ゆきにく

不定期で小説を公開予定です。現在のタイトルは「年間交際費0円さんの今日」(ねんかんこう…

ゆきにく

不定期で小説を公開予定です。現在のタイトルは「年間交際費0円さんの今日」(ねんかんこうさいひぜろえんさんのこんにち)です。

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  • 年間交際費0円さんの今日

    実の母、かつての親友、交際していた彼をはじめすべての人間関係を終わらせ、自己肯定感や自分自身と向き合うことを決意した35歳女性の小説「年間交際費0円さんの今日(ねんかんこうさいひぜろえんさんのこんにち)」

最近の記事

0円さん、ピルをやめる 【年間交際費0円さんの今日 #7】

#7 0円さん、ピルをやめる 婦人科クリニックの待ち時間はとても長い。 周囲を見わたすと妊婦であろうお腹の膨らんだ女性もちらほら見えるが、婦人科に通う理由はほんとうに人それぞれだ。 私といえば、長年飲み続けた「ピル」を辞めようと決意し、今日ここに来ている。 これから長時間お世話になるであろう待合室のソファーに腰を下ろし、番号が呼ばれるそのときを待っているのだ。 自己肯定感の低さの象徴 ピルを飲みはじめたきっかけは、遠距離恋愛だった。 私は若い頃から生理が重く、PMS

    • 0円さん、毒母と決別する 【年間交際費0円さんの今日 #6】

      #6 0円さん、毒母と決別する 何かが引っかかったのを感じ、私は掃除機を止めた。掃除機の口に詰まっていた埃まみれの何かをつまみ出す。それは、母からもらったお守りの小袋だった。 私は返信できずにいた母からのメールを思い出し、心臓が凍りそうになった。 「私を助けて」と言われているようだった。 ドロップアウト ちょうど年末の大掃除をしているところだった。 私といえば、今年はすべての人間関係を終わらせてたった一人になることを決意した年だった。 その時の勢いで連絡先やメッセージ

      • 0円さん、親友と絶縁する(後編) 【年間交際費0円さんの今日 #5】

        #5 0円さん、親友と絶縁する(後編) 変わりゆく私たち ユリカの結婚報告から四年が経ち、私は三十四歳になっていた。 それなりに身なりを気にするようになった私は、知り合いに会うとき専用の、当たり障りない服装を用意するようになっていた。 それとは別に婚活用の服装も用意して、結婚相手探しに精を出すようになっていた。 そんな日々に少し疲れを感じていた。 どれだけ婚活をがんばったところで、クリスマスイブの今日、一緒に過ごす人さえ見つからなかった。 ああ、随分歳をとってしまっ

        • 0円さん、親友と絶縁する(前編) 【年間交際費0円さんの今日 #4】

          #4 0円さん、親友と絶縁する(前編) ーー これは私とかつての親友ユリカとの一年前までの話 ーー 「まどか〜! 今日の夜ってひま?」 ユリカからの誘いのメッセージはいつも急だった。 私はいつものファミレスに到着すると、先に席を取りユリカを待つ。予定時刻になるとユリカから連絡が入る。 「ごめん〜! 十分くらい遅れる(汗)」 ユリカの遅刻はいつものことだ。 「十分くらい」は二十分か三十分くらい見積もる必要がある。おそらく私の到着の連絡を受けてから家を出ているんだと思う

        0円さん、ピルをやめる 【年間交際費0円さんの今日 #7】

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        • 年間交際費0円さんの今日
          7本

        記事

          0円さん、服を捨てる 【年間交際費0円さんの今日 #3】

          #3 0円さん、服を捨てる 地方で働く女性事務員の収入は低い。 けれど、ぜいたくをせず細々と暮らしていく分には、なんとかやっていける計算ができている。 にもかかわらず、私は貯金もゼロで、毎月クレジットカードの支払いに怯えていた。 これまでお金に対してあまり関心がなかった。 というよりも、見て見ぬふりをしていた。なるべく現実を見ないようにしていたのかもしれない。 実の母、かつての親友、交際していた彼をはじめ、すべての人間関係を終わらせ、自分自身と向き合うことを決意した。

          0円さん、服を捨てる 【年間交際費0円さんの今日 #3】

          0円さん、婚活をやめる(後編) 【年間交際費0円さんの今日 #2】

          #2  0円さん、婚活をやめる(後編) 転機 ぜんぶ、ぜんぶ、もうやめよう。 そんな気持ちになれたのは、35歳になった朝に目が覚めてすぐのことだった。 結婚前提に交際していた彼から別れ話のメッセージが来たからだ。 いかにも彼らしいメッセージだった。彼のことだから、これは自分が優位に立つための駆け引きなのかもしれない、なんて一瞬考えてみたけどすぐにどうでもよくなって、彼とはテキストのやりとりであっさり別れた。 そしてその申し出をすんなり了承したときに私ははっきりと目が

          0円さん、婚活をやめる(後編) 【年間交際費0円さんの今日 #2】

          0円さん、婚活をやめる(前編) 【年間交際費0円さんの今日 #1】

          #1  0円さん、婚活をやめる(前編) 「婚活順調ですか?」 彼との出会いは婚活パーティーだった。 そのパーティーはいつもよりも若い男女が多く、参加者の中で最年長の34歳は私と彼しかいなかった。 フリータイムでは20代の参加者が学生サークルのように盛り上がっている中、私はその空気にノリきれず、端の方で静かにオードブルをつまんでいた。 そこへやってきた彼とは、自然と会話が弾んでいった。 「……いえ、なかなか難しいですよね。最近急に焦りはじめていて」 「僕もなんです。この

          0円さん、婚活をやめる(前編) 【年間交際費0円さんの今日 #1】

          小説を投稿します

          はじめまして、ゆきにくです。 このnoteでは不定期で小説を公開していきたいと思っています。 現在公開予定のタイトルは、 「年間交際費0円さんの今日」(ねんかんこうさいひぜろえんさんのこんにち) です。 まだ少ししか書けていないのですが、まずは公開することでモチベーションにつなげていきたいなと思っています。 初回公開日は10月15日(日)を予定しています。 よろしくおねがいします。

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