幼保無償化へ:待機児童問題深刻化するおそれ

政府与党は2019年10月より始まる幼児教育の無償化へ向けた子ども・子育て支援法改正案を閣議決定した。
これは、自民党の衆院選の目玉公約だった。

無償化の対象は

無償化に必要な歳費は7764億円。このうち国が4割、地方が6割負担することになっている。無償化の対象となるのは、すべての3~5歳児と住民税非課税世帯の0~2歳児。住民税非課税世帯は、単身世帯で年収100万円以下、一般世帯で年収160万円以下の場合に住民税が控除される世帯のとをさす。

月6000円の増収で働き手は増えない

幼児教育を無償化することで待機児童問題、幼児教育・保育に携わる者の低賃金労働の根本的な是正にはつながらない。
なにしろ待機児童問題は低賃金による働き手不足が根本にあるからだ。
昨年12月、平均賃金の数値が14年間不正に操作されていたという統計不正問題が発覚したため、この数字が正しいかきわめて怪しいが、保育士・幼稚園教諭の平均年収はおおむね323万円~339万円(2016年)の間で、これは全産業の平均値を下回る。2016年に待機児童問題解決のため、保育士の月収が6000円引き上げられたにも関わらずだ。そもそも、月収が6000円上がったところでいったい誰が保育士になりたいと思うだろうか。
こうしたことからも、政府がいかに待機児童問題や待遇改善に対して後ろ向きであるかが分かる。それだけではない。無償化されれば、保育所への入所希望者が増加し、待機児童問題がより深刻化するおそれがある。

無償化は選挙目当てのバラマキ政策か

政府は幼保無償化を、今秋予定されている消費税引き上げの負担軽減策として位置づけるが、共働き世帯や母子家庭が増えるなか「保育園に入れない」状況をまずは改善すべきではないか。そのためには、保育士の待遇改善が急務だ。少子化なのに保育を受けられない子どもがいること自体おかしなこと。安倍政権は目先の政策評価にこだわるあまり、本質的な問題解決に至らないような政策を実施することが多い。無償化とはきこえがいいものの、その裏で取り残された問題がある。これでは、選挙目当てのバラマキ政策と批判されても文句はいえない。しかし、同時に有権者の”目”も試されているということも忘れてはならない。ただのバラマキ政策をありがたがって現政権に追従するような思考停止に陥ってしまっては政権の思うつぼだ。

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