、会場内は一瞬の驚きの後、暖かい拍手が湧き起こった。
人々は彼の誠実さや団子への愛情を感じ取り、さらなる信頼を寄せるようになった。

権太の店には、以前以上の顧客が訪れるようになり、団子に対する信頼は都市中に広がった。
テレビCMでは、権太が頻繁に登場し、「これ害がない長いカレー粉団子」と微笑みかけていた。

ミスター・スパイシーは数日後、権太の店の前に姿を現した。彼の表情は以前の傲慢さが消え、深い後悔と謝罪の色が浮かんでいた。店内に入り、権太の前にひざをつき、頭を垂れた。「私がしたことは許されないものだった。申し訳なかった。」彼の声は震えていた。

権太は一瞬、驚きの表情を見せたが、すぐに温かい笑顔に変わった。「過去のことは忘れてください。お互いに、前を向いて歩んでいきましょう。」

和解したミスター・スパイシーと権太は、共同で新しいプロジェクトを始めることを決意した。それは、都市で一番長いカレー粉団子を作るという壮大な挑戦だった。二人はそれぞれの専門知識を活かし、合同で研究を開始。ミスター・スパイシーの持っているヒマラヤの貴重なスパイスと、権太の伝統的な団子の技術が組み合わさり、驚くべき団子の誕生が期待された。

数ヶ月の試行錯誤の末、ついに彼らは目標を達成した。その団子の長さは驚異の1メートルにも及んだ。しかも、その団子はただ長いだけでなく、前代未聞の美味しさを持っていた。

人々はこの長い団子を食べることで、時間がゆっくりと進むような感覚を得た。日常の忙しさやストレスから解放されるかのような、時間を忘れる感覚は、都市の人々にとって新しい幸せとなった。

中央広場では、長い団子を食べてリラックスする人々の姿が増え、都市の雰囲気は穏やかで和やかなものとなった。公園では家族や友人グループやカップルが長い団子の両端をそれぞれの口に加えて、楽しい時間を過ごしていた。

国の中心部に位置する首都では、議員たちが重要な会議中にも長い団子を食べ、冷静かつ建設的な議論を重ねる姿が見られるようになった。与野党の意見が正反対になった時には、お互いの党の代表が長い団子の両端を口に加えて議論することで緊張が緩和され、前向きな政策が生まれるようになった。

国のリーダーもこの団子の効果を実感し、国際会議での交渉時に、各国の代表に団子を提供することを提案した。団子はその長さによって国境を超えることで、国際的な緊張関係が緩和され、多くの国々との友好関係が築かれた。

そして、この長い団子は世界的な現象となり、国際的なフェスティバルやイベントでの主要な食品として取り上げられるようになった。長い団子を通じて、人々は国や文化の違いを超えて、心の繋がりを感じることができた。

その後も権太の長い団子は本当に害がないことを世界中で証明し続けたのでした。

めでたしめでたし。

権太「これ害がない長いカレー粉団子」 のカレー回文にまつわる長いお話は以上です。
どしどしご感想をお寄せください。

このカレー回文のお話が聞いてみたいというリクエストもお受けしております。

カレー回文師 S.Nekoyama


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