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映画「悪は存在しない」感想

元町映画館デビューした。
いわゆる単館系の映画館で元町商店街4丁目にある。
元町商店街は1丁目が一番賑わっており、3丁目、4丁目と進むにつれて人がまばらになっていく。私は少し人が少なくなる4丁目以降の雰囲気が好きだ。観光客がこの辺りまで入り込むことは少ない。


元町映画館

GW中に何か映画を観て私の栄養にしたかったのだ。
今回観たいと思った映画が元町映画館で公開されている「悪は存在しない」(濱口竜介監督)だった。

長野県、水挽町(みずびきちょう)。自然が豊かな高原に位置し、東京からも近く、移住者は増加傾向でごく緩やかに発展している。代々そこで暮らす巧(大美賀均)とその娘・花(西川玲)の暮らしは、水を汲み、薪を割るような、自然に囲まれた慎ましいものだ。しかしある日、彼らの住む近くにグランピング場を作る計画が持ち上がる。コロナ禍のあおりを受けた芸能事務所が政府からの補助金を得て計画したものだったが、森の環境や町の水源を汚しかねないずさんな計画に町内は動揺し、その余波は巧たちの生活にも及んでいく。

「悪は存在しない」公式サイトより

お昼ご飯を食べたばかりだったのでプロローグの森の木々の下からアングルが延々と続く場面で気持ちよくなって睡魔が襲ってきてどうしようかと思った。音楽が良いのだ。眠気を誘う。

日々、淡々と自然の中で暮らす巧と花の親子。撒きを割り、湧き水を汲み、仕事は何をしてるかわからないが地域の「便利屋」ということだった。花は小学生で放課後は毎日学童にいるようだった。
この父親の巧は毎日花の送り迎えを車でしているのだが、なぜかお迎えの時間を度々忘れてしまうので花は森の中を一人で寄り道しながら帰ることがある。そんな日常のエピソードが地域の人たちを交えながら淡々と描かれる。自然に暮らす人々の日常は都会人の憧れだ。私もその1人として和やかに見ていた。

コロナ禍での補助金目当ての芸能事務所によるグランピング施設の建設説明会。
グランピング施設の浄化槽の設置位置で町人と芸能事務所が対立するが何事もバランスが大事だという巧。水の綺麗さに感動して移住したうどん屋の女性や地域の住民の思いが爆発する。が、地域にお金が落ちることを少なからず期待している節も無きにしもあらず。
水は上から下に流れ、いつも下に住んているものがトバッチリを食うという区長の説明。水源の上流に住む者は責任を持たなきゃならんという、これは水源の話ではなくいわゆる上流階級への指摘?比喩?だろうか。

東京に地域住民の意見を持ち帰るとクソみたいな芸能事務所の社長とコンサルのオンライン会議がコロナ禍以降の今を象徴していて会社組織の悪と言っちゃ悪なのかもしれない。

そんな芸能事務所に嫌気が刺しつつ、どうでも良かったグランピング地域の魅力に徐々に心を傾倒させていく2人の担当者。このまま進むと、この2人がグランピング施設の管理者として会社を辞めて移住するのかな?と思った矢先に事件が起こる。

花が失踪するのだ。巧が担当者2人をうどん屋に連れて行ったり、湧き水を汲みに行ったりしているといつもどおり巧がお迎えの時間を忘れていたのだ。いつもならどこかで花と合流して会えるのにその日は会えないまま日暮れを迎える。町には花ちゃん失踪の町内無線が延々と繰り返され町中の人が花の捜索に奔走する。

この地点でもう映画の時間は残り少なくなっていたので回収できていないことが多すぎて、どう収集をつけるんだろうと思いながら見ていた。

以下、ラストネタバレなのでご注意ください。


ラスト、花を池の先で見つけるが花の目の前には弾丸で負傷した鹿の親子がいた。
「自然の鹿は人を襲わない。万が一襲うとすれば手負いの鹿か、繁殖後の親鹿だ」という車中での巧の言葉か蘇る。

花の目の前にいる鹿はまさに手負いの鹿であり、子鹿を連れている親鹿なのだ。
うわー、両方じゃん…これ、有り得ないとされていた鹿=自然が牙を剥く比喩?とか思った。

ここで高橋が「花ちゃん!!」と助けに行こうとするが巧はあろうことか高橋の首をグイグイ羽交い締めにして殺してしまう。そして花は鼻血を出して倒れていた。

え?なに?一瞬、何が起こったのか全くわからず茫然自失になる。私は今、なんか見逃したか?と思ったらエンドロール…。完全に置いていかれた。

●巧がなぜ高橋の首を絞めたのか。
●花は鹿に襲われて死んだのか。

●最後、森を荒い息で走っていると思われるのは首を絞められた後、一度起き上がった高橋が瀕死の状態で逃げているのか。
●または、巧が倒れていた瀕死の花を抱いて集落に戻ろうとしているのか。

私としては瀕死の高橋が東京に逃げ帰り、グランピングの計画は破棄。
花も一命を取りとめる。巧はこの件に関してだんまりを決め込むが一番平和だと思う。

誰も悪くない。コロナ禍で生き残るために補助金を申請する芸能事務所も悪くないし、コンサルは言われた業務をしただけだし、反対しつつも地域の人もうまく融合できるならグランピング施設は地域起こしになると薄っすら考えてるはずだし。ただバランスが崩れただけ。

グランピング施設計画が無ければ、担当者をうどん屋に連れて行き、湧き水を汲んで無かったら、ちゃんと迎えに行ってたら、花は死ななかったかもしれない。

すべてたらればの話。グランピング計画が無くとも巧が花を迎えに行くのを忘れるのは日常茶飯事だ。すべて日常の延長に事故はある。むーん…頭がこんがらがってきた。


元町映画館のスタンプカードは10回押してもらうと1回無料らしい。
チケットは手売り、シアターは66席ひとつのみ。整理券順に呼ばれて好きな場所に座る。古き良きがここにあったじゃないか。…よし、通うとするか。






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