◇東京フィルハーモニー交響楽団
第981回オーチャードホール定期演奏会
2023年2月26日 15:00〜
Bunkamuraオーチャードホール

指揮：ミハエル・プレトニョフ
ピアノ：イム・ユンチャン

昨年、亀井聖矢くんの出ていたクライバーン国際ピアノコンクールを配信で観ていた流れで、ファイナルの配信もリアルタイムで観ていたのですが、遠目では亀井くんに見間違えるほど良く似た男の子 ユンチャンがラフマニノフ３番を演奏していました。
演奏の途中で、指揮のマリン・オルソップさんが時折涙を見せるほど胸に迫るラフ３の演奏を観て、私もしばらく感動が収まらなかったのを覚えています。

来日したらぜひ聴きに行きたい！と思っていました。
昨年末の来日はリサイタルだったと思うのですが、予定が合わず見合わせていたため、今回のこのベートーヴェンコンチェルトは絶対聴きたくて、速攻チケットを取りました。

プログラムはこちら。

普段は協奏曲の前に１曲、〜序曲の様な曲があることが多いと思いますが、今回のプログラムは始まっていきなり最初から協奏曲でした。

最初にピアノの音が鳴った瞬間から「すごっ！！」って思いました(←語彙力。笑)。
始まってしばらくポカーンて半分口を開いて聴いてました(マスクしてて良かった…)。こんなのは初めてのことでした。

なんでだろう…と考えてまず思ったのは、たぶん大きな音のボリュームがすごいんじゃないかと思います。決してうるさい音じゃないです。ぶわん！と良い音で大きく鳴らせる人なんじゃないかと思いました。
あと高音を美しく鳴らせる人は多い気がするけど、埋もれがちな中音域までもとてもふくよかに美しく響かせることができるんだなぁ…と印象的で、これまた非常に高度なことなのではないかと思いました。
配信でも「なんかすごい…」とは思ってたけど、生だとよりその凄さが鮮明に迫ってきて、なんだか脳内の眠ってた細胞をいくつか覚醒させられたようでした。

以前からユンチャンは哲学者のようなピアニストだなぁ…と思っていたのですが、生の演奏を観聴きしていると、ものすご〜く細かい手仕事をする職人さんのようなマインドに近いんじゃないかと思いました。
強弱とか抑揚がそんな言葉では足りないほど表現力が豊かなのです。
粒子が細かいと映像が鮮明に見えるように、曲をものすご〜く細分化して、フレーズの作り方、音色、その他諸々を研究し尽くして、曲をより解像度高く見せる(聴かせる)よう作り込んで行く…みたいな、途方もない作業(練習)を積み重ねているんじゃないかと思えました。
まあ、実際のところはどうなのかわかりませんが…。

欲を言えば、３楽章にはもう少し軽快さがあってもいいのかな…と思いました。あまりにも実直な演奏で、それ自体は素晴らしいことなのですが、私の個人的嗜好で少し面白味を欲してしまうというか。。
いや、まだ18歳の彼なので、年齢を重ねて行くに連れてそういう余白的部分は変化して行くんだと思います。

来年２月？に亀井くんとVS形式でコンサートを演る事が決まっているらしいので、これはすごく楽しみだなぁと思います。

後半のチャイコフスキー。
最近コンサートで眠くなることは滅多になかったのに、なぜかとても眠くなってしまったのですが、１つだけ言わせてください。笑

最終楽章の最後の１音、
マエストロが手を下ろすその瞬間まで、しーんと物音１つせず、残響・余韻をたっぷりと味わってから拍手が起きたのが素晴らしく気持ち良かったです。