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世界がどうなろうと愛を貫く 「天気の子」感想  第1回

こんにちは、雪だるまです。天気の子の感想を書いていきます。もともと公開してすぐにこの映画を観て、感想をtwitterに書いたのですが今回はそれを基に記事を書いていこうと思います。(ネタばれあり)

観賞後の気分は最高!

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私、新海誠監督の映画は「君の名は」が初めてでした。圧倒的な背景や大胆なストーリーに演出。本当に最高の映画で、劇場で感動したのを今でも覚えています。そんな新海誠監督最新作の本作。期待値は高めでした。

結果は最高に面白かったです。今作の主人公、穂高と陽菜の2人の恋愛模様は見ていてドキドキハラハラしましたし、何よりラストの締め方が最高すぎました。

応援したくなる2人

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本作は16歳の穂高と14歳(作中では穂高に自分は18であると偽っている)の陽菜の恋愛を描いた作品で、作中では終始その様子を新海監督持ち前の美しい背景とradwimpsの音楽とともに描いています。

この2人、どちらも頼れる大人がいません。帆高は離島から家出して孤独に東京を彷徨っているし、陽菜も弟の凪と2人暮らしでギリギリの生活。そんな不安定な2人(正確には凪を含めて3人)が陽菜の能力で幸せになっていき、途中で引き裂かれても陽菜を取り戻すために真っ直ぐに陽菜のもとへ全力疾走する帆高。

ただがむしゃらで、とことん青臭いんです、この作品。でも、そんな青臭い2人をとことん応援したくなってくる。

ここ数年、恋愛もの関係は比較的ドロドロした関係を描いた作品が多く、なかなか純愛を貫ききる作品が無かったので上映時「あぁ、青春っていいな」って気持ちで見ていました。

秀逸な天気の描写

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本作の重要な要素、天気。一般的にアニメの演出としては暗いシーンでは雨、明るいシーンでは晴れというのがパターンです。序盤から中盤辺りまでは本作もそのセオリーに則っています。

序盤、帆高のフェリーのシーンは土砂降りの雨。東京での不吉な出来事を予感させます。その後、陽菜と出会ったあともしばらく雨が続く。最初に晴れになるのは陽菜と帆高の廃墟でのシーン。ここで観賞者に明るい2人の未来を予感させる。その後は陽菜の能力で晴れと雨を繰り返すことになる。ここもRADの曲とともにテンポ良く進み、2人が幸せに暮らしていく様子が描かれている。そして2人の逃亡劇、土砂降りです。観賞者はただただ不安で2人を見守っています。ちなみに陽菜さん、途中でライデイン使います。

で、この後の陽菜が消え、帆高がホテルから連行されるシーン。カンカン照りの晴れです。ここでは晴れに喜ぶ人たちをあまり描写せずに帆高に焦点を当てて進んでいく。その後の帆高脱走シーン。必死に走る帆高に太陽の白い光と青空がアクセントとなり帆高の心の青さと真っ直ぐな気持ちが、観ているこちら側にも伝わってくる。その後クライマックスでは東京は一部水没し、雨の中2人は再開する。

この作品、前半と後半で晴れと雨のイメージが変わってるんですよ。後半は陽菜がいない世界=晴れ、陽菜がもどってきた世界=雨となっている。それがラストのシーンの2人の尊さをより引き立てている。ずっと雨が降り続けて、一部が水没してしまっている東京がある種のディストピア的な背景となり、そんな中で再開を喜ぶ二人が鑑賞者の心にぶっ刺さります。いやほんと刺さる人には刺さるんですよ、この終わり方。

ストーリーではなく演出の作品

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今作、ストーリーとしては比較的平凡です。一応晴れになる代償として存在が消えるという本作ならではの設定があるものの、何かを成しえる代わりに恋人が消えるという設定はギャルゲーなどではありふれた設定ですし、当然そこから恋人を取り戻す展開の話も珍しくありません。

ですが新海監督は平凡な話の中でもメリハリをつけ、持ち前の構成力、演出力で名作に仕立て上げました。

一般的にこの手の作品ストーリーの作品は、まず恋人がある日突然いなくなる→必死になって主人公が恋人を探す(ほぼ100%周りの人は恋人の存在を覚えていない)→恋人がいなくなった原因を探す→再開、ほかの女とくっつくetc... 的な流れが一般的です。恋人がいなくなる瞬間を転換点とし一気に鑑賞者を作品に引き込む。前作の「君の名は」が似たような構成でしたね。滝が最初に壊滅した糸守町を見るシーンです。ただの入れ替わりだと思っていたのに、そこにいるはずの相手がいない。あの瞬間から物語が大きく動きました。

今作は物語上は突然帆高の前から消えているものの、その前に陽菜さんが「私、消えちゃうの。」アピールしているし、夏美たちが消えた原因もはっきりさせているし、なんなら陽菜の戻り方も伏線的に明らかにしている。要するに、恋人が消えた瞬間に転換点を持ってきていない。

ではどこに転換点があるのか?それは、本作で最初に晴れになる瞬間、グランドエスケープのオーケストラとともに陽菜が自分の能力を帆高に示すシーンです。雲がなくなっていき、かわりに現れた太陽がまるで2人の出会いを祝福するかのように2人を照らします。それが意味するのは2人の物語の始まり。2人の愛の話の幕開けを表しています。

つまり、観客の予想を裏切るストーリーが目玉だった前作と違い、本作は最初に転換点を持ってくることで描きたいことの違いを示しているのです。

「君の名は」との比較はナンセンス

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公開直後から目立ったのが、本作が「君の名は」の劣化版であるというレビューです。でもそもそもこの2作、描きたいものが違うんですよ。「天気の子」が2人が紆余曲折しながらも幸せになる過程を見守る映画なのに対し、「君の名は」は別の次元で生きていた2人がそれでもお互いに会いたいと願い奔走する恋愛映画でありながらSF的な魅力も詰まった作品なんです。すこし乱暴な言い方をすれば「天気の子」は純愛、「君の名は」は青春SFなんです。ジャンルからして違う。比べること自体ナンセンスだと個人的には思います。

だけどぱっと見は同じ毛色に見えるうえ、「天気の子」のキャッチコピーがいかにも「君の名は」的なSF的展開を期待させるものなので第二の「君の名は」を期待した層も一定数いると思います。今作の酷評的なレビューも大半がこのあたりの層だと思います。しかし、そもそも全く楽しみ方が違う2作品なので比較自体が無意味なんです。

最後に

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恋愛を扱った作品では近年、主人公とヒロインがしっかり結ばれて終わる終わり方が少なくなっているように感じます。そんな中で最後にしっかりと主人公とヒロインが結ばれる終わり方の本作は個人的には大当たりでした。新海監督の次回作にも期待です。

拙筆でしたが最後までよんでいただきありがとうございました。

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